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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

華やかな牢獄

華やかな牢獄


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 モディーン・ムーン(Modean Moon)
 かつては、したいと思うことはなんでもできると信じていたが、そのすべてをするには一回の人生では時間が足りないと気づいた。その結果、選択しなかった道を探検するために作品を書いていると語る。

解説

 ■この豪奢な屋敷の中には、愛と裏切りと陰謀が渦巻いている。

 ■リチャードの目は、陰気な病室の中にいる女性に釘付けだった。女性は痩せ細り、かつては美しく輝いていた目にも生気がない。“そのうえ、彼女は僕が誰だかもわからないんだ”リチャードは、自分の妻を薬漬けにして、記憶を奪った病院に、怒りを抑えきれなかった。自分を見捨てて家を出た妻、レクシーに対しても。七カ月前、レクシーは事故で瀕死の状態にあったリチャードに、離婚と多額の財産分与を要求して姿を消した。少なくとも、彼の母はそう言っていた。だが、今、レクシーは記憶を失って怪しげな病院に閉じ込められている。いったい、七カ月の間に何があったんだ? そして、妻の裏切りに対する僕の怒りはどこに向ければいいんだ?

抄録

 レクシーは涙をぐっとのみ込みながら、涙を流す自分の弱さを、そしてその涙のわけを隠してしまう暗闇を憎んだ。言われたとおり、リチャードの部屋に通じるドアは開けておいたが、隣の部屋からは物音も光も、人の気配もまったく伝わってこない。どこへ出かけたかはわからないが、リチャードはまだ外出から戻ってきていないらしい。
 レクシーはローブの前をかき合わせ、隣に通じるドアのところに立った。リチャードの部屋は真っ暗で、誰もいないベッドの上に窓から明るい月の光だけがこぼれている。その窓とベッドを見ているうち、レクシーは一瞬既視感に襲われた。懸命に思い出そうとすればするほどかえって記憶が逃げていくことは経験でわかっていたから、そこにじっと立ったまま、何か記憶が浮かび上がってくるのを待ち受ける。けれども何も出てこなかった。
 苦笑いを押し殺し、レクシーは温かいベッドに戻った。むなしい笑い声がうめき声に変わる。わたしはこれから一生の間、自分がなぜこんな目に遭ったのか思い出せず、理由もわからないまま、自分を憎む人たちに囲まれて暮らす運命なの?
 嘘つきの泥棒猫?
 それがわたし?
 何があったかをリチャードが話してくれないのはそのせいなの? もしそれが事実なら、リチャードはとうの昔にわたしとの結婚を解消し、わたしはただ一人放り出されているはずだわ。
 リチャードは今どこにいるの?
 そんなこと、わたしにはなんの関係もないわ。
 ベッドで寝返りを打つ。寂しさと絶望で、心の壁がもろくも崩れそうだった。でも負けられない、負けるわけにはいかないわ。レクシーは枕をきつく抱きしめ、安らかな眠りを祈った。

 カーテンのない細い窓の前に、浅黒い細身の男がこちらに背を向けて立っている。かすかな光の中でも、彼が緊張で動けずにいるのがわかる。わたしのいとしい人。浅黒い肌の天使。その彼が今、わたしを求めている。
 彼女は彼に近づく。夢だとわかっていながら、体が軽く浮くような感じに不思議な気分になる。大胆に、両腕を彼の腰に回す。「なぜ?」裸の背中に頭をつけて彼女はたずねる。「なぜなの?」
 男は彼女の手に自分の手をきつく重ね、深く荒々しい息をつく。「ぼくから離れるんだ、アレクサンドラ」彼女の手を握りしめながら彼が言う。「さもないと、ぼくはもっときみを傷つけてしまう」
 ほんの一瞬のためらいを、彼女は振り払った。これはわたしが、何週間もの間望んでいたことなのよ。いつになく熱い思いに突き動かされ、彼女は彼にぴったりと身を寄せた。彼の背中の筋肉が、コットンのシフトドレス越しに、痛いほど張りつめた乳房に触れる。彼の彼女を求める気持ちが、たくましさが、感じやすさが伝わってくる。
「きみはぼくを捨てていったりしないね」まるで体からしぼり出すかのような声で男が言う。
「約束するわ」彼の肩に小さなキスをいくつも浴びせる。もっと、もっと彼にあげたい。「約束する」
「アレクサンドラ」彼はうめくように言うと振り返り、彼女を固く抱きしめた。彼女は爪先立ちになって両腕を彼の首に回す。それでもまだ届かず、彼は彼女を抱き上げてその唇を荒々しくむさぼった。それに応えて彼女の体を熱い血が駆け巡る。やがて彼は唇を離して腕の力をゆるめ、弱々しく抗議する彼女を床に下ろした。「きみがほしい」その言葉の奥には、彼が口にしない、もっと優しい言葉が隠されていた。愛している。きみが必要なんだ、と。
 彼の目はいくつもの秘密を秘め、夜の闇のように暗い。ついにそのときが来たんだわ。迷いなどすべて振り払うのよ。彼のために。今もし彼を拒んだら、彼はまた心を閉ざしてしまう。
 彼の首筋が緊張でこわばる。彼女は指を上へと這わせ、彼の首筋をそっと撫でながら、自分でもまだよくわからないものを求める。片方の手で、ひげの下に隠れたたくましい顎の線をなぞる。そっと両手でうながすように、彼の顔を自分の方に向けようとする。「わたしも、あなたがほしいわ」
 彼は頑として動こうとしないが、その体内にはエネルギーの塊がうごめいているのがわかる。
「きみに痛い思いをさせたくないんだ。その……女性を抱くのは久しぶりで……」
 彼女は彼の頬から唇へと指を這わせ、彼の言葉を封じた。「わたしも……」そこで口ごもる。小さな嘘だけど、あとになれば彼もきっと許してくれるわ。「わたしもそうよ」
 指の下で彼は唇を動かし、彼女の手のひらにそっと顔を押しつけた。
 わたしはこの人を愛している。たとえ信じてもらえなくても、彼に抱かれさえすれば、このあふれる愛を見せてあげられるわ。彼女はもう一度背伸びして彼の首に腕を回し、さっきよりも力をこめて引き寄せた。そうよ、見せてあげる。
 彼が唇を重ねてきた。さっきの荒々しさは少し抑えている。彼女を抱き上げ、乱れた狭苦しいベッドに横たえる。その隣に自分も倒れ込みながら、唇も舌も一瞬たりとも離さない。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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