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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ロマンス

なりすました恋人 愛を誓う日

なりすました恋人 愛を誓う日


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ロマンス愛を誓う日
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 リズ・アイアランド(Liz Ireland)
 作家になる前に、女優から編集者まで幅広いキャリアを経験した。ブルックリン、オースティンと移り住んだが、結婚してオレゴンに落ち着いた。動物が大好きで現在は二匹の犬と二匹の猫を飼っている。

解説

 ミッツィは親友ケイの花嫁付添人を引き受けた。ケイがうらやましい。私はといえば、この三年で三人の男性に逃げられてしまった。それも、ただ結婚を切りだしただけで。ミッツィを心配したケイが、新郎の付添人グラントを紹介してきた。まるで、ギリシア神話のアドニス像ね。完璧でセクシーな彼の容姿に惹かれたミッツィだが、しだいに彼の傲慢な態度や侮辱的な言葉にうんざりし始めた。「物欲しげな君に必要なのは、火遊びだな」言葉が終わる前にミッツィのパンチがグラントの顎をとらえた。

 ■もしも恋人が双子で、デートのたびに入れ替わっていたとしたら……そんな一風変わった設定のロマンスを描くのは、リズ・アイアランド。笑いのあとに思わずほろりとさせられる作品です。

抄録

 ミッツィはグラントが想像していた女性とは大違いだった。理知的な雰囲気はあの瞳、それとも、唇の端をかすかに上げた落ちついた微笑のせいだろうか。ふっくらとした、いい唇だ。思わずキスをしたくなるような。
 離婚をしてから――いや、それ以前からずっと――グラントは仕事や店の生き残りといった目の前の問題に追われ、女性に対するその種の衝動には目をつぶってきた。性的欲求を体の奥深くに封じこめていた。だが今、長い間眠っていた感情が一気に噴きだし、体中の神経が目覚め始めた。その目にはミッツィしか映っていない。
 おかげで、あれほどいやだった結婚式が少しも苦ではなくなった。会社に関する心配事もすっかり忘れ、新たに生まれた悩みで頭の中はいっぱいだった。浅はかなテッドがミッツィに何をしたのか知らないが、どうしたらその埋めあわせができるだろう。
 むろん、責任はこのぼくにもある。“かかれ、タイガー”そうテッドをけしかけたのは自分だ。だが、本気であんなことを言ったわけじゃない。
 グラントはもう少しで花嫁の結婚指輪をポケットから取りだすタイミングをあやまるところだったが、間一髪で間にあった。そのとき、彼の心臓がふいに激しく鳴りだした。花婿付添人に与えられた次の役目は、花嫁付添人をエスコートすることだと気がついたからだ。
 メンデルスゾーンの≪結婚行進曲≫が流れる中、いそいそと肘をつきだすグラントの隣へミッツィが歩み寄ってくる。グラントは彼女と並んで歩きだした。その足取りは、夫婦となってから二度目のキスを待ちかねたケイとマーティに劣らず速かった。
 六月の朝の日光の下で、グラントは新鮮な空気を思いきり胸に吸いこんだ。それから、ミッツィの緑色の瞳をのぞきこんだ。テッドはなぜ警告してくれなかったのだろう? この瞳がどんなに鋭いパンチよりも強烈な威力を持っていると。
 しかも今、その瞳は彼を鋭くつき刺している。だがグラントは、鋭いそのまなざしは腕にまわされた彼女の手を彼がきつく握りすぎたせいだろうと思っていた。
 グラントは彼女に微笑を向けた。「今朝は、まさか百メートルも全力疾走する羽目になるとは思ってもいなかったよ。スニーカーを履いてくればよかったな」
「そのソックスには、そのほうがお似合いだったわね」ピンク色のミッツィの唇がぎゅっと一文字に結ばれた。「放していただけないかしら?」そう言って彼女は手を引っ張った。
 低くかすれた声がたまらなくセクシーだ。テッドはこの声のこともなぜ警告してくれなかったのだろう?
 にやけた顔でぼんやりつっ立っているグラントに、ミッツィが咳払いで注意をうながした。「悪いけど、ごらんのようにわたしは今、片手が不自由なの」彼女はそう言って包帯を巻いた手を上げてみせた。
 グラントの顔からすっと笑みが消えた。「すまない」彼はミッツィの手を放した。「誰かにちゃんと手当てをしてもらったかな。そうでなかったら、ぼくがキスでその傷を癒してあげたいところだ」
 ミッツィは思わず顔を上げ、グラント・ホワイティングを見つめた。目が合った瞬間、まるで世界最強の絶叫マシンに乗ったときのように心臓がぎゅっと締めつけられた。なんてセクシーな人なの! しかも、昨日とはまるで違った意味で。
 いったいどこが違うのかしら?
 二人はしばらく無言でその場に立ちつくしていた。グラントは微笑を浮かべている。今日の彼は何かが違う。どこがどう違うのかはわからないけれど。
「きみはいつも結婚式で泣くのかい?」グラントが尋ねた。
 ミッツィはぐっと顎をそびやかした。またわたしを侮辱するつもりね。たとえば“あれは負け惜しみの涙かい?”とか、“いつも花嫁の付添役ばかりで花嫁になれないことへの悔し涙かい?”とか。
 だがグラントの口から予想していた罵倒の言葉はついに出なかった。彼はただひたすら――彼女の勘違いでなければ――穏やかな微笑を浮かべたまま彼女の返事を待っている。いったいどういうことなの? まるでジキル博士とハイド氏だわ。
「わたしの勘違いかしら。それともあなた、昨夜のことを何も覚えていないの?」
 グラントは小首を傾げ、不安そうな目をミッツィに投げかけた。「昨夜のこと? ええと……その……あまりよく覚えていないんだ」
 からかっているのね。女嫌いの本性を隠して、わたしが気をゆるめる隙をうかがっているんだわ。昨日、彼はなんて言った?“かみついたりしないと言ってやってくれ”で、そのあとはどうなったかしら? わたしが彼のトラックに乗り、二人きりになったところでたちまち牙をむいてきたじゃないの。
 一刻も早く彼のそばから離れなければ!
 ミッツィは精いっぱいの笑みを顔に貼りつけ、じりじりとあとずさった。「ケイにまだおめでとうを言っていなかったわ。失礼するわね」
 グラントが何か言う暇もなく、ミッツィはくるりと後ろを向いて離れていった。彼に注がれたまなざしも、握った手のぬくもりもきっぱりと振りきるかのように。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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