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孤独な狼に焦がれて ウルフたちの肖像 VIII

孤独な狼に焦がれて ウルフたちの肖像 VIII


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンスウルフたちの肖像
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

 ウルフ館の庭師だった父が他界し、天涯孤独の身となったモリーは、半年間にわたる傷心旅行から戻るとすぐに館へ向かった。するとそこで、思いがけない人物に出くわす。20年近く行方不明だったジェイコブ・ウルフ。家族を見捨てた冷血な人が、どうして今ごろ戻ってきたの? ウルフ家が離散し、館が荒廃していく様を間近で見ながら、モリーはずっと心を痛め、いつしか彼を嫌悪するようになっていた。だがジェイコブから突然、庭の修復に協力してほしいと頼まれて、なぜかモリーは拒絶することができなかった。彼の前では幼い娘に戻ってしまうのだ。彼に憧れていたあの日に。

抄録

 ついさっきまでモリーの心臓は高鳴っていたが、彼の引き結んだ唇と険しい目を見て恐怖に凍りついた。自分ではなく、ジェイコブの胸中を察して。
「父がろくでなしだったのは事実だ。妻子を恐怖で支配し、一族の財産を酒で使い果たした。あの男が死んだとき、僕は……」ジェイコブの顔が苦悶にゆがんだ。
「ジェイコブ……」目の前の男性の打ちひしがれた姿に、モリーの胸の奥で何かが呼応した。彼女は腕を上げた。何をしようとしているの? 彼を抱きしめる? ジェイコブはぞっとするだろう。しかし、そうせずにいられなかった。彼に手を差し伸べたい。
 ジェイコブの顔から感情が消えた。暗い感情を穏やかな外見で隠したのだ。「質問には答えたよ」ゆっくりと笑みを見せる。「ご満足かな?」
 彼に頬を指で触れられ、モリーはびくっとした。仮面をつけたままジェイコブは思わせぶりに彼女の頬に指を滑らせた。顎に沿って欲望の火をつけ、感じやすい首の曲線をたどる。そして指は、脈が乱れ打つ箇所で動きを止めた。
 ほんの少し触れられただけでこれほど乱れる自分にモリーは驚いていた。体が内側から熱くなり、今にもとろけそうだ。彼の愛撫がこのまま続いたら、いったい何が起こるの? ジェイコブは何を起こそうとしているの? 彼は私の反応に気づいている。怒りに満ちていた空気が突然、同じくらい危険な何かに変化した。
 ジェイコブの指が肌触りを確認するかのように彼女の首筋を撫でた。モリーは抵抗しなかった。体はもっと激しい愛撫を求めていた。
 張りつめた沈黙の中で聞こえるのは、途切れがちなモリーの息遣いだけだった。ジェイコブは指を鎖骨へ滑らせ、それからさりげなく、しかし意図的にTシャツのVネックの部分に落とした。
 モリーは息をのんだ。彼の指が柔らかな胸の谷間を撫でている。問いかけるように。
 全身がかっと熱くなったが、ジェイコブの顔が冷たく無表情なのに気づくや、興奮は屈辱に取って代わられた。彼は何も感じていない。
「やめて」言いながらも、どちらをやめさせたいのかモリーはわからなかった。冷たい表情か、愛撫か。間違いなく体はやめてほしいと思っていない。体は彼の手と唇を求めている。全身に、あらゆる場所に。
「何を?」ぞっとするほど甘い声で彼は尋ねた。
「からかわないで」モリーは抗議した。ジェイコブは体を武器にする。しかも彼の武器は最高に魅力的だ。どうしても身を引けない。彼女は一瞬目を閉じ、すぐに開いた。「私にどうしてほしいの?」
「それはまたおもしろい質問だな」ジェイコブは冷笑を浮かべ、ルートを逆戻りして指を頬へと滑らせた。刻印するように。モリーは彼の指が通った跡に鮮やかな赤い線が見える気がしたが、もちろん何もない。
 ジェイコブは親指で彼女の唇をなぞった。「僕はきみに惹かれている。きみも僕に惹かれている」
 驚きと恐れでモリーは胸を締めつけられた。
「当面ここにはきみと僕しかいない。おおいに楽しく過ごそうじゃないか」
 彼の口調は親しげで、説得力があった。だが、モリーはそうならないことを知っていた。ジェイコブも知っている。彼の目の暗さを見ればわかる。ただ挑発しているだけだ。これは立ち入った質問と同情への報復にすぎない。誘惑を装った罰だ。
 やっとの思いでモリーが体を引くと、ジェイコブは悪びれた様子もなく手をだらりと落とした。
「つまり、体の関係を楽しむということね?」
「どうとでも呼べばいい」彼はそっけなく答えた。
「あとくされのない関係を」彼の意図は明らかだが、モリーはあえて口にした。ジェイコブは地道に恋愛を育むタイプではない。
「そう、心の伴わない割りきった関係をね」
 彼の邪悪な提案の理由がなんであれ、モリーは一瞬気持ちが揺らいだ。全身の神経と筋肉がそれを求めていた。官能的で根源的な情事にふけった経験がないから。大学時代は人並みに男性と交際した。だが、そのどれもジェイコブが今ほのめかしているものに遠く及ばない。この五年間は介護生活で尼僧も同然の暮らしだった。イタリア旅行中も庭園の見学と、父の死の悲しみを癒やすのに精いっぱいだった。
 そこへ、暗く危険な香りを振りまく美しいジェイコブ・ウルフが現れ、情事に誘っている。
 途方もない話だ。信じられないし、危険を感じる。そして……たまらなく魅力的でもある。
 とはいえ、私には無理だ。ジェイコブもそう思っている。だからこそ提案したのかもしれない。
 ジェイコブの瞳に、暗く、傷ついた何かが見える。かかわってはいけないのだ。私は体と心を切り離すことができない。彼にそのつもりがなくても、結局ジェイコブは私をずたずたに引き裂く。
 あとくされのない情事というものがどうすれば可能か見当もつかない。ましてジェイコブのような男性を相手に。
「私は……できないわ」モリーは一歩、また一歩とあとずさった。暗いのでジェイコブの表情ははっきりと見えないが、知りたいとは思わない。茶化したような反応を示されたくない。考えられる行動はただひとつ――モリーは逃げた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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