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プリンセスの憂鬱 カラメールの恋人たち II

プリンセスの憂鬱 カラメールの恋人たち II


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ロマンスカラメールの恋人たち
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ヴァレリー・パーヴ(Valerie Parv)
 本を書くときは、結婚して三十年近くになる漫画家の夫から着想を得ている。かつてオーストラリアのノーザン・テリトリーでバッファローやクロコダイルを狩っていた彼は、ヒーローそのものだという。執筆をしていないときは、ラジオやテレビで恋愛について話をしている。余暇にはドールハウスや料理を楽しむ。現在はキャンベラに住んでいる。

解説

 トーレスの王女ジゼル・ド・マリーニは不満だった。二百年も前に定められたメリサンド憲章のせいで、どんなに才覚があっても独身である限り、女性が城管理責任者の地位につくことは許されないからだ。でも地位のために好きでもない相手と結婚したくない。そう思っていたある日、城で開催された仮面舞踏会で、ジゼルは理想の男性と巡り合った。運命を感じた王女は彼の素性を探ろうとするが、謎を残したまま男性は舞踏会場から姿を消してしまう。しかし、再会は意外な形でやってきて……。

 ■美しい島国を舞台に、王族たちのきらびやかなロマンスを描いて人気のシリーズ『カラメールの恋人たち』二作目をお届けします。来月刊ではトーレスの継承者として残酷な掟に縛られたマキシム王子の切ない恋が語られます。

抄録

 ジゼルは立ちあがった。苦しいほどに胸が高鳴る。ブライスの目をきちんと見て話したい。だがすぐに、それはとても無理だと気づいた。でも、とにかく向き合わなければ。ジゼルはデスクを回って言った。「ご存じでしょうけれど、契約書というものがあるのよ」
「なんとでも勝手に言えばいい。王子もあなたもお気づきでないようだが、僕はまだ契約書にサインしていないんだ」
 私らしくない、こんな肝心なことを見落とすなんて。両手が震え出すのに気づき、ジゼルは手をぎゅっと握り合わせた。「それはあなたの落ち度だわ」落ち着き払って言いながらも、ジゼルは内心不安でたまらなかった。ブライスが去ったあと、また別の管理長を探さねばならないからではなかった。彼女の全身が彼を手放したくないと叫んでいる。
 ブライスがジゼルの視線をとらえた。彼の目の中に挑むような光と、別の何かが見える。ジゼルの心を映した、ひかれる気持ちだろうか。まさか、そんなはずはない。
「いや、あなたと兄上の落ち度だ」ブライスが訂正した。
「たとえ口頭でも、契約は契約だわ」
 ブライスがさらに近づいてきた。暴力を振るわれる不安はなく、ただ彼の腕に抱きしめられたらどんな感じかしらという、ときめきだけを感じる。
「聞いたことがあるでしょう、口頭のみの契約は書面によるものほどの価値はないと」うっとりするような低い声でブライスが言った。
 彼の声の響きが、ジゼルの頭から足の先まで駆け抜けた。「あなたは出ていかないわ」
「さあ、どうかな」
 この過熱した雰囲気をなんとか冷まそうと、ジゼルは別の角度から切り込んだ。「撮影スタッフが入るのがなぜそんなに問題なの?」
「そんな質問をするとは、鹿の飼育について何もご存じないようだ。妊娠中の牝鹿はできる限り気が立たないようにしてやらねばならない。動揺しただけで流産することもよくあるんだ。僕でさえ出入りをひかえているのに、あなたの恋人のスタッフ連中は、自分の行動がどんな被害を及ぼすか考えもせずにずかずか歩き回っている」
「彼は私の恋人じゃないわ」ジゼルはむきになって言った。ブライスにはそんなふうに思われたくない。
 ブライスはそっけなく言った。「なら、フィアンセか。そんなことは関係ない」
「いいえ、私にはあるわ。ロベールと私は、彼がアメリカにいる間に別れたの」
 ブライスの目が鋭く光ったのは気のせい? 彼と別れたことを当面は誰にも話すつもりはなかったのに。なぜブライスに話したくなったのだろう。
「あなたは罪の意識を感じているようだ。でも鹿園への自由な立ち入りを許したのはあなただ」
 なぜわかるの? 二人の距離はいっそう縮まり、気づくとブライスの大きな体がジゼルのすぐ前に立ちふさがっていた。ジゼルは息をのみ、精いっぱい威厳を込めた声で言った。「推測がすぎるわ」
 ブライスはもっと先まで推測するところだった。ジゼルを見たときから、この瞬間がやってくることはなぜかわかっていた。怒りに任せて彼女の体を揺さぶるかわりに、ブライスはさらに一歩ジゼルに近づき、試すように両手で彼女の腕をなでた。ジゼルは身を震わせたが、ボディガードを呼んでブライスをつまみ出し、地下牢に――そんなものがあればの話だが――閉じ込めることはしなかった。
 今日のジゼルは淡いピンクのシルクシャツに紺の短いタイトスカートといった事務的な服装で、スカートからストッキングに包まれた長い脚がのぞいている。細く高いヒールのある紺のパンプスをはいていても、ブライスの肩ぐらいまでの背丈しかない。シルクに包まれた腕にゆっくりと手をすべらせると、ブライスの胸が高鳴り出した。シャツのボタンは首のところまできちんととめてある。そのパールボタンを一つ一つ外し、陶器のような肌をあらわにしたい。そんな思いで指がうずく。
 ジゼルが乱れた息を吸い込んだ。ブライスも息を乱し、ジゼルと目を合わせたまま片手を彼女の鎖骨に沿って這わせ、シルクのような豊かな髪に触れた。指先に髪が絡みつく。まるでジゼル自身がブライスの頭をかき乱すように。
 ブライスは張りつめた声で言った。「あなたに関しては、推測するのが癖になっていてね」
 こんな経験は初めてだというようにジゼルが困惑の表情を見せ、どこかせっぱつまった口調で言った。「人と会う約束があるの」
 彼女の気持ちは手に取るようにわかる。「これだって人と会う約束のうちだ」
 ジゼルは頭をそらし、ほとんど目を閉じた。なんて長いまつげなんだ。一本の指で片方のまつげをそっとなでると、ジゼルが驚いたように目を開けた。その揺らめく深みに溺れてしまいそうだ。
 ほんの少し味わうだけ。そうしたらすぐ帰ろう。ブライスは自分にそう言い聞かせた。自分は誰かに従属するようなタイプの男ではない。契約書にサインしなかったのもそのせいかもしれない。喉の奥からうなり声が込みあげるのをブライスは感じた。
 うなるかわりにブライスはジゼルにキスをし、うなり声をあげたのと同じような気分を味わった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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