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欺きのワルツ

欺きのワルツ


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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解説

 街中が噂するあの人の毒牙には、誰も抗うことはできない――

 ■人気急上昇のA・スチュアートが放つ、魅惑のリージェンシー・ロマンス。19世紀初頭のロンドン。借金を重ねた準男爵の父を亡くし、高貴な身分以外のすべてを失ったアネリーゼは、裕福な家に世話になりながら貴婦人の話し相手や付き添いをしている。今回の滞在先である新興成金チップル家では、一人娘を貴族に嫁がせるための指南役を任された。だが花婿の最有力候補は、よりによって悪名高きクリスティアン・モントカーム。彼の悪魔的な魅力と放蕩ぶりを知るアネリーゼは、無垢な令嬢に手を出さないよう、彼に直接、釘を刺すことにした。まさか彼の誘惑の矛先が自分に向けられるとは思いもせずに……。

抄録

「いや、ドラゴン」彼はつぶやいた。「そんなに卑下することはないさ。きみはお堅いオールドミスだと世間を納得させるため躍起になっているが、本当はぼくとたいして変わらない年のはずだ」
「失礼ね! わたしは二十九歳よ!」怒ってそう叫んだとたん、彼の思うつぼだったことに気づいたが、すでにあとの祭りだった。
「ほらね、たいして年寄りじゃない。いいかい、これは世知に長けた年長者の助言だと思って聞くんだな。勝てない闘いを挑むのはけがのもとだぞ。ヘッティ・チップルに関するかぎり、きみは数でも、武器でも負けているよ。ぼくは彼女を手に入れる。どれほど手間がかかろうとあの娘と結婚する。昔からえり好みをするタイプではないんだ。それに事としだいによっては、きわめて残酷にもなれる」
 それはたしかだろう。アネリーゼの自信は揺らぎはじめた。決して意気地がないわけでも、根性がないわけでもないが、たしかにこれは勝てない闘いかもしれない。ジョサイア・チップルは娘を貴族と結婚させたがっている。しかし、これは娘の幸せを考えてのことではない。上流階級の仲間入りをしたいというチップル自身の野心のためだ。そしてクリスティアンはたしかに道楽者だが、アネリーゼと同じくらい古い家柄の出で、まもなく子爵になる。クリスティアン・モントカームはなかなかの掘り出し物だとチップルを説得すれば、あれこれ気をもむ必要も、この扱いにくい男を相手に孤軍奮闘する必要もなくなる。彼が婚約者を訪ねてきたときに、礼儀正しく会釈すればいいだけだ。ヘッティの豪華な結婚式の準備を頼まれるかどうかは考えたくなかった。ミスター・チップルのとんでもない趣味の悪さを抑える仕事は、ほかの誰かに任せればいい。
「ミス・チップルを愛していらっしゃるの?」アネリーゼはかすかな望みを抱いてそう尋ねた。
「まさか! 冗談はやめてくれ!」彼はぞっとしたような声でそう答えた。「ぼくは愛など信じていないのさ。せいぜい好意と、ある種の肉体の喜びをともなった愛着は感じるだろうが、それはとても愛とは呼べない。ぼくがロマンチックな詩人に見えるかい? きわめて現実的な男だよ」
「ミス・チップルには愛が必要よ」アネリーゼは小さな声で言った。
 クリスティアンはあきれ顔で彼女を見下ろした。「そうかな?」彼はややあってつけ加えた。「キスしてもらう必要があるだけかもしれない」
 アネリーゼがこの言葉の意味を考えるまもなく、クリスティアンはいきなり彼女を引き寄せてテラスの濃い影のなかへと引き込み、冷たい外壁に押しつけ、唇を奪った。
 驚きのあまり、アネリーゼは全身をこわばらせた。しかし、彼はアネリーゼの反応はたいして期待していないようだった。まだ強い力で腕をつかんだまま、もうひとつの手を顎にそえてキスを続けた。顎に触れているひんやりした手袋の感触が、なぜか奇妙に心をそそる。だがそれも、ゆっくりとやさしく、かすめるようにキスする唇の思いがけない柔らかさほど奇妙ではなかった。アネリーゼは催眠術にかかったように動けず、目を閉じて闇を漂った。
「レッスンその一だ」彼はアネリーゼの唇に向かって囁いた。「今度はレッスンその二だよ」クリスティアンは指先に力を入れ、アネリーゼの顎を下に引いて口を開けさせ、ふたたび唇を重ねた。恋人としかしてはいけない、深い、親密なキスを。全身が恥ずべき反応を示すのに驚いて、アネリーゼは両手で彼を押しやろうとしたが、なぜかいつものような力が入らず、ただ目を閉じて顔をのけぞらせ、月明かりのテラスの暗がりでクリスティアンのキスを受けた。
 先に唇を離したのは、彼のほうだった。突然息を乱してアネリーゼを見下ろしたのも彼のほうだ。だが、月が後ろにあるせいで、陰った顔にどんな表情が浮かんでいるのかアネリーゼには読めなかった。見えるのは鮮やかにきらめく瞳だけだ。「きみは熱心な生徒だな、ドラゴン」彼はつぶやいた。
「レッスンその三は何かしら?」アネリーゼは押し殺した声で尋ねた。
「きみはまだその用意ができていないよ、愛しい人《ラブ》。用意ができたときに教えてあげよう。それまでは、レッスンその二の習得に励むとしようか。ヘッティほどキスが上手ではないが、何度か練習すれば……」
 アネリーゼは彼を力任せに押しやった。今度はクリスティアンもつかんでいた腕を放し、後ろにさがった。アネリーゼは素早く彼の横を通りすぎたが、立ち去ろうとすると、かすかな笑い声が追いかけてきた。
 アネリーゼはフランス窓の前で足を止め、くるりと振り向いて彼をにらみつけ、怒りに任せて、思いつくかぎり荒々しい侮辱を投げつけた。「あなたは去勢されるべきね」
 クリスティアンの笑い声が大きくなった。「それはどうかな。きみはそんなことを望んでいないだろうよ」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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