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シークの最後の賭 砂漠の国で恋に落ちて

シークの最後の賭 砂漠の国で恋に落ちて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス砂漠の国で恋に落ちて
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 トリッシュ・モーリ(Trish Morey)
 オーストラリア出身。初めて物語を作ったのは十一歳のとき。賞に応募するも、応募規定を誤ってしまい失格に。その挫折がもたらした影響は大きく、やがて彼女は会計士としての道を選ぶ。故郷アデレードからキャンベラに移り住んだとき、現在の夫と出会った。結婚し、四人の娘に恵まれ幸せな日々を送っていたが、夢をあきらめきれずもう一度小説家を目指すことに。数々の挫折を乗り越え、ついに自らの手で作家としての人生を切り開いた。今ではオーストラリアのロマンス作家協会で、副会長を務める。

解説

 シーク・バヒールはモンテカルロのカジノで負け続けていた。それもこれも、数日後、旧知のマリーナと再会し、トスカーナまで送り届けることになっているせいだ。4年前、二人は情熱的な数週間を過ごしたが、ふとした諍いで険悪な別れ方をしていた。そんな彼女に再び会い、また情熱をかき立てられるのはごめんなのだ。一方のマリーナも、彼との再会をためらう半面、あれ以来秘密にしてきたことを打ち明けられる機会だとも考えていた。こうして出発した飛行機は、悪天候のため途中で足止めをくい、二人はともにトルコの豪奢なホテルに1泊することになった。

 ■砂漠の国のプリンセスたちの恋模様を描いた2部作の最終話です。誰にも言えない孤独を抱えて生きてきたシーク・バヒール。マリーナとの再会は、はたして彼に何をもたらすのでしょうか。

抄録

 ネグリジェは波しぶきに濡れてまつわりつき、髪が頭皮から抜けそうなほど激しい風に吹かれながら、いまほど生を実感したことはない、とマリーナは思った。いまほど気持ちが高揚したことも、いまほど自由を感じたことも。
 波がまたしぶきをあげたので、マリーナは体を半回転させ、うなじを冷やそうと濡れた髪を持ちあげた。そのとき稲妻がテラスに光り、自分がひとりではないことに気づいてひやりとした。
 「バヒール」マリーナはだらりと両手を下ろして波しぶきの中へあとずさった。早くも全身が警戒態勢に入っていた。張りつめた胸は濡れたネグリジェの薄い生地を押しあげ、腿がうずき、足は逃げだす隙をうかがっている。
 走りだそうとする彼女を押しとどめたのは、バヒールの表情だった。まるで内心の悪魔と闘って敗北を喫したかのような苦悶の表情を浮かべている。彼の白いシャツはところどころ肌にまつわりつき、生地の下の褐色の肌を浮かびあがらせていた。
 マリーナはごくりと唾をのんだ。塩辛い海の味がする。それともこれはバヒールの肌の味だろうか。いまここにいてさえ、彼の体が自分の体に誘いかけるときの熱が感じられた。過去のありとあらゆる経験から、それが過去の喜びのすべてを、それ以上のものを約束しているのがわかる。
 「きみも眠れなかったんだな」
 「暑かったの」
 視線がマリーナの体をなぞった。ゆっくりと、気だるく。バヒールの瞳にある熱が、彼女の肌の奥で炎をかき立てた。濡れたネグリジェを包む夜気の効果をもってしても吹き払えなかった炎を。バヒールの白いシャツが肌にまとわりつき、黒っぽい乳首の片方が形をあらわにしているのを目にするなり、彼女は自分が彼の目にどんなふうに見えているのかを悟った。裸も同然だわ。彼女は自分の体を両腕でかき抱き、我が身を隠そうとした。
 バヒールの前で慎み深くする理由などあったためしはなかった。いまもそんな理由はないのかもしれない。彼にはもう、すべてを見られているのだから。でも、いまは昔と違う。私は母親だ。妊娠は私の体に避けようのない痕跡を残した。彼は気づくだろうか。気にするかしら? 気にする権利は彼にないし、私が気に病む必要もない。でも……。
 そのとき、バヒールが彼女の視線をとらえて言った。「僕もだ。‘あつい’な」
 彼が天候のことを言っているのでないことはマリーナにもわかった。彼が一歩近づいた。それからもう一歩。マリーナは顔を上げて彼を見あげなければならなかった。
 「もう行ったほうがいい」
 「そうね」マリーナは同意した。そうするのが正しいことだったから。このままとどまるのは無謀だったから。とことん嫌い抜こうとしているときでさえ欲情を抑えられない相手と、嵐の吹き荒れるテラスで抜き差しならない状態に追いこまれてはいけない。
 なのに、マリーナの足は動かなかった。
 「行ったほうがいい」バヒールが繰り返した。肌をざわつかせるような声だ。「さもないと……」
 マリーナは彼を見あげた。五感が、体じゅうの神経という神経がざわめいていた。「さもないと、何かしら?」
 「きみを帰したくなくなる」
 マリーナは息をのみ、目を閉じた。
 「きみが欲しい」バヒールの手に顎を上げられ、顔を包まれるのを感じてマリーナは驚き、目を開いた。
 気づいたときには、逃げだすには遅すぎる状況になっていた。たとえ、そうすべき適切な理由の何十分の一かでも思い出すことができたとしても。
 見あげると、心をかき乱されずにはいられない激しい切望の表情で自分を見下ろすバヒールが目に入った。そんなふうに誰かに見られるのはずいぶん久しぶりだったが、その‘誰か’もバヒールだった。彼のような表情でマリーナを見た男性はいままで誰もいなかった。
 でも、それももう昔のことだわ……。
 「いけないわ、こんなこと」バヒールの手が顔に向かってさまようと、わずかに残ったマリーナの理性の切れ端が警告を発した。
 「これが」
 バヒールに指で肌をなぞられ、マリーナは呼吸の仕方を忘れた。
 「いけないことだって?」電気を帯びた彼の手が火花を散らして肌をなぞっていく。
 いまは違うかも。マリーナは心の中で彼の問いに答えた。けれど明日になったら、あるいは来週、さらには来月でもいい、私は今夜の出来事がどこからどう考えてもいけないことだったと悟るだろう。
 バヒールがマリーナの首筋に手を添え、待ち受ける口に向かって優しく引き寄せた。
 風に背中を押され、その勢いに任せて彼に身を寄せると、マリーナはバヒールのキスを受け入れた。最初に唇が触れ合ったかけがえのないその瞬間、彼女の口から吐息がもれた。
 まるで故郷に帰ったようだわ。いえ、それ以上よ。故郷なんて二度と見つからないと思っていたのだから。故郷は永遠に失われたと思っていた。
 「バヒール」マリーナは彼の味と匂いと感触を味わい、進んで彼を迎え入れながら、唇を合わせたままささやいた。
 バヒールはうめき声をあげてぴたりとマリーナを引き寄せ、口を開いてさらにキスを深めた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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