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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

冷たい誤解

冷たい誤解


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・マリー・ウィンストン(Anne Marie Winston)
 ベストセラー作家で、“ロマンス小説界のオスカー賞”ともいわれるRITA賞の最終候補者にもなった経歴を持つ。赤ん坊やあらゆるタイプの動物、これから開花しようとするものすべてを愛し、執筆活動以外の時間は、子供たちの運転手や読書をして過ごす。ちょっとした刺激ですぐに踊りだしてしまう陽気な性格。庭の手入れは、雑草で太陽が見えなくなってからするという。

解説

 父の突然の訃報と軽蔑のまなざし――それが彼との冷戦のはじまりだった。

 ■彼が戸口に立って名乗った瞬間、アナの興奮は一気に頂点に達した。ギャレット・ホールデンといえば、一代で巨万の富を築いた億万長者ということを知らない者はいない。アナは、この血のつながらない兄のことを父ロビンからよく聞いていて、いつか会いたいと思っていた。会えた喜びも束の間、彼の口からこぼれ落ちたのは、ロビンが死んだという知らせだった。しかも葬儀はすでに終わっていた。あまりの衝撃と悲しみに呆然自失している彼女に、義兄は軽蔑の念を込めた視線を向け、言い放った。「ロビンの次は僕をたらし込むつもりか?」アナは悟った――自分が老人の財産を狙った悪女だと思われていることを。

抄録

「そのとおり。ありがとう」ギャレットは缶の口を開けて、冷たいビールをひと息に飲むと、片手をアナのほうに伸ばした。「リモコンを取ってくれる?」
 アナはわたす気配を見せなかった。「これ?」リモコンを持ち上げてみせる。「テレビのチャンネルを替えるリモコンのこと?」
「それだ」
「私が手渡したとたんに、邪悪なチャンネル変更作戦を開始しようっていうんじゃないでしょうね」
 ギャレットはくっくっと笑った。「邪悪なチャンネル変更作戦? そんな壮大なことじゃないよ。男だからかもしれないけど、そのリモコンを自分で持っていないと、不安になるんだ」
 アナはギャレットの目をじっと見た。そして大声で笑った。「その説明は信じてあげる」そうは言ったが、まだ手渡してはくれない。「どうも信じられないのは、あなたやロビンのようなお金持ちが、この家にテレビを一台しか持っていないということね」
「ここは理由があって別荘と呼ばれているんだ」ギャレットはポップコーンをひとつ放り上げ、口で器用に受けた。
「なるほど、そのとおりね」彼女の目が暖炉の火に輝き、海のような緑色の光をともした。アナはにっこり微笑んだ。
 ギャレットはアナの瞳を見つめるうちに、自分の唇が微笑みの形に変わっていくのを感じた。感覚を軽くもてあそぶ、心地よい高揚感。彼女の滑らかな肌の魅惑から、無理やり目をそらす。「それ、もらってもいいかい?」アナの持っているテレビのリモコンを指し示した。
 彼女はまた笑った。「禁断症状?」
「ああ。やつれて見える?」
「努力は買うわ」だが、アナはリモコンを渡してくれた。「はい。あなたがコマーシャルのたびに、ほかのチャンネルを十もチェックしないと気がすまないような人じゃないことを祈るばかりよ」
 ギャレットは黙っていた。
 アナはうめいた。「うわ、そうなのね」
 ギャレットはまた笑った。「まあまあ。リモコンを扱う腕は超一流だ。ところで、夜はほかにどんな番組を見る?」
 二人の好みを比較して、月曜、水曜、木曜は、同じ番組をいくつか見ていることがわかった。ほかの曜日は、お互いテレビはどうでもよかった。
 ギャレットはビールを飲み終えると、アナがもう満腹だと言ったので、ポップコーンを平らげた。まもなく、彼女の猫がぶらりと入ってきて、ボウルにくっついていたバターをなめ、アナのひざに飛び乗った。今朝ギャレットがえさを持ってきた人間だというのを忘れたようで、彼をひとにらみしたあとは、完全に無視だった。
「これでもだんだん打ち解けてきているのよ」アナが言う。「最初に連れ帰ったときは、触ることもできなかったわ。一日中ベッドの下に隠れていて、夜になるとえさを食べに出てくるの」
「それじゃ、どうやって手なずけたんだい?」
 アナはにやりと笑った。その茶目っ気たっぷりの表情が、なぜかギャレットの胸を締めつけた。「食べ物を求めて寄ってくるまで、食事をさせなかったのよ。二週間くらいしたら、触らせてくれるようになったわ」
「飼いはじめてどのくらいになる?」
「四カ月」
 ギャレットは自分に感動した。たった一度試しただけで、この猫に触れたのだ。でもやはり、この猫が人になつくよう、アナがものすごい苦労をしたからにちがいない。
 二人はおかしなホームコメディを二本見て、一緒に大笑いした。十時からの一時間ドラマはけっこう深刻な話で、幼い子が死んだ場面ではアナが涙をぬぐった。彼女はやさしい心の持ち主なのだ――ギャレットは思った。猫はのどを鳴らしながら、アナに寄り添って丸まっていた。
 もし僕もあんなふうに彼女に触れられたなら、やっぱりのどを鳴らしているだろう。アナは猫の頭から背中にかけて繰り返しなでてやっていた。ギャレットはそのささやかな動きに魅せられた。「この子を抱っこしてみる?」言われて初めて、彼女がテレビを見るのをやめ、こちらを見ていたことに気づいた。
「あ、いや」自分の頬にやや赤みが差すのを感じ、唐突に立ち上がって、ポップコーンのボウルとビールの缶を持ってキッチンへ向かった。
 僕はいったいどうしたというのだろう。アナ・バーチに関心はない。いや、わかった、自分に嘘をつくのはよそう。抜群のボディ、男がつい指をからめたくなる髪。あんなにすてきな微笑みを見るのは、じつに久しぶりだ。それに彼女はやさしい。じつにやさしい――予想以上に芝居がうまい女優でないかぎりは。ロビンが夢中になってしまったのもよくわかる。まちがいなく無我夢中だったにちがいない。遺言状に名前を入れたくらいなのだから。
 そう思うと、急に冷静になった。僕が怒らせないかぎり、やさしくて、おもしろくて、ほがらかな人なのだとだんだんわかってきた女性と、金を目当てにロビンを誘惑した非情な悪女とを、どうしてもすり合わせることができない。
 二つのイメージはいっこうにまとまろうとしなかった。アナが猫を足もとにまつわりつかせて、コップを食器洗い機に入れるためにキッチンに入ってきた。ギャレットはおやすみとつぶやいて、自分の部屋へ逃げた。
 どちらが本物のアナなんだ?

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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