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オリンポスの咎人 パリス 下

オリンポスの咎人 パリス 下


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: オリンポスの咎人パリス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 天界の血と影の国で、ようやく再会を果たしたパリスとシエナ。だがそれはぎこちないものだった。神に幽閉され、怯えていたシエナは、パリスが命がけで助けに来てくれたことに驚きを隠せなかった。騙されていたとはいえ、彼女は罪のないパリスを罠にはめ、傷つけたのだから。後悔と彼への募る想いを抑えきれず、シエナは体が弱っていくパリスのために体を差し出そうとする。だが、パリスに冷たく断られ、シエナは愚かな自分を罵った。彼には憎まれているに違いないのに。憎しみ合い、傷つけ合い、求め合うふたりの運命の行方は!? 

抄録

「シエナを放せ」胸の傷口が配水管に空いた穴のように血を噴き出しており、どんどん血が失われていく。ひどく痛むし、そのうち倒れるのは間違いない。だが倒れるのはシエナの安全を確保してからだ。
 ザカレルは首を振った。「おまえは気性が激しすぎる」
 それがどうしたというんだ?「感情はコントロールしている」
「本当に?」
 嘘だ。「していると言っただろう。シエナを放さないなら、力ずくで放させるぞ」
「この両手を取るとでも言うのか?」張りつめた沈黙が続いた。感情を否定した男の胸の中で、怒りが飛び出そうとしてもがいている。いつの日かその怒りが爆発するのは間違いない。「うっかりシエナを傷つけたら自分にどう言い訳するつもりだ?」
 パリスは二歩ザカレルに近づいた。「今すぐ離れろ」暗闇は彼の中に深く根を下ろしている。それは入り込んで動かず、シエナとの別れの時が来ても取り除くことはできない。シエナを失うことになったせいで、自分がすでに絶望に向けて沈み始めているのがわかる。シエナの前で気を許せば、彼女もいっしょに引きずり込んでしまうだろう。愛し合ったあと自分の感情と激しく闘っているのはそのせいだ。
 今、パリスはそれをありがたいと思った。ザカレルを殺さなければならないなら殺す。そうすれば彼の中の暗闇は後悔ではなく幸福感に満たされるだろう。
「暗闇か」ザカレルが言った。
「心を読むつもりか?」こんなことをして、ただではすまないぞ。
「いや」ザカレルは答えた。「その目だ。そこに暗闇がある。それがなんなのかわかるか? 自分が何をもてあそんでいるのかわかるか? わからないなら教えてやろう。人間の体に子どもが宿るように、魔物の体は邪悪さを育てる。それこそおまえがしでかしたことだ。おまえは魔物が新たな魔物を生み出すのを許した。そいつはおまえのもの、おまえの子であり、最初の魔物と同じように決して出ていかない」
 驚いてもおかしくない話なのに、パリスは驚かなかった。怒りが強まるはずなどないのに、さらに燃え上がった。シエナにこの呪わしい話を聞かせてしまった。「おれの女から離れろ」
「パリス」シエナの声には悲しみがあふれていた。
 怒りではなく悲しみなのがパリスを混乱させた。どちらでもかまわない。シエナを手放す時が来たら、独占欲はしまい込もう。でも今は違う。しまい込むことなどできない。さっきまでシエナの中に入り、絶頂に達し、自分の印を刻みつけた。口にはまだ快楽の味が残っている。シエナは彼の名を叫び、もっと多くのものを求め、与えようとした。
「あなたからのプレゼントをまだ持っているの。これは……もしかして……使うべきかしら? 彼はあなたの仲間だと思っていたけれど……」
 パリスはまばたきした。シエナはザカレルを刺そうというのか? 彼のために? ありえないことなのに、その言葉を聞いてシエナへの欲望がいっそう高まった。ザカレルの話を聞いたのにそれでもこんなことを言うシエナに、心が温かくなった。
「まだだ」背後で堕天使の男がよろよろと立ち上がった。その手には武器が握られている。
「やめろ」ザカレルが堕天使を止めた。そしてとうとうシエナから手を離した。「おまえの目から赤い色が薄れている。いいことだ。今ならシエナを傷つける危険はない。だからこれから堕天使をよそに移してまた戻ってくる。おまえはこの国の出口に向かえ」次の瞬間、ザカレルは消えた。堕天使には触れもしなかったのに、いっしょにいなくなった。
 まるでザカレルの存在に体を支えられていたかのように、パリスは膝から崩れ落ちた。シエナは彼に駆け寄って倒れる体を支えた。パリスの視界に黒い蜘蛛の巣が広がっていく。いつ気を失ってもおかしくない。
「わたしがいるわ。わたしが面倒を見てあげる。誰にも触らせないわ」
 今言わなければいけないことがあるのに、言いたくなかった。これまで何度となく同じ状況に陥ったことがある。負傷し、気を失う――それを治す方法はひとつしかない。
「おれは……きみに頼みたいのは……セックスだ」
“淫欲”の魔物が隠れ場所から飛び出してきて下半身に血液を注ぎ込んだ。だがここからは未知の領域だ。シエナと知り合う前に同じ女と二度寝たことはなかった。それを経験した今、体力を維持できるのはわかったが、怪我は治せるのだろうか?
「セックス? でも今のあなたはそんな状態じゃないわ。体を休めないと」
「休息はいらない。自分でも情けないと思うがこうするしかないんだ」こういう怪我を負ったときは、できるだけ大勢の相手と激しいセックスをする必要がある。だが百人の美女に囲まれていてもほしいのは、目の前にいるひとりだけだ。無言のままやさしい手で怪我の様子を確かめている女だけだ。こんな状態ならなおさら信用してはいけないのに、どうしても突き放すことができない。
 次に何が起きようがどうでもいい。
「頼む、シエナ。おれに乗ってくれ」
 答えはすぐに返ってきた。「わたしに何か頼む必要なんかないのよ、パリス。あなたの面倒を見ると言ったでしょう。だからそうしてあげる」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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