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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

御曹子の秘密

御曹子の秘密


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・マーシュ(Nicola Marsh)
 少女時代、大事件を追って世界を駆けめぐるジャーナリストになりたいと思っていた。その後、運よく世界を旅する機会はあったが、ものを書くという夢はずっと胸に秘めたままだった。あるとき、長身で黒髪のハンサムな彼女自身のヒーローに出会い、ロマンスのすばらしさに目覚めたことがきっかけとなり、小説を書きはじめた。現在は夫とメルボルンの郊外に在住。執筆以外の時間は理学療法士として働き、体の不自由な人々の社会復帰を支援している。友人や家族と食事やワインを楽しむのが好きで、映画にもよく行くが、暖炉の前にまるくなってお気に入りの本を読むのがなによりも好きだという。

解説

 スティーヴは魅入られたように琥珀色の瞳を見つめた。いつも冷静で、金儲けにしか興味のないぼくが、つぶれかけた遊園地で働く女性に惹かれるなんて。いったいどうした? 得意の駆け引きで、買収の仕事に専念しろ。一方アンバーは、固い決意で彼の目を見返した。父の愛するこの〈カーニバル〉を売り渡すわけにはいかない。こんな傲慢な男性が相手なら、なおさらだわ。だけど、まるで雷に打たれたみたいに体が震えるのはなぜ? 動揺している場合じゃない。どんな手を使っても彼を追い返すのよ。かくして二人は、激しい火花を散らしてにらみ合った。

抄録

「行きましょう」アンバーはむきを変えると、車のほうへと歩き出した。残されたスティーヴは、はっきりと形になった欲望からなんとか気をそらさなければならなかった。
〈カーニバル〉まで戻る間、アンバーはあてつけがましく助手席の窓から外を見つめて、ひとことも口をきかなかった。それを盗み見ながら彼は考えた。この不思議な女のどこにこれほど惹かれるのだろう。好みのタイプは長身でクールなブルネットで、気性の荒い毒舌のブロンドではない。
 それにしてもアンバーが経営学の学位を持っているとは驚きだが、趣味や好みに関しては、見た目どおり型にはまらずエキゾチックで魅惑的だ。
 アンバーには興味をそそられる。彼女の父親との取り引きは、どれくらい引き延ばせるだろう。できればせめて、このたぐいまれな女に隠されたお楽しみをほんの少し味わえるくらいは続いてほしい。
 彼が〈カーニバル〉の前に車を止めてエンジンを切ると、ほとんど同時にアンバーは車を降りた。
「おい、ちょっと待てよ」あとを追うスティーヴの歩幅は大きく、ハイヒールの彼女とは勝負にならない。観覧車の前で追いついた。
「おやすみなさい。明日の朝またお会いしましょう」そのとき、視線をそらしたアンバーの顔ににこやかな笑みが浮かんだ。「もうそろそろおしまいかしら、スタン?」
 こんな笑顔を自分にむけてほしいと思いながら彼が振り返ると、しわだらけの老人が、くたびれた古くさい帽子を持ち上げている。「こんばんは、お嬢さん。ええ、ぼちぼちそんな時間ですな」
 スティーヴは彼女のほうをむき、紹介してもらおうと眉を片方上げてみせた。アンバーもそれに気づいた。「スタン、紹介するわ。スティーヴ・ロックウェルよ」
 スタンは手を差し出した。「よろしく。このお嬢さんの彼氏なら、わしにとっても友達だ」
 スティーヴは笑いをかみころしながら老人と握手した。アンバーの顔はあえて見なかった。
「あら、彼氏じゃないわ、スタン。この人はただ――」彼女は言葉をのみ込んだ。そのわけは、スティーヴにもわかった。〈カーニバル〉が危ないときに、弁護士が嗅ぎまわっていることを従業員には知られたくないだろう。
 彼はすばやく言葉をはさんだ。「幼なじみですよ」アンバーの感謝のまなざしを見て、彼はつかの間のチャンスをとことん利用することにした。「いやあ、こういうのには一度も乗ったことがないな」
 彼女は眉をひそめたが、スタンはすぐに気をきかせた。「それじゃあ、ぜひとも乗ってみなくちゃ。てっぺんまで行って風に揺られながら愛しい彼女の手を握り締めれば、これ以上の極楽はないですよ」スタンはゴンドラのドアを開けながらウインクした。
 スティーヴが手をつかんで引き寄せると、アンバーは不満そうに鼻を鳴らした。「ほら、いいじゃないか、愛しい彼女。きっと楽しいよ」
「そうね。大笑いできそうだわ」彼女は手を引っ込めたものの、彼に続いてゴンドラに乗り込んだ。
 観覧車に乗ったことがないというのは、嘘ではない。こんなに快適だと知っていれば、今までに付き合った女たちとも乗りに行ったのだが。
 腿にアンバーの腿が密着し、独特の香りに包まれていると、これに乗ろうと思いついたのは、久々の快挙だという気がした。
「スタンに本当のことを言ってもよかったのに」
「それであの人を傷つけてもよかったっていうのかい? そんなひどいことはできないよ」
 アンバーが彼から離れようとすると、ゴンドラが揺れた。「わたしが男の人を連れてるところなんて、スタンは初めて見たのよ」
 彼女の肩にそっと腕をまわすと、意外なことに、払いのけられはしなかった。「きみなら、足元にひざまずく男なんかいくらでもいるだろう。どうしてだれも連れてこないんだい?」
「連れてくるほどの人はいないわ」
 ほかの男と一緒にいるアンバーを思い浮かべたとたん、嫉妬で胸に鋭い痛みが走った。知り合ってからまだ二十四時間もたっていないというのに、おかしなことだ。彼は調子に乗って続けた。「前にだれかとこれに乗ったことはあるのかい?」
 彼女がこちらをむくと、胸が高鳴り出した。こと女に関しては、間違いなく自分を制御できるはずなのに、今度ばかりはまったく手に負えない。
「あなたが初めてよ」その甘美な言葉が風に吹きとばされるのと同時に、観覧車は速度を落とし、二人をいちばん高いところに残して止まった。
 アンバーのように魅力的な女からキスを請うように見つめられては、夜景を楽しむ余裕もない。
「新しい体験は好きだろう?」ささやきながら、羽根のように軽いキスをする。
 かすかなため息とともにアンバーの口が開いた。彼はその下唇をそっとついばんでから舌を差し入れて誘った。アンバーは期待を裏切らず、二人の舌がからみ合うと、彼の激情は新たな高みへと駆り立てられた。彼女がキスにこたえた瞬間、分別などすべて消えうせてしまった。こんなことをしてはいけない。この女は取り引き相手の娘なのだ。厄介なことになるのは目に見えている。だが彼女がそっとうめき声をもらすと、もう彼の頭は、甘美な唇を味わう喜びでいっぱいになった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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