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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ロマンス

ボスと見た夢

ボスと見た夢


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 ジュディス・マクウィリアムズ(Judith McWilliams)
 気がつくと、読んでいたロマンス小説を自分の好みに書き直していた彼女。それを知った夫の助言で、自ら執筆を始め、現在に至る。夫とともにアメリカ中を旅する機会が多く、その体験が彼女に大きな影響を与えているという。庭いじりや家族の世話をしていないときには、最大の楽しみである執筆に励む。もと教師で、四人の子供がいる。

解説

 社長であるルーカスの秘書を務めるジョスリンは、ハンサムで仕事一途な彼に切ない片想いをしていた。ある日、彼女のもとをルーカスと仲の悪い異母弟ビルが訪れ、会社の乗っ取りに協力するように要請する。逆らえば、ジョスリンの秘密をルーカスにばらすと脅迫して。ルーカスを陥れる陰謀になど加担したくない。そう思ったジョスリンが会社を辞める決意をした矢先、ルーカスは事故に遭い、記憶をなくしてしまう。ジョスリンは妻のふりをして彼の世話をすることになったが、そんな二人にビルの魔手が伸びてきて……。

抄録

 ルーカスは注意深く炎の上に大きめの薪をのせ、ゆっくり立ちあがるとジョスリンに笑いかけた。
「火だ」彼が誇らしげに宣言した。
 ジョスリンはルーカスのうれしそうな顔を見て、胸が熱くなった。
「あとはマシュマロがあれば完璧だな」彼が言った。
「マシュマロ!」ふいにジョスリンは、あれこれ大あわてで手配した忙しさで、食料のことをすっかり忘れていたことに気づいた。キッチンのがらんとした様子では、春にルーカスがここをあとにしたとき、食べ物は全部処分したらしい。
「ぼくならそれにチョコレートバーとグラハムクラッカーも添える」ルーカスはにやりとした。
「奇術師でもないかぎり無理ね。食料のことをまるで忘れていたわ。うっかり者にもほどがあるわね」
「近くに食料品店があるさ」ルーカスが言った。「君にも欠点があるとわかってよかった」
「どういう意味?」ジョスリンはぎくりとした。
「ここまで君はすべてをひとりで取りはからった。君が細部まで気を行き届かせて、ぼくは便乗していただけだ。なんだか自分がお荷物に思えてね」
「秘書は有能であることが義務づけられているの」ジョスリンは言った。「私はいつもそれにふさわしい働きをしているってわけ」
「ぼくだって、いつもはただのお荷物じゃないだろうさ。べつに非難してるんじゃない。君が有能だってことはわかってる。もちろん、ぼくが君と結婚したのは君の有能さが理由じゃないってことも」
 ジョスリンはなんと返していいかわからず、目をしばたたいた。偽りの結婚を支える作り話を並べようとは思わない。「秩序正しさは、私にとって大切なことなの」彼女は話をあくまであいまいにした。
「なぜ?」ルーカスがたずねた。
「なぜって?」
「きいてるのはこっちだよ。なぜ秩序正しさが君にとって大切なの?」
 ジョスリンは唇を噛んだ。黙っておくんだった。この偽装結婚で予想しかねたことがひとつあるなら、それは私生活について質問する権利をルーカスに与えてしまったこと。答えを拒めば疑われる。
「たぶん、自力でコントロールしてるって感じがするからだと思うわ」ジョスリンは真実の一部を打ち明けた。「さあ、火はついた。今度は休む番よ」
「疲れてないよ」ルーカスは言い張る。
「でも頭痛がするでしょう?」ジョスリンは目を細め、彼の青ざめた顔を見た。
「少しだけさ」ルーカスはしぶしぶ認めた。
「いいわ、妥協しましょう。あなたが一時間横になったら、一緒に買い物に行くというのはどう?」
「乗った。一時間は休むけど、それ以上一秒たりともまけないぞ。それから君は、けっして早く寝ろとがみがみ言わないこと。それと……」
「がみがみなんて言ってないわ!」
「じゃあ、せっつかないこと」彼は訂正した。「これで取り引き成立だね?」そう言って手を差しだす。
 ジョスリンはその手を見下ろした。触れたい。その手のひらにキスしたい。頬をすり寄せたい……。
「提案を受け入れる? それとも別の案がある?」ルーカスが言った。
「受け入れるわ」ジョスリンは努めて何気ないふりをして、彼の手を取った。でもだめだった。彼の手がこちらの手を握りしめてきた瞬間、隅々までぴりぴりと感覚が研ぎ澄まされるのを感じた。腕の産毛が逆立ち、神経という神経が目覚めたようだ。
「ぴんとこないな」ルーカスのつぶやきに、ジョスリンは凍りついた。
「どういう意味?」彼女は慎重にたずねた。
「君と握手をしても、しっくりこないんだ。君と話すのは自然なのに、握手にはなじむ感覚がない」
「たぶん手をあまりつながないからよ……でもおしゃべりはいつもよ」ジョスリンは事実を言った。
 ルーカスの顔にまばゆいばかりの笑みが広がった。ちゃめっ気と安堵が入りまじった笑顔だ。「それもそうだな。夫婦になったら、手をつないで出かけたりしないものだ、ね?」
 ジョスリンは目をぱちくりさせて、ルーカスの笑みの魔力から必死に気持ちを引き離し、彼の言葉に集中しようとした。
「こっちはおなじみだよね」ルーカスの手が伸びて、ジョスリンの体にまわされた。抱き寄せられ、彼の顔が下りてきて、思いがけず唇にキスをされる。
 歓喜の波がジョスリンの体を駆け抜け、思考回路がショートした。
 ルーカスがいきなりジョスリンを解放して身を引いたとき、彼女は喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからなかった。何気ないキスだけでこんなにショックを受けるなら、愛を交わしたらどうなってしまうの? そう思って、彼女はたじろいだ。ひとつだけ確かなことがある。これから先一、二週間は、感情の未知の海域を航海するのだ。ルーカスが記憶を取り戻したら最後、大しけになりそうな海域。
 ひょっとして、今の私は無分別すぎるかしら? でもその疑いは、ルーカスの顔を見たとたん吹き飛んだ。あとでどんなつらい思いをしようと、彼を見捨てられはしない。彼は私を必要とし、私は彼を愛している。今大切なのはその二つの事実だけだ。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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