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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

愛しい人の二つの顔

愛しい人の二つの顔


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ミランダ・リー(Miranda Lee)
 オーストラリアの田舎町に、四人兄弟の末っ子として生まれ育つ。スポーツが大好きな子供で、本を読むよりは外で遊ぶほうが好きだったという。父は教師、母は才能あるドレスの縫製師という家庭に育ち、全寮制の学校を出てクラシック音楽の勉強をしたのち、シドニーに移った。幸せな結婚をして三人の娘に恵まれたが、家にいて家事をこなす合間に姉エマ・ダーシーのすすめでロマンス小説を書き始める。趣味は幅広く、長編の物語を読むことからパズルを解くこと、そして賭事にまで及ぶ。小説を書くときのアイデアは、普段読む新聞、雑誌、小説、伝記、テレビ、そして少なくとも週に一度は見に行く映画から得る。現実に自分のまわりにいる人たちを登場させることはなく、“いつ私をヒロインにしてくれるの?”という娘たちの問いかけに、“決してないわ”と答えつづけているという。

解説

 ■他人に見せるジキル博士と私に見せるハイド氏、どちらが本当のあなたなの?

 ■アビーは、整形外科医イーサンのクリニックで受付として働いている。恋人の裏切りで獄中生活を強いられた彼女は、男性不信に陥っていた。そしてイーサンのほうも、なぜか女性に嫌悪を抱いているようだ。そんなある日、イーサンが、泊まりがけの医学会議に恋人として同行してほしいと頼んできた。多額の報酬つきで。いつもハイド氏のように冷酷な彼を見ているアビーは、即座に断った。何か事情があるらしいけれど、あんな人と旅行するなんてまっぴらよ! だが、その翌日、予期せぬ事件が起こった。アビーが母とも慕う恩師の家で盗難があり、大金が盗まれたのだ。嘆き悲しむ恩師を前に、アビーは心を決めた。イーサンの頼みを受け入れよう。その報酬を恩師に渡せばいい。アビーはこうして旅立った。大きな不安を抱きながら……。

抄録

 二週間前のような不愉快な事件は繰り返したくない。その日はブラウスの小さな貝ボタンがはずれ、角度によってはレースのブラジャーに包まれた胸が見えそうになっていた。
「君の曲線に阻まれて、ボタンのほうがあえなく負けてしまったようだね、ミス・リッチモンド」受付に次の患者のカルテを取りに来たイーサン・グラントは、カルテの置かれたトレイの方にかがみこみながら、からかうように言った。「次なる戦略としては、もっと大きなボタンを投入するか、大きめのブラウスを採用するかだろうな」
 顔が真っ赤にほてりだす前に彼が横を向いてくれたのは、アビーにとっては好都合だった。そうでなくても、おぼつかない手で小さなボタンをとめようとしながら、自分の胸が急に大きくなったような気がしてパニックに陥りかけていたのだから。
 イーサン・グラントに性的な意味でぞくりとさせられたのは、それが初めてだった。以来、二度とあんな失態は演じまいと心に決めた。そんなわけで、ノックをしようとして手が震えているのに気づいたとき、アビーはふと不安を覚えた。心なしか、鼓動まで速くなっているような気がする。
 アビーは眉をひそめた。イーサン・グラントごときにここまでびくびくするとは情けない。
「入りたまえ、ミス・リッチモンド」そっけない返事が返ってきた。
 アビーは奥歯を噛み締めながらドアを開けた。デスクの向こうに座っているこの男に、私のいらだちが読み取れるはずはない。そう自分に言い聞かせ、心を落ち着かせようとした。
「なんだい?」ドクター・グラントは威圧的に尋ねた。
 アビーは前に進み出て、革のカバーを張ったデスクに封筒を置いた。「ドクターにお手紙です。来週の会議の主催者からきた、講演内容の変更の知らせです。お読みになりたいのではないかと思ったのですが、お渡しするのを忘れていました。すみません」
 ドクター・グラントは封筒を手に取ると、即座に部屋の隅の屑籠に投げ入れた。「行かないことにしたんだ」彼はぶっきらぼうに言った。
 ドクター・グラントの顔に揺れる光と影が、美しい目の下の隈を浮きたたせている。すべて身から出た錆だと知りながらも、アビーは少し気の毒になった。
「それは残念ですね」自分なりにこの愚かな男に会議に行く決心をさせてあげようと思い、アビーは言った。好き嫌いはともかく、彼が優秀な医師であり、休養を必要としていることに変わりはないのだ。「せっかく代役でドクター・フィリップ・バリストラットが講演することになったというのに。それをお聞きになりたいんじゃないかと思ったんですけど。とても有名な方なんですよね?」
 その言葉に対するドクター・グラントの反応に、アビーは愕然とした。彼は椅子に座ったまま、数秒間凍りついたように動かなかった。ふだんは冷たいだけの青い瞳に表れているあれはなに? 驚愕? 動揺? まさかショックであるわけがない。ショッキングなことなど一言も言っていないのだから。
 それがなんであったにせよ、彼の表情が即座に氷のように冷ややかな笑みに変わったことに、アビーは二重に驚かされた。その笑みを見ていると、妙にエロチックな震えが背筋を走った。
「それは驚きだ」ドクター・グラントはゆったりした口調で言った。「君の言うとおりだな、ミス・リッチモンド。彼ほど著名な神経外科医の話を聞く機会なんて、そうそうあるものじゃない」彼は黒い革張りの椅子をまわし、座ったまま部屋の隅にすべらせると、屑籠から封筒を拾いあげた。「ご助言感謝するよ。あとになってこのチャンスを逃したと知ったら、どれほど後悔することか」
「それじゃ、いらっしゃるんですか?」アビーは期待をこめて尋ねた。シルビアがこの場にいたら、きっと喜ぶに違いない。
「なにをおいても行くしかないだろう」
 アビーは危うく手をたたいて喜びそうになった。
「いい笑顔だな、ミス・リッチモンド。僕が来週の金曜日にクリニックを休んでも、いっこうに気にならないと見える」
 アビーがどきりとしたのは、その皮肉たっぷりな言葉のせいだったのだろうか? あるいは、唇にそそがれた彼のまなざしのせいだったのだろうか? いずれにせよ、彼女のほほえみは一瞬にして消え去った。それでも、心臓は相変わらず肋骨の奥で激しく打っている。アビーはいつのまにか彼の唇を見つめ返していた。あの唇が私の唇に触れたら、いったいどんな感じだろう……?
 ふと我に返り、その突拍子もない考えに、自分であきれた。いったいなにを考えているの? 好きでもない男なのに、うっとりと身をゆだねることを夢見るなんて。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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