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ブルー・クリークで待つ虹

ブルー・クリークで待つ虹


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

 見知らぬ町で待っていたのは、失われた祈りだった……。癒しの作家の名作、全米各紙のベストセラーリストを席捲!

 ■妻子を亡くしたウェスは、悲しみを抱えて放浪の旅に出る。たどりついたのは時がとまったような田舎町、ブルー・クリーク。そこで彼は、足の不自由な美しい女性アリーと出会う。それぞれ深い傷を持つ二人は、互いの存在に慰めを見いだし、しだいに確かな絆を育んでいった。だがそんな平穏も束の間、町では想像を絶する恐ろしい事態が進行しはじめ……。静かな地が狂乱に陥ったとき、ウェスは再びすべてを失ってしまうのか? 心の闇と希望を描いた感動作。

抄録

 ようやく家に帰り着いてバギーを納屋に入れたアリーは、震えていた。嵐の山道を下るのも辛《つら》かったけれど、ウェス・ホールデンに帰れと言われたときはもっと辛かった。いつも以上に足を引きずって、アリーは納屋の脇へ行った。蛇口に巻きつけてあったホースをほどいて、水を出す。雨をよけながら水を使うなんておかしいけれど、バギーが乾いてしまう前に泥を落とす必要があった。妹が使ったからといって怒るようなポーターではなかったが、汚れたままにされておいたのではいい気分はしないだろう。
 バギーを洗い終わると、いつもポーターがしているようにシートをかぶせ、次に自分の足に水をかけ、ジーンズと靴の泥をざっと落とした。全部終わるとホースを巻き戻して、のろのろと家へ向かった。
 幼い頃、納屋はアリーの隠れ家だった。猫と一緒に屋根裏で遊び、干し草の山で家を作った。夕飯が食べられなくなるからだめという母の目を盗んで、兄たちがクッキーや冷たい飲み物を運んできた。あの頃、アリーの世界は幸せに満ちあふれていた。
 アリーは屋根裏を見上げ、すぐに目をそらした。夢と一緒にあの日々も終わったのだ。現実はこれだ。山の奥で年ばかり重ねていく。おそらく一生結婚しないだろう。でも、以前ほど悲しくない。一人でいることに慣れてしまった。アリーの顔に激しい雨が吹きつけた。けれど彼女は怯むことなく嵐の中へ足を踏み出した。

 ウェスはアリーが納屋から出てくるところを見ていた。うつむきかげんで、足を引きずって。足首まで水に浸かっているのに、気づいていないようだった。あんなふうに肩を落としたアリーは見たことがなかった。そうさせたのが自分だと思うと、ウェスはいたたまれなかった。
 しかし、アリーの心中よりも差し迫った問題があった。さっき、もしもウェスが追いつかなかったら、ローランド・ストームはアリーにいったい何をしていたか。よからぬことだったに違いないのだ。あの目だ。口の端をぴくつかせてもいた。あの男の精神状態はまともじゃない。
 ウェスはため息をついた。自分のことを棚に上げるとはこのことだ。こっちだって冷静沈着とは言いがたいじゃないか。それに、義弟のアパートをあとにしたときは、何があっても他人とは関わるまいと思っていたのだ。すべてがどうでもよかった。しがらみなどまっぴらだった。次の瞬間に息が止まったって別にかまわないと思うことも多かった。ところが、彼にシェルターを与えてくれた一人の女性と出会って以来、すべてが変わった。
 アリーが何かにつまずいた。が、転ぶ前に体勢を立て直した。裏口へたどり着くと、ポーチでポンチョとブーツを脱いでそこに置いた。中へ入った彼女がドアを閉めてようやく、ウェスはほっと息をついた。
 家の中で明かりがともる。アリーが無事だったことの証だが、先のことはわからない。ストームのことを彼女に知らせないで心安らかに立ち去ることは、ウェスにはできなかった。彼が常に今日みたいにそばにいるとは限らないのだし、アリーは家に一人きりでいることが多い。下心満々の男にしてみれば、格好のターゲットだ。
 決意を固めると、ウェスは裏口へ向かい、ドアをノックした。

 アリーが濡れた服を脱いでいる最中に、裏のポーチに足音がした。驚いた彼女が、たたんでおいた洗濯物の中から父のシャツを取って羽織ろうとしていると、ドアがノックされた。膝まで届くシャツ一枚に裸足のままだったが、裸でなければかまわない。
 窓から外をのぞくと、ポーチに立っているのはウェスだった。とたんに心臓が跳ねる。アリーはシャツの胸元をかき合わせると、ドアの向こうへ声をかけた。「なんの用?」
「ぼくだ、ウェスだ。話がある」
「そんな体で嵐の中へ出てきちゃだめよ」
「体はなんともない。問題は頭なんだから」
 アリーは思わず笑みを誘われて、ドアを開けた。
 むき出しの脚にウェスは驚き、目を奪われた。二人を隔てる唯一の障害物をなくすのは、気が引けた。つまり、網戸を開けられなかった。
「ねえ……入るの? 入らないの?」
 ウェスは歯を食いしばって網戸を開けた。
「床が水浸しになってしまいそうだ」
 彼の足元にできつつある水たまりを見て、アリーは笑った。
「ほんとね」
 ウェスもつられて軽く笑った。
「申し訳ない」
「まったくだわ」アリーは言った。「この雨の中をわざわざやってくるぐらいだから、よほどのわけがあるんでしょうね……しかも、自分はわたしを追い出しておいてね」
 長い三つ編みから滴る水がシャツを濡らし、肌に張りつかせる。ほの見える柔らかな曲線に、ウェスの胸がうずいた――優しい女の腕の中でわれを忘れたいと、強く思った。思った次の瞬間、罪悪感に苛まれた。マージーを――あるいは、少なくとも、彼女と過ごした日々の思い出を――裏切ったような気がした。自分自身に腹が立つあまり、ここへ来た理由を前置きなしに口にした。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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