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オリンポスの咎人 パリス 上

オリンポスの咎人 パリス 上


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: オリンポスの咎人パリス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 どんな女も魅了する美貌の戦士パリスは、神に残酷な呪いをかけられている。生きるために毎夜誰かと寝なければならないが、同じ相手とは二度とベッドをともにできないのだ。だが1年ほど前、パリスは初めてひとりの女にもう一度欲望をおぼえた。彼を騙して近づき、牢獄に閉じ込めた忌々しい敵――シエナに。ところがパリスが逃亡を企てたときにシエナは目の前で殺され、以来、彼は酒に溺れる毎日を過ごしていた。そんなときシエナが天界に囚われていると知り、パリスは救出に向かう。憎みながらも彼女を求めずにはいられなくて。

抄録

 こういう静かな瞬間、パリスの心は決まって記憶をたどり、シエナと初めて会った時へと彼を連れ戻すのだが、それは今夜も同じだった。どうしても寝る相手が必要で、彼はアテネの街路を歩いていた。ところがすれ違う女は皆いやそうに彼を避けていく。そのとき後ろから何者かにぶつかられ、衰弱していた彼は倒れそうになった。
「ごめんなさい」女の声が聞こえた。官能的なその声は、パリスのすべてを沸き立たせた。
 あまりすばやく動くと相手をおびえさせてしまうかもしれないと思い、パリスはゆっくりと振り向いた。彼女は足もとに散らばった紙をしゃがんで拾おうとしていた。最初にパリスの目に入ったのは、顔を影の中に隠している褐色の髪だった。
「歩きながら読んでいた罰ね」彼女はつぶやいた。
「いや、きみが読んでいてよかったよ」パリスも手伝おうとしてしゃがんだ。「ぶつかってくれてよかった」彼女自身が思う以上に。
 濃いまつげが上がり、ふたりの目が合った。彼女は息をのんだ。パリスは後ずさりした。目と唇が大きすぎるその顔、そばかすのある肌はどちらかというと平凡だが、物腰には、普通の人間が喉から手が出るほどほしがる優雅さがあった。
「きみの名前は、まさか“ア”で始まるんじゃないだろうな?」パリスはふいに運命を疑った。最近マドックスはアシュリンという女に骨抜きにされた。ルシアンはアニヤという女のために男らしさを捨てた。パリスは誰のためでもそんなことをするつもりはなかった。
 彼女は困った顔をして首を振った。褐色の髪が細い肩のまわりで波打った。「いいえ、わたしはシエナよ。でも、それはどうでもいいわね。ごめんなさい。口走るつもりはなかったの」
「どうでもよくなどないさ」パリスは、彼女を脱がせるのはさぞ楽しいだろうと思いながらハスキーな声で答えた。今はぶかぶかの服を着ているので、女らしさが秘密のまま隠されている。緊張のあまり饒舌になっている様子が魅力的だ。彼女はベッドでも同じ反応を見せるだろう。「きみは……アメリカ人かい?」
「ええ。休暇でここに来て、原稿をまとめているところなの。あら、今度もきかれないのに答えちゃった。でも、あなたの訛はよくわからないわ」
「ハンガリー人なんだ」戦士たちはしばらくブダペストに住んでいた。彼女が聞いたこともない言語を話せることはあえて口に出すまでもなかった。「きみは作家なのか?」
「ええ。いえ、そうなりたいと思ってるの。待って、正確には違う。わたしは作家よ。まだ本は出版されていないけど」
 これで本当のことがわかった。彼女は作家ではない。そのあとコーヒーでもいっしょにどうかと誘われたとき、すでに欲望をうずかせていた彼はイエスと答えた。話しているあいだも笑いっぱなしで、一分一秒が楽しかった。あんなにリラックスできる相手はそう多くはない。シエナの笑顔は釣り込まれるようで、機知は鋭く、しぐさは優雅そのものだ。
 そのあいだも魔物はフェロモンを発し続けていたので、ホテルの部屋をとるのを納得させるのは難しいことではなかった。というか、当時彼はそう考えていた。シエナは気が変わったと見せかけていたのだ。いや、実際に気を変えたのかもしれない。彼と同じように恋に落ち、ハンターの仲間に引き渡すのはやめようと思ったのかもしれない。だが魔物を背負ったパリスは強引に彼女を人気のない路地に連れていき、熱くキスした。
 指輪の中に隠し持っていた針でシエナに薬を打たれたのはそのときだ。パリスが朦朧として目を覚ますと、裸で担架に縛りつけられていた。シエナが目の前にいたので、彼と同じくハンターに捕らわれたのだと思った。そのときシエナがある言葉を口にしたせいで、ふたりの関係はがらりと変わってしまった。
「閉じ込めたのはわたしよ」
 それに対して彼はどう答えたか?「どうしてそんなことをした?」こんなにも求める女が彼に対してこんな仕打ちをするとは信じたくなかった。
「わからないの?」シエナは首を傾げて指先で彼の首筋をなでた。痛みを感じたとき、それが針のあとだとわかった。シエナの質問に対する答えが頭に浮かび上がった。
「きみはおれの敵か」
「ええ」シエナは顔をしかめて続けた。「傷が治っていないわ。あんなに勢いよく針を刺す気はなかったの。それは謝るわ」
 裏切られた気持ちと不信が込み上げるのを感じながらパリスは彼女をにらみつけた。「おれをはめたんだな。最初からそのつもりだった」
「そうよ」
「なぜだ? きみが餌だなんて言わないでくれよ。それほど美しくない」傷つけようとして言ったのに、今思い出すと身をすくめてしまう。あのあとシエナがあんなことをしたのも当然だ。
 シエナは頬を赤くした。「いいえ。餌じゃないわ。いえ、こう言ったほうがいいかしら。あなた以外の戦士の餌にはなれない。でも、あなたは相手が誰でも気にしない。そうでしょう、“淫欲”の番人?」言葉のすべてに嫌悪感があふれていた。あがり性のチャーミングな作家の面影はどこにもない。けれどもその物腰の優美さは消えなかった。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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