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砂漠の王の誤算 アズマハルの玉座 III

砂漠の王の誤算 アズマハルの玉座 III


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアアズマハルの玉座ジュダールの王冠
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 オリヴィア・ゲイツ(Olivia Gates)
 カイロ在住のエジプト人。作家だけにとどまらず、眼科医、歌手、画家、アクセサリーデザイナーという実にさまざまなキャリアをもち、妻と母親業もこなしている。キャラクター設定やプロットのアドバイスをしてくれる娘と、ストーリーが気に入らなければキーボードの上を歩きまわる辛口批評家のアンゴラ猫の助けを借りながら、情熱的なロマンスを書き続けている。

解説

 ゾハイド王国の政変で国外追放された王女レイラは、ある夜、暴漢に襲われた。車に押し込まれる寸前、長身のたくましい男性に助けられてあやうく難を逃れるが、相手を威圧するような尊大なオーラを放つ、その男性が何者かに気づいて、レイラは呆然とした――ラシッドがなぜここに?  幼いころ宮殿でともに育った彼に、レイラはずっと夢中だったから……。2年ぶりの再会に胸躍らせた彼女は、翌日、彼に求婚されて天にも昇る心地になった。しかし、ラシッドはレイラを愛してなどいなかった。彼の真の狙い――それはゾハイド王家から花嫁を娶り、隣国アズマハルの玉座に就くこと。無垢なレイラは、いともたやすく彼の術中にはまってしまったのだ!

 ■初恋の人、ラシッドのためにずっと純潔を守ってきたヒロイン。彼の妻になれたのに、やがてそれが便宜結婚だったと気づいて、どん底に突き落とされ……。オリヴィア・ゲイツの3部作〈アズマハルの玉座〉最終話です。アズマハルの王冠は、いったい誰の手に?!

抄録

 彼は驚いているのだろうか。もし傷口に触れたらどれだけ驚くだろう? レイラはそう思うと、我慢できなくなり、震える手を彼のほうに伸ばした。
 だがラシッドは彼女の腕をつかんだ。
 レイラが顔を上げると、ラシッドが怒りをむきだしにした獣のような表情で彼女を見つめていた。そんな顔を向けられたら、誰でも即座に震え上がるだろう。だがレイラはそれでも彼の体に触れて慰めを与えたかった。彼女はもう片方の手を伸ばしたが、その手もラシッドにつかまれた。彼女は懇願した。「お願い、ラシッド。この手であなたに触れたいの」
「なぜだ? ぼくが完璧だったのは昔の話だ。それからぼくはばらばらになり、ようやくまたひとつに戻れた。それでもつぎはぎだらけだ。だからぼくを哀れむのはやめてくれ。ぼくにとってそれは侮辱でしかないんだから」
 ああ、どうにかして彼の心を癒やしてあげたい。レイラは痛切にそう思いながら口を開いた。「侮辱なんかじゃないわ。わかったわ、わたしがあなたをどう思っているのかこれから素直に話すから」
 ラシッドは彼女の手を離した。それから顔の表情を消して後ろに下がった。
 レイラの胸はよじれた。ラシッドが彼女の素直な意見を聞いて傷つくことを恐れ、安全な距離を取るように一歩下がったかに思えたからだ。
 レイラは前に進みでて、彼の手を握った。「あなたは昔からほかの人がかすんで見えるほど完璧な人だった。今でもそれは変わらない。いいえ、いっそう魅力が増したわ。だってその傷は、あなたが想像もつかないような苦難を乗り越えてきた証拠でしょう。それはあなたの並はずれた強さを表しているのよ」
 ラシッドは目を見開き、虚を突かれた顔になった。傷口に触れるなら今だ。レイラはそう思い、彼のほうに手を伸ばした。
 だがラシッドは彼女の手をすばやくつかんだ。「きみがこんな醜い傷にさわりたいなんて思うはずがない」
「わたしは一時の衝動に駆られているわけではないわ。あなたにずっと触れたかったの」ラシッドはさらに目を見開いた。レイラはすかさず言いつのった。「この手であなたに触れさせて、お願いよ」
 ラシッドは思案するような顔になった。それから目がすっと陰り、彼女の手を離した。
 レイラはおそるおそる手を伸ばし、胸もとの傷跡にそっと触れた。その瞬間、彼女のぬくもりが指先から彼に伝わったように感じた。そうすることでラシッドの苦しみを癒やせるのなら、いつまでもそうしていただろう。しばらくしてからレイラはずっとききたかったことを尋ねた。「この傷はまだ痛むの?」
「いや、もう痛みはない」その簡潔な答えが、どれほど長く彼がこの傷に苦しめられたのかを物語っていた。ラシッドはくぐもった声で話を続けた。「そう言うと、誰もがこの傷のことをきかなくなった。痛みがなければ、何も感じていないと思っているらしかった」
 レイラの胸は締めつけられた。「わたしはほかの人とはちがうわ。あなたにとって大切なことは、わたしにとっても大切なことなの」彼女はこらえきれなくなり、ラシッドの首に手をまわして顔を引き寄せた。そして顎にそっとキスすると、傷跡に沿って唇をすべらせた。彼は体を震わせたが、やめさせようとはしなかった「今はどんなふうに感じているの? 教えて、ラシッド」
 彼の声はざらついていた。「心が落ち着いているときは、傷なんてないと思うことができる。でも心に隙ができると、醜い傷のあるこの体が、もはやぼくの体ではなくなったように思えるんだ。悪意が傷口からはいりこみ、体中に広がっていくような気がしてならない」
 つまり、彼は悪意に体を乗っ取られるかのように感じているのだ。二度とそんな気持ちにならないようにしてあげたい。レイラはそう思いながら、唇で彼の肩から背中へと傷口をたどっていった。彼の苦しみを吸い取るかのように。「この傷にさわられると、どんな気持ちになるの?」
 ラシッドは体をこわばらせた。「さわられたことは少ないが、そのときは嫌悪感でいっぱいになり、暴力的な衝動さえ覚えた」
 レイラは唇をとめた。「あなたは……あなたは今もそんなふうに思っているの?」
「いいや」
 ラシッドがそれ以上何も言わなかったので、レイラは唇で探索を続けた。今度はもっと大胆に。「今はどんな気持ちになっているの?」
 彼は何も言わなかったが、息づかいが乱れていた。
 レイラは顔を上げてもう一度尋ねた。「どんな気持ちなの、ラシッド? 教えて」
「きみが触れるたびに、とうの昔に忘れ去った感情が呼び戻されるようだ。神経の隅々で火花が散っているような気持ちになってくる」うなるような声でそう言うと、ラシッドは片手をレイラの髪のあいだに差し入れ、もう片方の手を彼女の背中にまわして抱き寄せた。そして目をのぞきこみ、張りつめた顔で問いかける。「きみの望みはぼくをこんな気持ちにさせることなのか、プリンセス?」
 次の瞬間、彼の唇がレイラの唇に押しつけられた。
 レイラは唇を開いた。ラシッドにキスされたかった。物心ついたときからずっとそうだった。それが叶うなら、息ができなくなってもかまわなかった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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