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この歌をあなたに

この歌をあなたに


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・スティーヴンス(Lynsey Stevens)
 オーストラリアの作家。ブリスベーン生まれ。図書館に勤務するかたわら書いていたが、作家になると心に決めたのは少女のころだという。趣味は読書、刺繍。系図学にも興味を持っている。

解説

 ■私たち、愛し合っていたのに。特別な歌を作ったあの夜は……。

 ■四年前、最愛の人ジャロッドに裏切られたつらさを乗り越え、ジョージアは書店勤めのかたわら、ビジネスの勉強に励んでいる。頼りないミュージシャンの兄と問題児の妹の世話を焼きながら、秩序正しく過ぎていく毎日を送っていた。ところがある日、父親の病気のためにジャロッドが戻ってきた。彼は兄の親友で隣に住んでいる。会わないわけにはいかない。もう過去のこと。二度と彼には傷つけられない。そう決めたジョージアだが、ジャロッドの言葉に心が揺れる。まるで何もなかったように友達でいよう、だなんて……。そんなとき、彼女は代役として兄のバンドで歌うことになる。以前愛する人に向けて歌っていたように。でも、あの曲だけは歌えない――特別な夜の歌は……。

抄録

 そして妻にして母、まったくロマンチストのおばかさんだったわよね。さあ、ジョージア、口に出して言ってやりなさい! あの冷静でよそよそしいジャロッドがどう反応するか拝見しましょうよ。
「詩人、作詞作曲家、そして妻にして母?」
 なんとも形容しがたいような表情がつかの間ジャロッドの顔に浮かんだ。
「わたしは昔からロマンチストだったものね?」
 ジョージアに殴られでもしたように、ジャロッドはかすかにたじろいだ。顔が青ざめ、目の色は暗い。
 痛いところを突かれたんだわ、とジョージアは心のどこかで快哉を叫んだ。それに、こんな反応が返ってくるということは、ジャロッドも多少は気にかけて、後悔している証拠かもしれないわ。
 なのに、なぜわたしが罪悪感を持つの? 相手の心を粉々に打ち砕いて知らん顔しているのはわたしじゃない、ジャロッドのほうよ。今さら仲直りの握手をして、何もなかったかのように、ただの友達みたいにおしゃべりするなんて無理だわ。
 じゃあなぜ心が痛むの、ジョージア?
「本当言うと、きみはもう結婚してるかな、と思ってたんだ」ジャロッドが穏やかな声で言った。「子供が二人ほどいて落ち着いてるんじゃないかと」
 ジョージアの心の奥底で、生きるのさえつらかったあのころの思い出が騒ぎだした。ありありと表れている悲しみの色を見られないよう、ジョージアはわずかに顔をそむけた。
「そうなの? なぜ?」気持ちが静まると、ジョージアはジャロッドのほうを向いて尋ねた。
 ジャロッドは肩をすくめた。「なぜって、きみは魅力的だから。男たちがほうっておくはずがない」そこでひと息置く。「誰か決まった相手がいるの?」
「そうねえ、ひとりか二人は」嘘よ! ほかの男性など見向きもしなかったくせに。
「アンディか?」ジャロッドはビールの空き缶を指でいじくり回す。
「アンディはいいお友達よ」
「じゃ、彼を愛しているわけじゃないんだね?」
「愛?」ジョージアはことさらにしかめ面をしてみせた。「愛なんて……この話にはまったく関係ないと思うけど」
 ジャロッドはこちらを見ようとしないが、顎がこわばり、唇のあたりがぴくぴくと震えている。
 ジョージアは何かに突き動かされるように言った。「わたし、いろんな人とつきあうほうが性に合っているのかもしれないわね」
 その言葉にジャロッドは振り向き、ジョージアは挑むようにその目をとらえた。
「いや、それは違うよ、ジョージア」
 ジョージアはとがった笑い声をあげた。「なぜ?わたしだってもう子供じゃないのよ」
「それはそうだ」
「正直に言うわ。実は、恋人を作る気になれないの。一度試してはみたけれど、どうもだめみたい」
「ジョージア……」
 ジョージアは努めてさりげなく笑った。「愛はいらない。じゃセックスは? それはまた別の話ね。この二つを一緒にしないこと、これがわたしの学んだ最も大切な教訓よ。そう思わない?」
「ぼくにどう答えてほしいんだ、ジョージア?」目を合わせないまま、ジャロッドが無表情できいた。
「別に何も」ジョージアは肩をすくめる。自分でもこの会話にはうんざりしていながら、なぜかやめられない。「でも、男にとっていいものは女にとっても同じよ。医学の発達のおかげで、今では男だけじゃなく、女だって好きなときに好きな相手とセックスできるんだから」
 ジャロッドは、指が食い込むほど強くジョージアの両腕をつかみ、高ぶった自分の体にぐいと引き寄せた。そこにみなぎる興奮を感じ取り、いやになるほど自然にジョージアの体が反応してしまう。
 ジャロッドの唇がジョージアの唇に押しつけられた。それは、昔の優しい愛撫とは似ても似つかないキスだった。ジャロッドの舌が荒々しく入ってくる。ジョージアの体が、気持ちを裏切ってジャロッドのたくましい体にぴたりと寄り添う。
 わずかに残った理性がやめなさいと叫んでいるが、もうどうでもいいと思った。長かったわ。四年もの長い間、わたしはこの瞬間を待ちわびていた。ずっと眠っていた部分が目覚めのときを待っていたんだわ。
 どれくらい時間がたったのか、ようやく二人は唇を離してあえいだ。雷鳴のように激しい鼓動が耳に響く。燃えるような目と目が合った。ジョージアが乾いた唇をなめると、ジャロッドの太ももの筋肉にぐっと力が入った。
 二人ともしばらくそのまま動かずにいたが、やがてジャロッドが超人的な努力で自制心を取り戻し、ジョージアの腕を痛いほどつかんでいた指の力を不意にゆるめ、手を離した。
「すまない。こんなことをするつもりはなかったのに、痛かっただろう」
 ジョージアは腕をさすった。腕の痛みはやがて薄れていくけれど、ジャロッドに呼び覚まされた別のもっと強烈な感覚は、なかなか消えそうになかった。
「なんだかこのごろすぐ気が立ってしまうんだ、ピーターのことがあって……」ジャロッドは言葉を切り、腰を下ろした。「でもあんなことをするべきじゃなかった。きみにキスするなんて」
「そうよ。あなたも――」ジョージアは咳払いをしてジャロッドから顔をそむけた。「わたしもね」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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