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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

あなただけを愛してた

あなただけを愛してた


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

 ■七年前に終わりを告げたはずの初恋が、突然の再会によって、いま再び動き出す。

 ■十七歳の春、タラはジェームズ・ハーヴェイに恋をした。ジェームズは親友スーザンの、義理の父親。誰にも言えぬ、叶うはずのない想い。それでも彼のそばにいるだけで、タラは幸せだった。だが淡い初恋は、彼とその妻によって残酷なまでに引き裂かれた。あの日の悲しみは、古傷となって心の奥底に刻み込まれている。そしていま、七年の月日を経てジェームズは再びタラの前に現れた。スーザンに誘われた週末のバカンスに、彼も行くのだという。彼が一緒だなんて聞いてないわ! どうやってこの二日間を乗り切ればいいの……? 過去に苦しみながら、必死の思いで築き上げた平穏な日々。そのすべてが音をたてて崩れていく――そんな気がした。

抄録

 十分たっても誰も出てこない。スーザンはよく鍵をなくすため裏口を開けたまま近くまで外出することがあるが、今日もどうやらそうらしい。
 空は真鍮を思わせる鈍い金色から、錫のような暗い鉛色に変わっていた。一秒ごとに雷の音が激しさを増す。タラは気を紛らわそうとラジオのスイッチを入れてみたが、雑音がひどいのであきらめた。空を稲妻が走り、家の裏手にある公園の木に雷が落ちたのか、ものすごい音がした。タラの震える唇から小さな悲鳴がもれた。こんな中を、家に戻ることはできなかった。彼女は恐怖に凍りついたまま、台所の真ん中に立ち尽くし、少しでも嵐が収まる気配がないかと、外を見つめて耳をそばだてていた。
 だから台所のドアが開いたことには少しも気づかなかった。気配にはっとして振り返ったタラの目は恐怖に大きく見開かれ、皮膚が顔に張りついたように表情がこわばっていた。
 そこにいたのはジェームズだった。ビジネススーツに身を包んで片手にかばんをさげている。疲れていることはすぐにわかったが、そのとたん、すぐ真上で雷鳴が鳴り響いた。タラは悲鳴をあげて思わず彼の腕に飛び込んでいた。「タラ、いったいここで……」唇に押しつけられたタラの髪に阻まれ、その言葉はとぎれた。腕が反射的に彼女の体に回される。突然飛びつかれて、彼はバランスを失って倒れかけた。
「止めて、止めて!」稲妻の音に耐えかねてタラは両手で耳をふさぎ、すすり泣きながら叫んだ。恐怖が上げ潮のように血管になだれ込み、体を満たす。
「静かに。大丈夫だ、怖くないよ。一人?」
「ええ。スーに会いに来たけど、いないの」また空が光り、タラはびくりと身を縮めた。
「びしょ濡れじゃないか。タオルを取ってくるよ」離れようとするジェームズにタラはしがみついた。「大丈夫。すぐに戻るから」
 上着を握りしめているタラの指を引きはがすようにして彼は台所を出ていった。
 また雷が鳴った。タラは歯を食いしばり、爪が手のひらに食い込むほどこぶしを固めて、彼はすぐに戻ってくる、と自分に言い聞かせた。彼はきっと私をばかにするわ、パニックに陥ってはだめ。その時今度は家をとどろかすほどの大きな音で雷が鳴って、ジグザグに走る稲妻が窓の外に見えた。タラは自制がきかなくなり悲鳴をあげて台所を飛び出すと、階段を駆けあがって、ジェームズがいつも使っていた部屋に飛び込んだ。恐怖に我を忘れていたため、ちょうどバスルームから出てきた彼がタオルを腰に巻いただけの姿だということにも気づかなかった。やっとそれがわかったのは、柔らかな二の腕を彼につかまれた時だった。
「タラ、何をするんだ」ジェームズが言うのも無視して、タラは彼の腕に身を投げかけ、すべてを忘れて恐怖にがたがたと震えていた。言葉だけではなだめられないと思ったのか、ジェームズはゆっくりと彼女を窓辺に導いた。「見てごらん。嵐は収まりかけている。もう安心だ」
 自信に満ちた静かな声は、全身を揺さぶるパニックを突き抜けてタラの耳に届いた。少し落ち着くとタラは、ジェームズの太腿が体に押しつけられ、自分の指先がサテンのようになめらかな彼の肌に触れていることを意識せずにいられなかった。
「タラ……」
 その声で、彼が何をしようとしているかがわかった。私から離れて、私を部屋の外に追い出すつもりだわ。それは耐えがたかった。このままでいたかった。彼に触れているという喜び、彫刻のようなその体を肌で感じる幸せにもう少しひたっていたい。
 心の底で小さな警告の声がしたが、タラはそれを無視した。
「ジェームズ、追い出さないで。お願い。あなたが言ったことをずっと考えていたの。そして……」彼の裸の胸元に視線を落とすと、胃のあたりが溶けてしまいそうな不思議な快感に襲われる。
「君はあの時、僕を嫌いだと言った。二度と君からあんな言葉を聞きたくないんだ」
 彼は変わったわ──突然タラは気がついた。この二カ月でやせたし、私を見る瞳に以前にはなかった、くすぶったような激しいものがある。
「私、あなたを憎んでなんかいない」タラは大きく息を吸い込んだ。「愛しているわ。たとえ……」たとえあなたが私を愛していなくても、と言いたかったが、口に出せなかった。「私の……最初の男の人になってほしいの」
 それ以上は言えなかった。彼は強くタラを抱きしめ、唇を喉の下のくぼみに押しつけてきた。舌が動くと炎がはうような感覚が全身を包んだ。
「君は自分が何を言っているか、わかっていないんだ」ジェームズがかすれた声でつぶやく。「何も変わっていないのに。僕は今だってどうしようもなく君を求めている。狂気の沙汰だってわかっていながらだ。僕を止めてくれ、タラ」低い声でそう言いながら、彼はタラの喉に唇をはわせた。「お願いだから。今止めてくれないと、引き返せなくなる」
「止めたくない」タラは息を弾ませてささやき返した。「私を抱いて、ジェームズ」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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