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暗闇のレディ 孤高の鷲 IV

暗闇のレディ 孤高の鷲 IV


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ラブ ストリーム孤高の鷲
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 作家になる前は高校で英語と世界史を教えていた。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともに米アラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』はヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。

解説

 富豪の父の死によって生活が一変し、バレリーは困りはてていた。派手な生活を嫌ってひっそりと暮らしてきたのに大仰にもボディガードがやってくるなんて。手術跡の残る不自由な脚を哀れまれることにも、財産目当ての求婚者に言い寄られることにも、じゅうぶん傷ついてきた。もう誰とも関わりたくない……。バレリーは、目の前に立ちはだかるたくましい男性を見つめた。グレイと名乗る彼は、全身に危険なオーラを漂わせ、傲慢な態度をとりつづけている。こんな男性を信用できるわけがないわ!

抄録

「彼はあとで電話すると言っていた?」
 グレイはゆっくりと視線を上げて、バレリーの顔を見た。その灰色の目の奥には見慣れないものがあった。
 それは……熱く燃える炎だ。バレリーは息をのんだ。一度ちらりと見たことがあるが、そのときはすぐに消えてしまった。今彼の瞳の奥にあるもののあまりの強さに、震えるような衝撃が彼女の体を走った。
「君にかけ直してほしいんじゃないかな」
 バレリーはうなずいた。喉が苦しく、口の中が突然からからになったような気がする。
「ボーイフレンドかい?」
 二人の間に濃密な空気を感じながらも、バレリーは笑い出した。見ると、グレイの唇の隅がいつものようにかすかに上がっている。まなざしは煙ったように暗い。そして燃えるように熱い。
「父の友人の一人よ。父と同年代なの」
 グレイはうなずいたが、視線をそらしはしなかった。「予想はしていたんだ……いずれ誰かが君の様子を見に来るだろうって」
「ボーイフレンドが?」
 グレイはふたたびうなずいた。質問を発するバレリーの唇を見つめていたが、やがてその視線はまた彼女の目に戻った。
「私には恋人はいないわ。こんなところに住んでいたら……」そう言いかけて、バレリーは自分が誰とも付き合っていない理由をグレイに説明する義務はないことに気づいた。
「恋人と付き合うのも一苦労だ」
「そのとおりよ」
 グレイは親指と人差し指で彼女の顎をとらえ、顔を上向けた。バレリーは逆らわなかった。彼の指に触れられて震えるような感覚が走ったが、やがて彼がただ縫い跡を見ているだけなのに気づいた。
「濡らさなかったかい?」
「できるだけ濡らさないようにしたわ。もう髪に血がついているのががまんできなくなったの。それに……」
 回復したことをグレイに言いたくなくて、バレリーは口ごもった。この数日で彼との間に生まれた心地よい関係を壊すのがいやだった。初対面のときにグレイに抱いた不信感が消え去ってしまったことは、もう自分自身にさえ否定できなかった。食べ物を与えてくれる相手に嫌悪感を抱き続けることなどできない。そのうえ、彼は命を助けてくれた。
 それが仕事だからよ。バレリーは自分に言い聞かせた。私を危険から守る。それが、そもそもグレイがここへ来た理由だ。胸にうずまく感情を抑えつけるように、バレリーはそう考えた。そしてあの灰色の目に見つめられて体の中に走った甘いうずきを無視しようとした。
「もう一人で歩き回れるぐらいよくなったわ。リハビリのためにも膝を動かさないと」
 彼の視線がまたバレリーの目に戻った。「本当に?」
「ええ」彼女は静かに言った。「経験が豊富なの。もちろん膝のことだけど」
 グレイの唇の隅がまたかすかに上がった。バレリーの言葉をおもしろがっているようだ。それも当然だ。なぜ自分がそんなことを言ってしまったのかわからない。理由などない。ただ挑発したかっただけだ。だが今の外見を考えると、挑発的とはほど遠い。
「それじゃあ……ほかのことは?」彼女の顎に指を触れたまま、グレイがたずねた。
 その指に上向かされたのか、それとも自分でそうしたのか、バレリーはまた彼の目をまっすぐに見つめていた。彼女は答えなかった。彼の目の奥にあるもののせいで言葉が出なくなってしまった。
 次の瞬間グレイの頭が動き、唇の向きを合わせるかのように傾いた。彼女の唇は、怪我をした日の夜、グレイが椅子のそばに立っていたときのように期待に開いた。
 あのときは彼がキスするつもりだと思ったが、違った。バレリーは息を詰めた。今度はグレイは背を向けなかった。その頭がどんどん近づいてくる。彼の指がやさしくバレリーの顎を持ち上げる。
 グレイの目的がはっきりしたとき、バレリーはまぶたを閉じ、現実を締め出した。そしてこの三日間空想の中でしか行き来できなかった世界へと旅立った。彼の唇を自分の唇に感じることを夢見た世界へ。グレイの腕が体に回り、そっと彼女を引き寄せた。クロノスの足元から助けてくれたときに感じた、あのたくましい胸へと。
 彼の指が顎から離れた。温かく乾いていて、信じられないほど心地よい唇がそっとバレリーの唇をかすめる。バレリーは意識の隅で、グレイの手が彼女の腕を握りしめるのを感じた。彼がやってきた日に握ったのとほとんど同じ部分だ。
 しかし今夜はその目的はまるで違っていた。彼の手に怒りはなかった。彼が舌をバレリーの唇の奥へとすべり込ませる。情熱と欲望の中で二人の舌が絡み合った。
 彼がほしい。彼に会った瞬間から、バレリーはそんな自分の気持ちに気がついていた――そして同時に否定していた。だが、もう否定することはできない。したいとも思わない。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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