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買われた恋

買われた恋


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 エメラルド色の海と荒々しい山々、丘に広がる葡萄園。アーリーンは一目でイタリア、サルデーニャ島に魅せられた。カナダの荒れ果てた葡萄園を相続した彼女は、ここで葡萄の栽培について学ぶつもりだった。さっそく土地一番のワイナリーを見学に訪れたところ、経営者のドメニコが見習いとして働いてみないかと提案してくれた。サルデーニャ男らしく、野性的でエキゾチックな二枚目だ。アーリーンは惹かれずにはいられなかった。でも彼のように魅力的な男性が平凡な私に目を留めるはずもない。大切なのは仕事を会得することよ――彼女はきつく自分を戒めたが。

抄録

「そういうわけじゃないわ」ドメニコにまっすぐ見つめられ、アーリーンは口ごもった。「自分がいわゆる美女からはほど遠いってことをちゃんと自覚しているだけよ」
「だれがそんなことを言ったんだ? 男かい? どこかのろくでなしが君を傷つけて、真実を見えなくしてしまったのか?」
「私の母よ」アーリーンはそっけなく答えた。
 ドメニコは低くうめいた。「なぜ母親が娘にそんなことを言うんだ」
「私が父に似ているからだと思うわ」
「だったら、君のお父さんは相当なハンサムだ。君だってわかっているだろう?」
「さあ。父のことはあまりよく覚えていないの」
「ああ、ご両親は君が幼いころに離婚して、お父さんはその三年後に亡くなったんだったね。それにしても、写真も持っていないのかい?」
 アーリーンの笑い声は自分でも驚くほど皮肉に満ちていた。「母は家に父の写真を置いておくことなんかぜったいに許さなかったわ」
 ドメニコはしばらくグラスの中身を見つめていた。「それじゃ、孤児も同然じゃないか」
 アーリーン自身、何度もそう感じたことがあった。「その点、あなたはとても幸運ね。あんなにいいご家族に囲まれて」
 ドメニコはなにか言おうとして口を開きかけたが、そこでふと、指導者としての役割を思い出したようだった。「このワインをどう思う?」
「おいしいわ」
「いや、アーリーン、君の実力はそんなものじゃないはずだ」ドメニコはからかうように言った。
 アーリーンは首をすくめた。今までワインを品評したことなどない。ただ自分の舌においしいかおいしくないか感じるだけだ。「ヴェルメンティーノね」
「そんなのはラベルを見ればわかる」
「さわやか」
「それから?」
「ずいぶん脚が長いわ」アーリーンはグラスを傾け、ちゃかそうとした。
 ドメニコは天を仰ぎ、笑った。「神よ《デイオ》、僕は指導者として失格だ! もう一度最初からやり直さなきゃだめだな」
 それができたら、どんなにいいだろう。ドメニコの瞳はキャンドルの炎に照らされ、サファイアのような濃いブルーに輝いている。
 ドメニコは真顔で身を乗り出した。「もう一度味わってごらん。香りをかいでから、ゆっくりと口に含む。そして、自分の舌になじませる」
 アーリーンは彼の視線を感じ、どぎまぎしながらも、言われたとおりにした。
「どう? なにを感じる?」
「軽くて、フルーティ……でも、フルーティすぎるってほどでもないわ……なんとなくアーモンドみたいな風味がある」
「そのとおり! だから魚介類の料理によく合うんだよ」
 月が昇り、中世のドームや塔を照らし出している。二人はおいしいスカンピ海老や紫貝に舌鼓を打った。
「デザートが入る余地はあるかい?」メイン料理が終わったところでドメニコが尋ねた。
「まさか!」アーリーンはため息をついた。「もうおなかがいっぱいよ」
「それじゃ、最後は君がまだ味わったことのないもので締めくくろう」ドメニコはそう言うと、ウエイターに合図した。「君は今までのところ、若くやや苦みのあるふつうのヴェルメンティーノしか飲んだことがない。これからその親戚のリクオローサを紹介しよう。もっと熟成していて甘いんだ。あまり冷やさずに飲むことが多い」
「今日はもうこれ以上は無理だわ」グラスワイン二杯がアーリーンの限界だった。今夜は二人で一本あけている。
「大丈夫だよ。君を酔わそうなんて魂胆はない。ただ、この楽しい時間をできるだけ長引かせたいだけさ」
「私につき合うのはそろそろ限界だと思っていたけど」
「それは間違いだ」
 どうということもない一言だった。だが、アーリーンはアルコールなどとうてい及ばないほどその言葉に酔っていた。目の前でキャンドルの炎がゆらゆら揺れ、熱い血が血管を駆けめぐっている。最後の理性にすがりつくようにして、彼女は言った。「私のことなんて、もう全部わかってしまったでしょう――」
「全部じゃない」ドメニコは低い声でささやいた。「これからもっとおもしろい部分が出てきそうだ」
「でも、私はあなたのことをなにも知らないわ」アーリーンは息をはずませて言った。「だから今度はあなたが話す番よ。あなた自身について話して」
「僕のなにを知りたい?」
「あなたの裏の顔を。胸に秘めた、いちばんうしろめたい秘密を」心の動揺を隠そうと、アーリーンはドメニコをからかってみた。
 所得税の申告をごまかしたって言って。恐ろしい前科があるって言って。そうでなければ、どうしようもない女たらしだって……。なんでもいいから、あなたに幻滅するようなことを言って!
 ドメニコはじっとアーリーンの目を見つめたまま、いったん取りあげたワインのグラスをテーブルに置くと、椅子から腰を上げた。そして、彼女に手を差し伸べ、かすれ気味の声で言った。「言葉にする必要はない。行動で示すほうがずっとわかりやすいだろう?」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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