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貴公子と無垢なメイド

貴公子と無垢なメイド


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 マージェリーは昼はレディ付きのメイドとして働き、夜は手作りのお菓子を娼館に持ち込み、女性たちのドレスと交換して生計をたてている。ある晩、彼女は館のホールで見知らぬ紳士とぶつかった。マージェリーの動揺を嘲笑うように、彼は突然彼女の唇を奪うと、悠然とその場を立ち去った。その紳士、ヘンリー・ウォードは蠱惑的な笑みをたたえ、それからもたびたびマージェリーの前に現れる。いったい彼は何者なの? 彼女の疑問はほどなくとけた。ヘンリーが驚愕の事実を告げたのだ。「きみは伯爵の孫娘だ。僕は迎えに来たんだ」

抄録

「わたしはレディ付きのメイドよ」マージェリーは口走った。
「だったら、名前を名乗りたくはないだろうな」男性は肩をすくめた。「心配はいらない。マダム・トングはあらゆる嗜好に応じてくれる。マリー・アントワネットを始め、メイドの格好をしたがるレディも多いからな」男性はにやっと笑った。「そのかごはなかなかいい思いつきだ」
「これは扮装じゃないの。わたしは本当にメイドなのよ」ぴしゃりと言ってやりたかったが、男性があまりに近くにいすぎて消え入るような声しか出なかった。
 相手は笑った。「すると、これで臨時収入を得ているのか。それはまた“立派”な心がけだ」
 もう! どうやらこの男性は、マージェリーがときどきここで働き、小遣いを稼いでいると思ったようだ。そういう例がないわけではなかった。現にマージェリーが知っているだけでも、けっこうな数のメイドがそうしている。床をごしごしこするより、そのほうがお金を稼げるからだ。オズボーン卿がお気に入りの売春宿を訪れ、自分の家のメイドに出くわしたという話は有名だ。だが、バークシャーからロンドンに出てくるときに祖母によくよく警告されたマージェリーは、そんな方法で副収入を得ようと考えたことは一度もなかった。
“ロンドンは悪徳の巣窟だからね”祖母は言った。“わたしの言うことをよく肝に銘じておくんだよ。これでも昔はロンドンにいたことがあるんだ。未来のだんな様のために、身持ちをよくしておくんだよ”
 マージェリーはべつに夫を見つけたいとは思わなかったが、身を持ち崩すなという祖母の教えはよく守っていた。それは彼女にとって大事なことだった。
 それに、彼女の純潔を奪おうとする男性はこれまでひとりもいなかった。グラント家で働いている双子の召使いは、あまりにきれいすぎて自分たちしか目に入らない。残りの召使いはみな若すぎるか年がいきすぎているかで、あまり魅力的ではなかった。彼らはただの友達で、その誰にも一度として胸がときめいたことはない。
 マージェリーを熱心に口説いてくる召使いもいることはいる。ハンフリーは隣家の庭師頭の次の位の庭師で、ときどき花を持ってきてはもごもごしゃべりながらキッチンを歩きまわり、マージェリーをじっと見つめる。そして、こちらが話しかけると赤くなる。彼女はハンフリーを見るたびに迷子の犬が頭に浮かび、なんだかかわいそうな、もどかしいような気持ちになるが、一度としていまみたいに体が震えたことも、膝の力が抜けたこともなかった。こんなふうに息が止まったことも、どきどきしたこともない。
 祖母は、ハンサムな紳士に関しても警告していた。世間知らずの娘の素朴さにつけこんで、ひどい仕打ちをする男たちがいると。祖母の言うとおり、ロンドンは太陽の下にあるあらゆる悪徳が栄えている街だ。そしてこの男性がそのうちの多くとなじみであることは疑う余地がなかった。この男性には、まぎれもなく邪悪なところがある。
「あなたの誤解よ」マージェリーは言った。無理やり押しだした声がかすれ、かん高くなった。「わたしはここで働いているわけでも、ここに快楽を求めに来たわけでも――」
「たしかかい?」
 この人は残念そうなの? マージェリーは唾をのみこんだ。
「せめてキスぐらいは――」彼の顔が危険なほど近づく。
「わたしは処女よ!」マージェリーはきしむような声をあげた。
 すると男性がにやっと笑った。「キスをしてもそれは変わらないさ」
 そのあとの永遠に続くほど長く思えた一瞬でマージェリーは男性の温かい体を感じ、耳のなかでどくどく打つ脈を感じた。自分がこの男性とキスしたがっていることに気づいて、ショックのあまり気が遠くなりそうだった。強い好奇心と、いつのまにか目覚めた官能が脈打っている。こんな気持ちになるなんて信じられない。こういうことはわたしとは無縁なはずよ。わたしは分別も良識もあるまっとうなメイドで、売春宿で顔を合わせた紳士とキスしたがるようなはすっぱな娘ではないわ。きっと、けばけばしいこの店の雰囲気にあてられたに違いない。しかも目の前にいるこの紳士は、誘惑を絵に描いたような……。
 男性の唇がかすめるように触れた。いや、いまのは現実ではなく、想像だったのかもしれない。だがそのすぐあとに、彼は甘く熱い唇でマージェリーのあえぎをのみこみ、驚かせた。これはマージェリーにとっては初めてのキスだった。キスがどんなものかときどき想像したことはあるが、まさかこういうものだったとは。このキスはとてもすべてを捉えられないほど多くの感覚をもたらした。マージェリーは力強い腕と熱い唇を感じ、生まれて初めて快感に身を震わせた。男性のキスは火花と炎を、燃えるような願いと叶えられない痛みをもたらした。
 温かい唇がとてもやさしくマージェリーの唇を割り、舌が触れあう。めくるめくような快感に体が溶けていくようだった。なぜ誰もがあれほどキスしたがるのか、これでようやくわかった。マージェリーはいつまでも続けたかった。体が柔らかくなり、男性の硬く強い体に溶ける。からっぽのみぞおちが、切ない焦がれにうずいた。彼女は危険な新しい世界で迷い、そのまま迷いつづけたかった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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