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クリスマスイブの懺悔

クリスマスイブの懺悔


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 明日はクリスマスイブ。そして4回目の結婚記念日。ベラはつらい思い出のつきまとうロンドンを離れ、妹と静かな休暇を過ごそうと、ウェールズのコテージに向かっていた。去年のイブ、ベラとジェイクの結婚生活は終わりを告げた。大富豪の実業家である夫は、仕事ばかりで妻を顧みないくせに、彼女が浮気していると誤解して家を出ていったのだ。ところがコテージに着くや妹が姿を消し、なんとジェイクが現れた。呆然とするベラに、彼も自分の妹から呼び出されたと言う。はめられた――! 雪が降り積もるなか、二人は無言で見つめ合った。今も胸にくすぶる憎しみと情熱を、互いに必死に隠しながら。

 ■クリスマス。ハーレクインの作家たちが腕によりをかけて書きあげたロマンスの贈り物を今年もお届けします。2009年に亡くなった人気作家D・ハミルトンが描いたのは、すれ違いを繰り返す夫婦がたどり着いた、4年目の愛の物語です。

抄録

 彼は斧とシャベルを納屋の中に片づけてコートを肩にかけ、薪を抱えて雪をかいて作った道を家に向けて戻り始めた。このまま雪が解けてくれればいいと思うが、どうやらその期待は甘いようだ。また空に雲がかかり、不吉にも広がり始めている。
 女性に手をかけたことはこれまでに一度もないが、今度ばかりは歯がかちかち鳴るほどベラの体を揺さぶってやりたいと思った。
 妹二人と結託して、こんな卑怯な芝居までして僕をここに呼びだすなんて最低だ。何が目的だったのか、なぜ正直に僕に話さないのだろう。相手が何を考えているかわからないことが、彼女がとった行動以上に彼をいらだたせた。
 朝食の準備はできておらず、コーヒーも冷たくなっていた。こんなことだろうと思いながら薪を置きに行った彼は、冷えきった暖炉の灰をにらんだ。
 二段おきに階段を上がって二階に行く間も濡れたズボンが脛にまつわりつき、ジェイクはさらに不機嫌になった。喧嘩をしないでこの幽閉された状況を生き延びようと思ったら、お互いに多少は我慢してできることをするべきじゃないか。
 五分もたたないうちに、ベラがコテージの中にいないことがわかった。玄関に急ぐと、ひそかに疑い始めていたことが当たっていた。
 深い雪の中に、外に向かう足跡がついている。彼女は本当に気がふれたのではないだろうか。
 彼はコートを着て外に出ると空を見上げ、コテージのドアをたたきつけるように閉めた。こんなまねをするのは僕の気を引きたいから。それだけなんだ。
 自分がどう思っているかははっきり宣言したはずだし、愚かしい芝居に付き合う気はないとも言ったはずだ。雪の中、外に出ていったら僕が仕方なく連れ戻しに来ると思ったんだな。そんなにまでして僕の気を引きたいのだろうか。
“予期しない”再会の場を選ぶにあたっては、できるだけ人里離れた、徒歩では容易に逃げだせないこのコテージは最適だっただろう。しかもこの雪ではどこにも行きようがない。
 僕がいいかげんな、良心のかけらも持ちあわせていない男だったら、傷ついたヒロインを演じてみても何も起こらないことに気づいた彼女が、這うようにして帰ってくるまで悠然と待っていただろう。
 僕は三十分かけて納屋までの雪をかき、薪を作った。背を向けたとたんにベラが出ていったとしても、まだそう遠くには行っていないはずだ。追いかけていってつかまえたら、引きずり戻して説教してやる。最低限何をするべきかを申し渡してやる。
 三十分後、彼は谷の向こうまで続く足跡をたどり、雪だまりを避けながら山肌を縫う道をベラを追っていた。あいにく降り始めた雪が吹雪に変わった。
 粉雪が目の前を舞って視界をさえぎり、ベラの足跡を消していく。このままあと十分も雪が降れば、足跡は完全に消えてしまいそうだった。今見つけられなければ、そのチャンスは失われる。
 ジェイクの心臓は不安にとどろいた。天気を呪って彼は足を速める。背は高いが細い体のベラは、こんな悪天候に耐えられないかもしれない。
 華奢で繊細な女性らしいベラの体つきを思いだし、彼は自分を励まして先を急いだ。息が切れてきたのは、疲れよりも不安がつのったせいだった。
 彼女に何かあったら、僕は一生自分を許せない。
 前方の視界をさえぎっている雲を思わせる雪の中に人影が見えた。転んだのだろう。なんとか膝をついて立とうとしているが、立てないようだ。ほっとするあまり、ジェイクはそれまでひた隠しにしていた感情に、直面しないわけにはいかなくなった。あんなふうにどうしようもないベラだが、僕はまだ彼女のことを心にかけている。彼女を失ったら僕も生きる支えを失うだろう。僕の未来はないに等しい。
 必死でベラのところに行くのに二分ほどかかった。彼はもがいているベラを立たせ、細い体が傷つかないように気を遣いながら力をこめて抱きよせた。
「ジェイク……」
 細い声は風にかき消され、ほとんど聞こえなかったが、ジェイクの耳に、そして心の奥に届き、彼の心の一番傷つきやすい部分に触れた。そこがひどく痛むのがわかった。
「何も話すな」ジェイクは胸がよじれそうな気持ちで、両手でベラの肩をつかんで体を支え、顔をのぞきこんだ。
 疲労のせいで白い肌はほとんど透明に見え、唇は寒さで青かったが、ベラの瞳は澄んだ泉のように輝いていた。ジェイクはその中で溺れてしまうようだった。ベラが発する言葉で、二人を隔てていた壁が崩れていった。
「ごめんなさい、ジェイク。ばかなことをして……ほんとにばかだった……」力を振り絞って言葉を口にしているような、か細い、やっと聞こえるような声だった。「ばかなことを……して」
「話すなと言っただろう」ジェイクは喉が詰まるような気がして低く答えると、親指の腹で頬骨を覆っている薄い肌をなでた。ベラの顔を両手ではさみ、顔を近づけて唇を重ね、自分のぬくもりが伝わるようにゆっくりと、優しく唇を動かした。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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