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薔薇の迷宮 孤高の鷲 III

薔薇の迷宮 孤高の鷲 III


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ラブ ストリーム孤高の鷲
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 作家になる前は高校で英語と世界史を教えていた。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともに米アラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』はヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。次作は5月20日刊「薔薇の迷宮」(LS−242)。

解説

 クレアは夜の薔薇園にひとりたたずんでいた。ここはグリフと過ごした思い出の場所だ。南部有数の大富豪にして、若きCIA幹部。冷徹な頭脳と熱い肌を兼ねそなえた男性。いまだクレアが愛してやまないグリフ・キャボットは一年前テロリストの凶弾に倒れ、帰らぬ人となった。グリフ、あなたがいなくて本当に寂しいわ。今わたしを苦しめている難題も、あなたならきっと……。ふいに闇と濃い霧の向こうに人影が浮かびあがり、深みのある声がクレアの思いをさえぎった。「きみの力になりたい」

 ■RITA賞を二度も受賞したゲイル・ウィルソンのミニシリーズ『孤高の鷲』。正義に燃える元CIAのエリートたちが紡ぐ大人のラブストーリーです。本作では、死してなおカリスマ性を発揮するトップエージェント、グリフの秘密が明らかに?

抄録

 グリフが彼女との約束を破ったことは一度もなかった。二度と会わないという誓いを破ったのは、グリフではなくクレアだった。
 クレアはうなずき、しだいに暗くなっていく空を見上げた。作戦の概要は彼女も知らされていた。ジョーダンとホークは早朝のうちに出発し、準備を進めている。明日のこの時間には、すべてが終わっているはずだ。“ぼくたちがコントロールできることは、すべてうまくいく”しかし、この世にはコントロールできないことがあまりにも多すぎる。
 クレアはゆっくりと深呼吸をした。悲観的になりすぎているのよ、と胸のなかでつぶやく。だが朝ホークとジョーダンを見送ったとき、彼女はかすかな不安をおぼえた。
 誰にも予測できなかった要素が存在する――そんな虫の知らせだったのかもしれない。どこか見えない場所に、何かが隠れひそんでいるのかもしれない。たとえば、クルーザーの浮かぶ海が穏やかであっても、海中では目に見えない何かが泳ぎまわっているように。
 「とにかく心配はいらない」グリフは繰り返した。
 クレアは波から視線を上げ、グリフの瞳を正面から見すえた。その瞳はマイアミの背後に広がる闇のように黒い。しかし、今夜はそれまでの苦悩の色が消えていた。
 彼はわたしの残酷な言葉を許してくれたのだろうか、と彼女は思った。そして、わたしは彼を許しているのだろうか? 暴力に満ちあふれた世界に、ガードナーを引きずり込んでしまった彼を?
 だが、グリフを失うことによって彼女が学んだ教訓があるとすれば、それは明日起こることは誰にもわからない、ということだった。事件を解決に導くチャンスは二度と来ないかもしれない。悔恨の念こそが、彼女が長いこと耐えてきたものなのだ。
 グリフは明日の作戦の現場に立つことはないだろう。ホークやジョーダンのように危険にさらされることもないはずだ。だが、それでもクレアはグリフに言っておきたいことがあった。
 「グリフ」
 虫の知らせを感じたときと同じ寒けが、不意にクレアの背すじを走り抜けた。グリフは彼女の声を聞きつけ、手すりにひじでもたれたまま、視線を向けてきた。
 「あなたに話すべきだったわ」クレアはささやいた。「妊娠がわかったとき、すぐにあなたに連絡するべきだったのよ」
 クレアはグリフの反応を見守った。だが、彼の表情は変わらない。冷淡な顔ではなかったが、しかし……そこにはどこか彼女を不安にさせる表情が浮かんでいた。
 「そうだな、ぼくに知らせるべきだった」しばしの沈黙ののちに、グリフはそう答えた。
 彼はやけにあっさりと同意した。けれど、その口調は多くの思いを語っていた。クレアの悲しみはさらに深まった――彼は自分の娘を知らなかった。ガードナーの存在を最初から知らなかったのだ。クレアのせいだった。彼女の判断ひとつで避けられたことなのだ。
 ガードナーの存在をグリフに知らせてさえいれば、こんなことにはならなかったのよ――クレアがその事実を認めたのは、ここ二日間考え抜いたすえのことだった。妊娠したことを話していれば、グリフも死を装わなかったはずだわ。わたしがあらゆる責任を一人で背負うこともなかったのよ。
 グリフならガードナーを守ってくれたに違いない――あの子の存在さえ知っていたなら。でも、彼は知らなかった。わたしが話さなかったせいだ。つまり、誘拐事件の責任を負うべきなのは……。
 「ごめんなさい」クレアはささやくように言った。「妊娠したことを黙っていて。それから……あんなことを言ってしまって。この世に誘拐犯がいるのは、あなたの責任じゃないわよね。あなたを責めるべきじゃなかったわ」
 “ごめんなさい”それは彼女の思いがとうてい伝わらない貧弱な言葉だった。だが、それ以外に何と言っていいのかわからなかった。
 グリフは左手を上げ、タンクトップを着たクレアのむき出しの肩に手をふれた。これは慰めなの? 彼女はいぶかった。それとも、許し?
 彼の親指がゆっくりと上下し、クレアの敏感な肌を愛撫する。ゆるやかな動きは、彼女を誘惑するかのようだ。
 グリフの瞳を見ているうちに、クレアはかつての二人の関係を思いだした。彼女は無意識のうちにグリフの愛撫と瞳に反応しはじめていた。夢心地のまま体がグリフに近づく。彼の手がクレアの柔らかな腕をつかみ、引き寄せた。彼女は左手でグリフの顔を探り当て、頬を包み込んだ。記憶していた興奮が胸によみがえる。
 グリフは身を屈め、クレアに唇を近づけた。彼がまぶたを閉じて濃いまつげを伏せるのが見えた。彼女も欲望に屈し、目を閉じた。
 それは、彼女がグリフと行動をともにした理由のひとつだった。彼女はグリフをもとめていた。彼の愛撫を。くちづけを。そして二人がかつて分かち合った――これからも分かち合えるであろう――すべてのことを。
 グリフはクレアの唇にみずからの唇を重ねた。いつものように自信に満ちた、奪うようなくちづけだった。感情の高ぶりに圧倒されながら、クレアはジョン・エイマースンがキスの際に見せたためらいを一瞬だけ思いだした。あのキスが無意味なものに感じられたのは、ためらいのせいなのだ。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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