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脅迫結婚

脅迫結婚


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

 ■本当はまだ彼を愛している。だから、彼のとんでもない提案に従うしかなかった。

 ■イモジェンは十八歳の時、ドラッコと婚約した。十歳年上で、亡き父の右腕とも言われていたドラッコは、子供のころからイモジェンの憧れだった。すばらしい男性、そしてやっと実った初恋。彼女は幸せを感じていた。だが結婚式の日、義母がドラッコとのただならぬ関係をほのめかし、それを否定しようともしない彼に失望して、イモジェンは教会から走って逃げた。四年後、一度は放棄した父の遺産がどうしても必要になり、イモジェンは弁護士と連絡をとって故郷に帰ることにする。待ち合わせ場所に現れたのは――ドラッコだった。とまどうイモジェンにドラッコは言い放った。「君と僕はまだ婚姻関係にある。妻として、君にはぼくの子供を産んでもらう……」

抄録

 「離して」イモジェンは歯を食いしばって懇願した。「あなたに触れられるのは耐えられないわ。今はいや。だってあなたは……」車のドアを開ける彼の瞳が、怒りのために黒ずんでいるのがわかる。
 ミランダが現れたのは彼のせいではないけれど、父の信頼を裏切り、今、冷酷にイモジェンを利用しようとしているのは彼だった。ドラッコがどうしようもなく憎く、おぞましい──彼を軽蔑するわ。
 自分がどんなに傷ついているか、心がどれほどずたずたになって悲鳴をあげているかを考えたくなかった。その事実に目をつぶりたくて、イモジェンは大きく息をした。大人になり、過去を振り切ったはずの今も、自分が彼にこんなに振り回されていることが屈辱だった。
 自分の世界に入り込んでいたイモジェンは車が家に着き、ドラッコがドアを開けていることにも気づかなかった。間近で見る彼の腕は、たくましく筋肉が盛りあがり、清潔なせっけんの香りがした。それともう一つ──懐かしい彼の匂い、男らしい、ムスクを思い出させる危険な香りをかぎ分けたイモジェンは、鳥肌が立ちそうな感覚に襲われた。はっとして体を動かした拍子に、その彼の腕に胸元が押しつけられ、イモジェンは目を見開いた。真っ赤になって、胸の先端に走った電気のような感覚を無視し、急いで体を引く。
 イモジェンは彼を無視して車を降り、家に向かった。後ろで砂利を踏むドラッコの足音を聞くと、急にパニックが彼女を襲った。足を速めたが、考えてみたら鍵を持っているのは彼だから、先に家に入ることはできないのだ。
 道を空けて彼がドアを開けるのを待ち、一生彼がしたことを憎みつづけるわ、と考えながら、イモジェンはこぶしを握りしめていた。
「イモ」
 ドラッコの両手が肩にかかるのがわかった。
「いや! 触らないで」吐き捨てるように彼女は言ったが、どんなにもがいても肩に置かれた手ははずれなかった。やがて彼女の体はドアに押しつけられた。
「イモ、聞くんだ」
「いやよ」
 彼の瞳の奥に怒りの輝きを見たと思った次の瞬間、彼の顔で光がさえぎられ、耳元で歯ぎしりするようなささやき声が聞こえた。「聞かないのなら、方法はこれしかない」
 いやだと言っているでしょう、と叫ぼうとしたイモジェンの唇に熱い息が感じられた。信じられない思いで、また声にならない叫びがもれる。そしてそれからはあえぐどころか、息をすることもできなくなった。同時に考えることも、拒否することもできなくなった──なぜならイモジェンの存在のありったけが、細胞のすべてが、ドラッコのキスの致死的な魅力に占拠されてしまったから。
 まるで冷たいアイスクリームに熱いチョコレートがかけられたみたいだわ──ぼんやりした頭でイモジェンは思った。すべての感覚、あらゆる喜び、今までに経験したあらゆる甘美さが百万倍にされているみたい。それはイモジェンが夢に描いていたどんなものとも違っていて、それでいて想像したとおりだった。ただし、想像をはるかに超えてすばらしいものだったが。
 どうしたわけか、最初は怒りをぶつけるようだったドラッコのキスがいつしか官能的で、なだめ、じらすようなものに変わり、唇だけではなく舌までがからみ合っていた。それに手も……イモジェンの体はドラッコに触れられて溶けていき、次には燃えあがり、もだえ、炎に包まれた。
「これまでずっと僕を待ち焦がれていたみたいに、僕に飢えていたみたいにキスをするんだな」彼に触れられて熱い歓喜に体を震わせていたイモジェンは彼のうめき声を耳にした。彼はイモジェンの体を引き寄せ、すっぽりと自分の体で包み込み、太ももの間に足を差し入れてきた。
 さまざまな思いに溺れかけていたイモジェンの耳にやっと彼の言葉が届いた時、彼女は初めて自分が何をしているかに気づいた。鋭い叫びをもらして、イモジェンは彼から飛びすさった。
「私……飢えてなんかいないわ。それもあなたになんか……」激しく彼女は否定した。「でも、リオのストリート・チルドレンは本当に飢えているの。ドラッコ、だから私はここにいるのよ。彼らのため、彼らのためだけに」
 イモジェンの顔は蒼白になり、わずかに距離を置いてドラッコに向かい合っていた。
 彼の顔は陰になっていて見ることができないが、その気配から、彼が獲物を狩る時のように神経を研ぎ澄まして自分を見つめているのがわかった。イモジェンは無防備な傷つきやすい状態に置かれたような頼りなさを感じた。息をつめて彼の意地の悪い言葉を待ったが、ドラッコは何も言わず、何もせず、くるりと向きを変えて玄関のドアを開けた。
 イモジェンは階段を上がった。今にも彼が後ろからついてくるか、止まれと命令するかと身構えたが、あるのは沈黙だけだった。だが彼女は振り返ってその理由を確かめることはしなかった。とてもその勇気はなかった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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