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BGMは波の音

BGMは波の音


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ロビン・ドナルド(Robyn Donald)
 ニュージーランド北部の牧場主の家に、一男五女の長女として生まれた。十五歳で師範学校に学び、十九歳で結婚、同時に小学校の教師となる。子育てを終えて一時休んでいた教職に戻り、かたわら執筆を始めた。蘭の花が咲き、キウイやオレンジの実る美しい北部の村に住む。

解説

 ■このひとに恋したら傷つくだろう。でも、この気持は止められない。

 ■「ワイタプへようこそ、ジャシンタ」ドアを開けた男性を見て、ジャシンタは驚きに目を見張った。数カ月前フィジーで出会ったハンサムな男性、忘れもしない彼こそがこの家の所有者、ポール・マカルピンだったなんて。母を亡くし、ひとりぼっちになった彼女は、大学の指導教官、ジェラードの勧めでここにやってきた。これからの三カ月、ポールの家の離れで母との約束を果たすのだ。約束は歴史の修士号を取ること、そして二人で考えた物語を書くこと。しかし、ポールがあのフィジーで出会った男性だとわかったとたん、ここに滞在するのは危険なことに思えてきた。海の近くの夢のようなお屋敷に住む国際派弁護士――貧しく育った私とは、あまりにもつり合わない相手だわ。

 ■『さよならフィアンセ』で結婚式の直前、親友にフィアンセを奪われてしまったポール。あれから五年、女性不信に陥っていた彼に運命のときが訪れます。

抄録

 ジャシンタは、内心は反抗したくてたまらなかったがうなずいた。ポールの言うとおりだわ。あの感じのいい農場管理人にとって、ばかな女がうろついてトラブルに陥るほど迷惑なことはないでしょう。
「そうしますわ。あまり遠くまで行くつもりはありませんが。以前農場に住んでいましたから、どんな決まりがあるかはわかっています」
「あなたは農場育ちなんですか?」
「いいえ、育ったのは小さな田舎町です。十八歳のときに大学へ進むためにオークランドへ引っ越しました。そのあと母が車椅子の生活になって田舎を恋しがったので、別の小さな町のはずれにある農家のコテージへ引っ越したんです」
 狭い寝室が二部屋と、居間と食堂とキッチンを兼ねた大きな部屋が一部屋あるきりの小さなコテージだった。平屋だったので、母は病気が進んでからも車椅子で外に出ることができた。体を動かせるうちは、ジャシンタといっしょに芝生を家庭菜園に作り替えて、野菜や花を育てたものだった。
 晩年の母が何よりも愛していたあの庭はどうなっただろう。ジャシンタの瞳は涙にかすんだ。
「あなたも田舎暮らしのほうがお好きですか?」ポールが何気なくたずねた。
 ジャシンタは無意識のうちに首を振っていた。「わかりませんわ、たぶんそうだと思います。でもオークランドの暮らしも楽しんでいますわ」
「どんなところがですか?」
「大学は大好きですし、文化的なところが気に入っています。特に画廊が好きなんです。それにこんな言い方はよくないかもしれませんが、オークランドの軽はずみな感じもいいですね。どんなことも可能で、世界は遊び場なんだから皆で楽しむべきだと感じさせるようなところが」
 二人はビーチの端まで来ていた。ポールは立ち止まって、四方に枝を伸ばしたおおふとももの大木がそびえる岬に目をやった。「気候に恵まれた湾に面したところでなければ、そんな気ままな態度でいるのは難しいでしょうね。ニュージーランドのほかの都市は、軽はずみで気ままでいられるような気候ではありませんから」
 輝く月に照らされてポールといっしょにいられるなら、何時間でも歩けるだろう。話をするだけ。それだけで十分。
 でもすぐにそれだけでは満足できなくなるわ。だから二度とこんなことをしてはいけない。
 気候の話を続けるのよ。ジャシンタは自分に言い聞かせた。陳腐な話をしていれば感情の高ぶりも鎮まるわ。
「確かに気候がいいですものね。もっとも南部出身の学生は夏の湿気が我慢できないそうですが」
「ああ、よく言うオークランドの蒸し風呂ですね」ポールの言葉に潜む皮肉な調子に、ジャシンタは気持を見透かされたのかといぶかった。「慣れるものですよ」
「どんなことでもいずれは慣れるものだと言いますからね」ジャシンタは本当にそうであってほしいと心から願った。
 二人は、静まり返った家を目指してビーチを歩いていった。美術や音楽、好きなロックバンドやスポーツの話をしながら芝生へ上がる石段までやってきたところで二人は黙り込んだ。
 かぐわしい夜の空気、花や木々のぼんやりした影、浮き彫りのように星の輝く空へのジャシンタの反応は、傍らを歩いている男性によっていっそう強められていた。
 ジャシンタはこのままポールと外にいられるだけでよかった。外にいれば、この男性はすべてを持っているのに自分には何もないことを思い出さずにいられる。
 ジャシンタは石段を上がるときに急ぎすぎた。そして案の定つまずいてしまった。
 倒れる間もなく、がっしりした両手がジャシンタの腰をつかんで、背中をぐいと引き寄せた。ほんのわずかの間、彼女はポールのたくましい体に抱き寄せられて、欲望という言葉の意味を生まれて初めて思い知らされた。
「どうも」ジャシンタは、ポールに触れられて火傷したかのようにあわてて体を振りほどいた。そして寝室へ逃げ帰りたい衝動を抑えて、ベランダの床板の上で立ち止まった。
 ポールは身動きもしなかった。伏せたまつげの下で瞳がぎらぎらと輝いている。星の光に目が慣れていたので、ジャシンタは暗がりの中でもポールの顎の筋肉がかすかに引きつるのが見分けられた。
 ポールも感じているんだわ! しかしポールはすぐに自制心を取り戻し、一瞬の動揺はぬぐい去られて、仮面のようにいかめしい表情に戻ってしまった。
「その段には気をつけたほうがいい」わざと横柄に言ったとしか思えなかった。
 唾を飲み込んでからからに乾いた口と喉を落ち着かせてから、ジャシンタは言った。「そうしますわ。言ったとおりでしょう。もっともふだんは階段をのぼるときではなく下りるときにつまずくんです」
 私が気を惹くためにわざと転んだと思われたとしたら耐えられない。
 ただ性的に惹かれているだけではない。この気持はジャシンタをすっかりとろけさせてしまうほどの力を持っていた。ポールの腕の中にどれくらいいただろう、二秒くらいかしら? 二秒で人生が変わってしまうなんて。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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