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愛を結ぶ小さな命

愛を結ぶ小さな命


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 フィオナ・マッカーサー(Fiona McArthur)
 オーストラリア出身の作家。助産師がヒロインのメディカルロマンスを描くことを得意とする。自身もベテランの助産師で、その20年以上のキャリアを生かしたノンフィクションも執筆しているが、小説を書く前の取材旅行が何より楽しいという。

解説

 目が覚めると、彼女は記憶をなくしていた。列車事故に巻きこまれ、偶然現場にいた医師スチュアートに命を救われたが、彼によれば、彼女は意識を失う前、赤ん坊を大事に抱えていたという。赤ん坊は彼の姪で、彼女は彼の亡き兄の妻、デザレイだと聞かされる。兄と長く疎遠だったため、義理の姉である彼女とは初対面らしい。わたしに夫がいたなんて、まったく身に覚えがないけれど……。これまでの人生を失った不安に押しつぶされそうななか、親身に支えてくれるスチュアートに、いつしか心を許すようになっていた。そこから彼女のデザレイとしての人生が始まるかに見えた――だがほどなく驚きの事実が判明する。彼女はデザレイではなかったのだ!

抄録

 スチュアートが戻ってきて椅子にまた腰かけたが、その胸の内は読みとれなかった。
 スチュアートは重々しい声で言った。「兄は、自分には身寄りがいないとでも話していたのかもしれないな。何か理由をつけて言いくるめたんだろう。ショーンは悪知恵が働いたから」
 デザレイはいよいよ首を傾げずにはいられなかった。なぜわたしはスチュアートが話すような男とかかわり合いになったのだろう。そのうえ子どもを二人ももうけるなんて。
 デザレイは頭を振った。「何もかも腑に落ちないわ」彼女はスチュアートのほうに身を乗り出して、深い違和感を伝えようとしたけれども、彼の思いはまだ過去をさまよっているようだった。「どうしてあなたのお兄さんのような人に惹かれたのかしら」
「きみも女性だからね」
 デザレイは勢いよく顔を上げた。「どういうこと?」
 スチュアートは爪に落としていた視線を上げ、デザレイの怒りに気づいてかすかに微笑んだ。片手を上げて言う。「すまない。侮辱するつもりはなかった」
「本当に? 女性全般に何かわだかまりでもあるの?」意外だわ。
「もちろんないよ」
 嘘つき。そう思ったものの、口には出さなかった。スチュアートが平静を装っているのがわかったけれども、いまは議論する気力がなかった。
 スチュアートは話を続けた。「ショーンは洗練された色男でね。その気になれば魅力的にふるまえたんだ」
「あなたみたいに?」
 スチュアートは口元をゆるめた。「ぼくなんて比べものにならないよ」
 魅力的なのは兄弟共通らしいのに、スチュアートはそうと認めるつもりはないようだ。
「おもしろいのね、クレイマー家の男性たちは」デザレイはしげしげとスチュアートを見つめ、頭を振った。「それでも、お母さまに連絡しなかったなんて、どんな話を聞かされていたにしろ考えられない。そんな仕打ちは許せないもの」
 スチュアートが顔を上げた。デザレイの真剣な疑念に気づいたようだ。「何か考えていることがあるのか?」
 デザレイは両手で顔を覆ってから、手を下ろした。「記録を調べてもらいたいの。血液型とか、ソフィーのDNAとか」また気持ちが乱れてきて、部屋を見まわした。「列車に乗っていたほかの犠牲者に、当てはまる人がいないか確認して」
「当てはまる? 二十六歳の妊婦で一歳の子を連れた女性に?」スチュアートはなだめるように片手を上げた。「わかったよ。もう一度問い合わせてみる。だが、いまの状況のすべてに違和感があるのか?」
 デザレイはため息をついた。「ソフィーといても違和感はないし、ソフィーもわたしを覚えているみたいだわ。でも、ソフィーがわたしの子だとしたら、それを忘れるなんてありえないと思うの。シモーンはわたしの子だし、いまいちばん気にかかっている存在よ。あの子についてはしっくりくるわ」
 スチュアートのやさしい目を見つめた。
「それに、あなたの顔には見覚えがある。事故のときの記憶なのか、夫に似ているからなのかはわからないけれど」
 支離滅裂になっているのを感じて、デザレイは唇をかんだ。
「でも、わたしがデザレイでないとすれば、シモーンの父親は誰で、なぜほかにわたしを探している人がいないのかしら」
 デザレイは灰色のうつろな記憶を探った。何一つ、誰一人見つからない。ただ、記憶が入っていたはずの空の戸棚と抽斗があるだけだ。
 何かあるはずよ。捉えどころのない過去を呼び起こしてくれそうな、親しみを感じるものが。ふと、新生児集中治療室《NICU》のことが頭に浮かんだ。
「きょう、NICUに連れていってもらったとき、NICUかそれに似た場所を知っている気がしたの。あそこのいろんなことに詳しいようなのよ。前にも病気の子どもの世話をしたことがあるみたいに」
 スチュアートは、にわかには信じられないようだった。「ソフィーも未熟児だったんじゃないか?」
 そっけなく自分と同じ推測を返されて、デザレイはため息をつき、突破口になるのではという希望を捨てた。「その可能性はあるわね」頭が痛みはじめ、デザレイは目を閉じて窓からの光をさえぎった。
「疲れただろう」スチュアートは立ちあがってブラインドを閉めた。「もう一度調べてみるよ」唇の片側を上げて微笑む。「実は、探偵にきみのことを調べてもらっているんだ。ブリスベンからこちらに来ると手紙を受けとったときに雇った」
 デザレイは眉根を寄せ、自分を見るスチュアートの温かいまなざしが変わるような過去が見つからないことを願った。そして、そんなことを思った自分を叱りつけた。
「眠るんだ、デザレイ。あしたまた来る。何がわかっても、きみや子どもたちの力になるよ」
 デザレイは目を閉じた。額に軽く唇が触れ、スチュアートが出ていくのを感じた。
 スチュアートが本当に義理の弟ではなかったら、どれほど心細くなるだろう。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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