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黒い瞳のエトランゼ 運命のモントフォード家 I

黒い瞳のエトランゼ 運命のモントフォード家 I


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: 運命のモントフォード家
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 キャンディス・キャンプ(Candace Camp)
 新聞社に勤める両親のもとに生まれ、10歳で始めたというお話作りはキャンディスにとってリラックスの手段だった。シャイで話し下手だった彼女は文章にすると自分の考えや思いを素直に表すことができた。

解説

 アレクサンドラはアメリカで貿易会社を切り盛りする気丈なレディ。取引相手のソープ卿に直接面会するため、はるばるロンドンへやってきた。予想外に魅力的な独身男性だったソープに誘われ、舞踏会に出席したアレクサンドラ。そこで高貴な老婦人に紹介される。だが伯爵夫人だというその女性は、アレクサンドラを見るなり「シモーヌ!」と叫び、そのまま気を失った。C.キャンプの歴史ロマンス三部作がついに始動。仏革命で生き別れた三兄妹の運命は。

抄録

 二人は部屋をでて、階段へ向かった。玄関広間にさしかかったときアレクサンドラは足を止め、壁に並んだ肖像画を眺めた。
「それは当主のお母さんです。描いたのはゲインズボロ」少女の肩に腕をまわしている婦人と、その足元に二匹の小型スパニエル犬が描かれている。
「すばらしい絵ね」
「伯爵家に伝わる美術品があるんです。主に肖像画ですが。先代の好みがそれだったから」
「中でもお気に入りは馬だったのね」玄関に入ってきたとたんに目についた巨大な馬の絵をアレクサンドラがさした。
「そのとおり。ほかのものも見ますか?」
「ええ。よろしければ」
「心配ご無用」ソープ卿はアレクサンドラをうながして階段をのぼり、舞踏室とは反対の方向の回廊へ導いた。甲冑一式のあとは肖像画の列だった。その多くは長い年月をへて黒ずんでいる。
「まあ、これはたしか――」
 ソープ卿がうなずく。「ええ。作者はホルバインです。この女性はイザベラ・モンコートといって、当時のモンコート侯爵の若妻でした。早死にした麗人です」
 アレクサンドラは目を丸くした。「早死にって、殺されたの?」
「謎です。ある晩、階段からころげ落ちたと言われている。殺されたという噂が立ったけれど、現在にいたるまでモンコート家では断固として否定しています。ハワード家の誰かに見そめられたという話で、イザベラの夫は嫉妬深い男だったとか」
「見そめられたですって? それだけ? だったらなぜ、だんなさんはハワード家の男と決闘しなかったの? その侯爵のほうに非があるように私には思えるけれど」
 ソープ卿は笑った。「ま、真相は誰にもわからないんです。その噂が本当だとしても、夫人に非がまったくないともいえないでしょう」
 二人は長い回廊を進み、壁に取りつけた燭台のほのかな明かりで絵を見てまわった。「昼間の光で見たいわ」
「よかったら日を改めて、もっとよいコレクションをお目にかけますよ」
「あなたのご先祖の肖像画?」
「いや。うちの祖先のは田舎の屋敷にあります。ぼくはめったに行かないんでね。ロンドンのぼくのうちは、ご存じのとおり、レディ・アーシュラに言わせると“異教徒の美術”に占領されている」
「どなた?」
「ぼくのいちばん大事な友人の娘さんです。今晩、あなたに紹介できるといいと思っている」
「レディ・アーシュラに?」
「いや、違う。紹介したいのは伯爵未亡人のほうです。で、未亡人がここに来ていれば、アーシュラに会いたくなくても会わないわけにはいかないだろうが」
「その伯爵未亡人はあなたにとって特に大切な方なのね?」
 ソープ卿は大きくうなずく。「未亡人の孫がぼくの学校友達だったので、よく家に遊びに行ったものだった。伯爵夫人は――我が家よりもっと愛情と安らぎを与えてくれたといえばいいかな。伯爵夫人が母親か祖母のように感じるときがある」
「その方にお目にかかれるのが楽しみだわ」
 二人は回廊の端まで行って、人けのない廊下を振り返った。金色の輪をつくって揺れるろうそくの光は奥までとどかず、そこは暗がりになっていた。
 アレクサンドラはソープ卿を見あげた。顔は陰になっているが、目がきらめいているのが暗闇でも見てとれた。アレクサンドラは息をのんだ。口づけされるのではないか? ソープ卿が一歩前へでた。ここで顔をそむければ、接吻の機会は失われる。わかっていながら、そむけることはできなかった。そむけたくもなかった。ソープ卿の目から目を離さず、アレクサンドラは待った。
 ソープ卿はかすかにほほえみ、手をのばしてアレクサンドラの頬をこぶしの角で軽くさすった。「ミス・ウォード、あなたにはたいへん興味をそそられる」
「本当に? 興味をそそられる女性にはソープ卿はいつもこうなさるの? 美術品を見せるという口実で人けのない暗い廊下に誘いだすとか」アレクサンドラはわざと冗談めかして言った。実は、ほんのわずかに触れられただけなのに脈拍が速くなっていた。
 ソープ卿の目が笑っている。「口実じゃない。現に肖像画を見てきたじゃないですか。それに、あなたを無理に引きとめているわけではないから、いやならいつでも行っていいんですよ」
 頬に血がのぼり、動悸がますます速くなるのを感じながら、アレクサンドラはその場から動こうとはしなかった。
 ソープ卿はアレクサンドラのうなじに手をまわした。ひとりでにアレクサンドラは顔を仰向ける。はしたないふるまいだとか、人に見られたらたいへんだなどという考えは頭に浮かびもしなかった。この人の口づけを味わいたい。それだけだった。
 柔らかくて熱い感触に、アレクサンドラはかすかにおののいた。今まで男に接吻されたことは一回だけある。いやというほど突きのけたので、男は雪の中にしりもちをついてしまった。けれども今度は、押しのける気はまったくなかった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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