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和書>小説・ノンフィクションハーレクインクリスマス・ロマンス・ベリーベスト

サンタクロースにキスを

サンタクロースにキスを


発行: ハーレクイン
シリーズ: クリスマス・ロマンス・ベリーベスト
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルーシー・ゴードン(Lucy Gordon)
 雑誌記者として書くことを学び、ウォーレン・ベイティやリチャード・チェンバレン、ロジャー・ムーア、アレック・ギネス、ジョン・ギールグッドなど、世界の著名な男性たちにインタビューした経験を持つ。また、アフリカで野生のライオンがいるそばでキャンプをするなど、多くの貴重な体験をし、作品にもその体験が生かされている。ヴェネチアでの休暇中、街で出会った地元の男性と結婚。会って二日で婚約し、結婚して二十五年になる。二人は三匹の犬とともにイングランド中部に暮らしている。

解説

 クリスマスが近づいたある日、村一番の屋敷に新しい主がやってきたと聞き、獣医のドーンは喜んだ。これで、恵まれない子供たちのためのパーティーが今年も屋敷で開けるわ。ところが、新しい主は願いをはねつけたらしい。あきらめきれず、屋敷に乗り込んだドーンがそこで見たのは、かつて愛を捧げた彼女を冷酷に捨てた、富豪の姿だった。

抄録

「もう少し話をしてはいけない? 知っておきたいことがたくさんあるの」
「これ以上、なにを知りたいんだ? ぼくたちは愛し合った。だが、人生はぼくたちの思うようにいかなかった。誰のせいでもない。ただ、そうなってしまったんだ。そして、すべて終わったことだ」
「終わった……」ドーンはその言葉の響きを確かめるかのように、そっとつぶやいた。「いいえ、ベン。それは違うわ。わたしたち二人が生きているかぎり、決して終わらない。あなたがわたしの手紙をとっておくかぎり決して終わらないのよ。そして、わたしが……」ドーンは突然、胸に耐えられないほどの痛みを覚え、思わず自分の胸を抱きしめた。
 ベンは、悲しみと喜びの二つの相反する感情に引き裂かれたまま、ドーンの顔をじっと見つめた。きょうの午後彼女に会ってからずっと、胸がずきずきと痛んでいた。だが、努めて気にかけまいとしていたのだ。けれど今、ベンはその胸の痛みに圧倒されていた。再び彼女とともにいられる喜びと苦悩との狭間でもがきながら、彼は手を伸ばし、ドーンのほうに一歩踏み出した。だが、テーブルが道をふさいでいることに気づかなかった。彼はつまずき、バランスを失って両腕を広げた。ドーンの手がしっかりと彼を支える。気がつくと、ベンは自分から彼女にしがみついていた。そんな自分に、ベンは内心で舌打ちした。ドーンは彼をソファに座らせると、その隣に腰を下ろした。
「わかっただろ?」ベンはうんざりしたように言った。
「誰だってテーブルにつまずくことはあるわ」ドーンは必死に反論した。
「ぼくは年じゅう、つまずいているんだよ」ベンの苦々しげな口調が、ドーンの胸をつく。「そしてそのたびに、ひと苦労しなければ立ち上がれない。おまけに、杖を使わなければ歩けないし遠出もできない。一日の終わりには体じゅうがずきずき痛むし、始終、耐えられないほどの頭痛がする。それだけじゃない。鬱状態のときのことは、話す気にさえなれないね。なにもかも嫌になって、すっかり落ち込んでしまうんだ。それは、なんの前触れもなく訪れ、何日間も続く。そしてもがき苦しみながら、やっと鬱状態から抜け出したときは、抜け殻のようになっているんだ。誰とも、一緒には住めないよ。同情されるのは耐えられない。哀れみも嫌だ。それに、愛されることにさえ耐えられるかどうか。わかったかい、ドーン? きみをぼくの看護師にしたくないんだ」
 最後の言葉を苦悩に満ちた声で叫ぶと、ベンは頭をかかえ込んだ。彼は激しく身を震わせている。ストレスに耐えきれなくなった動物が、ちょうど今の彼のように身を震わせる姿をドーンは何度か見たことがある。ドーンの保護本能が、強烈に反応した。そしていつものように、その指示には逆らえなかった。自分でなにをしているか考えもせずに、彼女は両手をベンの肩に回した。なだめるように抱きしめると、ベンの頭に頬を寄せ優しく背中を愛撫する。
「わたしの大事な人。わたしはここにいるわ」ドーンはささやいた。
 ふいにベンの手が伸び、ドーンの手をきつく握りしめた。彼女は痛みにたじろぎ声をあげそうになったが、なんとかこらえ、彼をしっかりと抱きしめ、優しく揺すった。八年前も、こうしてベンを慰めてあげたかったのに。ドーンの目にとめどなく涙があふれた。彼はわたしを退け、独りで闘うことを選んだのよ。でも、闘いは彼を打ちのめした。今、そのことは否定できないはず。
 ついに、ベンが体を動かした。自分がなにをしているか気づいたらしい。ドーンは、彼が体をこわばらせ、わずかに身を引くのを感じた。その動作が、ドーンにベンの言葉を思い出させた。“きみをぼくの看護師にしたくない”
「もう、大丈夫だ」ベンの声は硬かった。「ありがとう……もう助けはいらない。ドーン……」
 最後の言葉はささやきに近かった。その言葉が終わるか終わらないうちに、ドーンは両手で彼の頬をはさみ、唇を重ねていた。今まで彼女がベンにしたキスのなかでも、いちばん優しいキス。そのキスは、押しつけがましさも、情熱もなかった。まるで、ベンが怪我の手当てをする前になだめなければならない手負いの動物ででもあるかのように。唇を離したとき、ドーンは自分の涙で彼の頬が濡れていることに気づいた。
 ベンはやっと口を開いた。「試練で磨かれるというのは物語の中の話だよ。ぼくはだめだった。ただ、性格のねじ曲がった男になっただけだ。あんな仕打ちをしたというのに優しくしてくれて、感謝しているよ」
 ドーンはやっとの思いでほほ笑んだ。「わたしはいつもあなたの親友だったし、今でもそれは変わらないわ。これからもね」
「ありがとう」ベンはため息をついた。「だが、もう行ったほうがいいと思うよ」
 期待どおりの結果を得られず、ドーンはがっかりした。どうやら、彼に言われたとおり、退散するしかなさそうだ。ドーンが入ってきたフレンチドアへ向かおうとすると、ベンが声をかけた。「そっちはだめだ。玄関に案内しよう。ぼくにだって、まだそれくらいの礼儀は残っている」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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