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契約ハネムーン

契約ハネムーン


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・テンプテーション
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 ■わたしの夫になってほしいの。一週間のあいだだけ……。

 ■「愛こそすべて――それがわが社のモットーです」結婚情報誌『ハッピー・ウェディング』では、社員はみな幸せな結婚生活を送っていなければならない。だから、リアンは離婚したことを秘密にしていた。机の上には結婚式の写真を飾って、幸せが今でも続いているふりをしていた。ところが、彼女が思いがけなくハネムーン部門の主任に抜擢されたことで、問題がもちあがた。ハネムーン候補地で実地調査をするのが主任の大事な仕事なのだ。一緒に出かけるのは、もちろんこの写真の夫ミッチというわけだ。仕事は絶対に失いたくない。リアンは仕方なく彼に頼むことにした。数年ぶりで会ったもと(、、)夫に、偽りのハネムーンの説明をする。ミッチはなんとか承知してくれたが、協力するかわりといっていくつかの要求を突きつけてきた。その条件とは……。

抄録

 リアンはまた肩ごしにふりむいて、やさしく笑いかけた。それを見ると、ミッチは全身がふわっとあたたかくなるのを感じた。「書いてあるわ。でも、どうせあなたは読まないでしょ? 用意ができたらもっていってあげるから、むこうですわって待ってて」
 ミッチはぶらぶらと居間にもどった。静かな音楽がほしいところだ。CDを一枚選んで、結婚後ふたりで買った高価なステレオ装置にセットした。スピーカーから軽快なジャズの響きが流れ、はじめてタウンハウスでいっしょに音楽を聴いた晩のことが脳裏によみがえった。バミューダへの一週間の新婚旅行から帰り、中華料理のテイクアウトを食べながら、マイルス・デービスのトランペットに仲よく耳を傾けたのだった。
 ふたりの結婚は満足のいくものだった――少なくとも、はじめのうちはそうだった。それとも、そう思っているのはぼくだけだろうか。五年のあいだ、いっしょにいる時間があまりにも少なかったために、彼女も自分と同じ感想をもっているかどうか、はっきりしたことはわからなかった。リアンはぼくを愛してくれたはずだ。そうでなかったら結婚などしなかっただろう。だが、いつのまにか愛は消えた。その責任が自分にあることを、ミッチは確信していた。
 彼にとって、結婚は、人生のなかで当然通るべきコースのひとつだった。まず大学、そしてロー・スクール、それから祖父のはじめた法律事務所で働き、やがて共同経営者となること。それが生まれたときからの定めだった。個人としての生活も計画どおりに進んだ。唯一の逸脱は、彼の母いわく、“乏しい資力”の家の娘と恋に落ちたこと。
 そして離婚。それは予想外の逸脱だった。家族は彼が早くリアンの後釜を見つけて――今度はもっとふさわしい家の女性を選んで――再婚し、三世が三十歳になる前にミッチェル・クーパー四世の顔を見せてほしいと願っていた。しかし、リアンのかわりになる女性はあらわれなかった。
 数分後、リアンが皿とフォークをもってキッチンからあらわれた。ミッチがソファにすわると、彼女はその前のコーヒーテーブルに皿を置いて、ぎこちなく腕組みをした。
「きみは食べないのかい?」彼女の視線をとらえようとして、ミッチは言った。
 リアンは首を左右に振って、張り出し窓のほうへ歩いていった。「おなかはすいてないから」取ってつけたように言った。
 やわらかな午後の日ざしを浴びて立っているリアンの姿を、ミッチは見つめた。ぼくはこの女性を知っているようで、何も知らないのかもしれない。五年間いっしょに暮らしたが、本当に心のうちを理解したことはなかった。こうして五年たってみると、見知らぬ他人のようにも思え、すべてを知りつくした恋人のようにも思える。
 ミッチはソファから腰をあげ、部屋を横切って窓辺へ歩いていった。彼女の肩に両手を置いて、自分のほうにむかせる。
 はじめは瞳をのぞいて、そこにあるものを読みとろうとしただけだった。だが、彼女に触れた瞬間、抗しきれない力にとらえられ、そっと顔を近づけて唇を寄せた。はじめは以前と同じ味かどうかたしかめようとしただけだった。だが、唇が重なった瞬間、自分をとめることができなくなった。唇の輪郭を舌がなぞり、やさしくまさぐる。彼女の唇が溶けたように開き、口づけは激しさを増した。
 やっとの思いで唇を離すと、リアンは目を大きく見開いていた。息をとめ、ごくりと唾を飲みこんで、夢から覚めようとするようにまばたきをした。「今のは……今のは何?」
 ミッチは彼女の肩から両手をすべらせて下ろし、片方の手で髪をかきあげた。いい質問だ。そう思ったが、答えはわからなかった。「なぜだかキスしたくなったんだ」不明瞭につぶやいた。「久しぶりだったから」
 リアンの瞳は、ミッチの左肩の先の一点に据えられている。「飲み物をもってくるわ」そう言うと、彼をまわりこむようにして、キッチンにむかって歩きはじめた。「何か飲むでしょ?」
 ひとりになると、ミッチはぼんやりともの思いにふけった。自分と同じように、彼女もさっきのキスにめまいがするほどの衝撃を受けただろうか。

 リアンはカウンターの端を握りしめ、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。まだ胸がどきどきしている。さっきのキスがくり返し頭に浮かび、そのたびに震えるような興奮が身を焦がす。
 下唇に手をのばして、指先でこすった。そうすれば、彼の唇から伝わってきた熱が消えていくかもしれない。結婚しているあいだ数えきれないほどキスをしたが、こんなふうに感じたことは一度もなかった。
 彼が以前とは別人のようになってしまったせいかもしれない。いつもきちんと整えられていた黒い髪は、今は襟につくほど長い。長い脚を包むジーンズは色褪せ、膝のところが薄くなっている。リアンの記憶のなかにあるミッチは、色の褪せたジーンズは決してはかず、Tシャツで人前にあらわれることはなかった。
 いつもオーソドックスなスーツとタイ、ボタンダウンのシャツに身を包み、彼の考える大胆な行為とは、せいぜい真っ赤な車に乗ることくらいだった。しかし、さっき彼女にキスした男は、はっとするほど危険なにおいを放っていた。
「ずっとキッチンに隠れてるつもりかい?」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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