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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

プリンスと水の精

プリンスと水の精


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ロビン・ドナルド(Robyn Donald)
 ニュージーランド北部の牧場主の家に、一男五女の長女として生まれた。十五歳で師範学校に学び、十九歳で結婚、同時に小学校の教師となる。子育てを終えて一時休んでいた教職に戻り、かたわら執筆を始めた。蘭の花が咲き、キウイやオレンジの実る美しい北部の村に住む。

解説

 ■鷹のように鋭く光る水色の瞳。プリンスのように誇り高きあなたは、誰?

 ■いるかの研究を専門とする海洋生物学者アイアンシーは、仕事中に鮫に襲われ、脚に大怪我をしてしまった。そのとき以来、彼女は水恐怖症に陥り、水辺に近づくだけでパニックに襲われるようになる。失意の彼女は、親友の勧めでニュージーランドのはずれにある湖畔のバンガローで静養することにした。ところがある日、知らずに私有地に入り込んだため、土地の持ち主のもとへ連れていかれ、申し開きをするはめになった。その人の名はアレックス。威厳に満ちた様子と貴族的な雰囲気が脚と心に傷を負うアイアンシーの胸を揺さぶる。アレックスもまた彼女に惹かれながらも、自分に言い聞かせるのだった。今は女性にうつつを抜かすときではない。僕はある大切な任務を負う身なのだから……。

抄録

 アレックスはすぐに追いつくと、暴れるアイアンシーが落ち着くまでしっかりと抱き締めた。やがて彼女のパニックもおさまり、残ったのは恥ずかしさだった。
「大丈夫だ」彼は穏やかに言った。「もう心配ないんだよ、アイアンシー」
「わかってるわ」アイアンシーはアレックスから体を離そうと努めた。このままでいたら、力強い胸にすがってしまいそう。でも、彼はするべきことをしただけなのよ。彼女は高鳴る胸に言い聞かせた。
 アレックスはふいに彼女に後ろを向かせた。誰も見ていなかったと知って、きまり悪さが少しだけ薄らぐ。しかし振り返ったとき、彼女をさいなみ続ける謎に満ちた目に出合った。
 アイアンシーはつぶやいた。「哀れまないで」
 冷たい目の奥に、どこか残酷な光が宿った。「哀れむ?」アレックスは無理やり作ったような笑みを浮かべた。「とんでもない。哀れんでなどいないよ、アイアンシー」彼は指先を彼女の腕に食い込ませながら、その手を自分の腕にからませた。「さあ、とにかく日陰に入ろう。このあたりにはどんな鳥たちが棲息しているのかな?」
「|こちどり《````》が砂の中に巣を作るわ。それに春や秋には、たくさんの渡り鳥が羽を休めに来るの」アイアンシーはまだ放心状態で答えたが、それでもバンガローに着くころには、あの恐ろしいパニックも頭の片隅にかすかに残るだけになった。「外に座っていたいわ」彼女は言った。
 アレックスは、彼女が古びた椅子に座るのを待って、自分は手すりにもたれたまま見下ろした。そして前触れもなくたずねた。「水をあれほど怖がっているのに、なぜ水ぎわから二十五メートルも離れていないこの場所にいるんだい?」
「水に慣れるためよ」説明する必要があるのはわかっていたが、蚊の鳴くような声しか出なかった。
「鮫に襲われてから、水が怖くなったんだね?」
「いいえ」声がかすれている。「怖いのは水じゃないの。歯よ。よく、いるかと泳ぐ夢を見るわ。するとそのいるかが急に歯をむき出して、私を海の底に引きずり込むの。今度こそだめだって思って……」
「アイアンシー」アレックスは低い声で呼びかけると彼女の横に腰かけ、震える手を、力強く温かい手の中に包み込んだ。
 体の中で何かがはじける。アイアンシーはあわててつぶやいた。「水は平気よ。お風呂にも入れるし、歯も磨けるし、橋の上だって。浜辺を歩くのも、問題はないの。それなのに……」
「君はここへその恐怖を克服しに来たんだね?」
 コバルト色の湖に目を凝らして、彼女は答えた。「私はここで泳ぎを覚えたの。トリシアと私はいつもここで水遊びをしていて、彼女のお母さんに正式な泳ぎ方を教えてもらったわ。でも、最初の夏は壁を越えては行かせてもらえなかった。真っ青な水がすぐ目の前で手招きをしているのに、そこには行かれない。わかるでしょう、この気持ち?」
「壁?」
「湖底はとても深いの。その深さと水の透明度と砂の白さのせいで、浅瀬の向こうに青い壁があるように見えるのよ」アイアンシーは目をそらしたまま、握られた手をそっと引っ込めた。「あの壁を越えたときは、バリアがなくなったようなとても自由な感じがしたわ。まるで異次元に迷い込んだみたいな」
「君ならなんでもできそうだ」彼は淡々と言った。「ただ、今はショックから立ち直れないだけで。精神的外傷を経験した人間にはよくある反応だよ」
 急に怒りが込み上げてきて、アイアンシーは激しい口調で言い返した。「でも、水に足をつけることさえできないのよ! ここなら、危険はないと思ってやってきたのに」
「自分にもっと時間を与えてやるんだ。そうすれば、大丈夫さ」アレックスは立ち上がると、手すりに寄りかかって湖を見つめた。
「でも、私のあのパニックぶりを見たでしょう?」
「君はあまりにも性急に、しかも多くを求めすぎている。カウンセリングは受けた?」
 アイアンシーは首を振った。「トリシアに話しただけ。それにあなたと」
「なぜ?」
 アイアンシーは膝の上で両手を握り締めた。斜めに差し込んだ光線が、青白い肌をいっそう強調している。ゆっくりと彼女は言った。「なぜって、自分がまともに思えなくて。実際、まともじゃないわ。でもここに来るまでは、後遺症がこれほどひどいとは気がつかなかったの。プールで泳ぐこともできたし、水への恐怖もそのうち治ると思っていたの」
 アレックスは振り向いて彼女を見た。浅黒い顔に、目だけが薄い輝きを放っている。「君はひとりでいるべきじゃないんだ。ご家族は?」
 彼の凛とした声に、再び耳慣れない外国なまりが混じっていた。「母は死んだわ。父は、新しい奥さんと家族に夢中。それに、父がいたからってどうなるわけでもないし」彼女は目を上げ、かろうじてほほ笑んだ。「でも今日は、ずいぶん収穫があったわ。ほんの瞬間だけど、水の中に足をつけても、ひどいヒステリーは起こさなかったから」
「それにしても大変だろう」彼はきっぱり言った。「君には助けが必要だ。ほかには誰かいないのかい? そのトリシアとかいう友人は?」
「彼女は結婚して、小さな子がふたりもいるわ」アイアンシーは、手で口を覆ってあくびをかみ殺した。「ごめんなさい。なんだか疲れてしまって」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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