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復讐は誰のため?

復讐は誰のため?


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キム・ローレンス(Kim Lawrence)
 イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。

解説

 彼女を失いたくない。その思いが男を偽りの泥沼へ沈めていった。

 ■出産時に最愛の妻を失い、忘れ形見の息子ライアムを男手一つで育てている画家のジョッシュ・プレンティス。妻の担当医グレアムが薬物依存だったことが明るみに出て、妻の死は薬物の影響だと医師を訴えたが、認められなかった。彼はグレアムの娘のフローラを誘惑して彼女を不幸に陥れることで、医師に復讐しようと考え、ロンドンからウェールズに向かったフローラを追っていく。しかし最初の接触で、勝手が違うことに気づいた。マスコミの報道では冷たい横柄な美女だと思ったのに、フローラはユーモアのあるかわいい女性だったのだ。二人はたがいに惹かれ、やがて愛しあうようになる。愛が深まるほどに、ますますジョッシュは本当のことを打ち明け難くなり……。

抄録

「制服姿の女性が好きでね」
 彼のほほえみと、それを見て乱れた自分の鼓動が、フローラをパニックに陥れた。「お子さんはライアムだけ?」あわてて話題を変える。
 ジョッシュはすぐには答えない。灰色の瞳に宿った困惑の表情が、フローラの心を騒がせた。グレーハウンドを思わせるしなやかな体が緊張して見えるのは、思い過ごしだろうか。
「そうだ」
 まだ三十そこそこかしら。これからライアムみたいにかわいい子がまだ何人かできるのね。これまで子供が欲しいと思ったことがないフローラだったが、なぜかそれが急にうらやましくなり、自分の人生がつまらないもののように思えた。
「私もひとりっ子なの」
 ジョッシュの頬がぴくりと動いた。「ご両親はさぞ君がかわいくて仕方ないのだろうな」
「父はね。母は五年前に亡くなったわ」
 羽根でなでるようにごく軽く、ジョッシュがフローラの手に触れた。フローラは、今まで存在すら知らなかった神経の端々までが突然生き生きと活動しだし、見えないくもの糸が全身に張りめぐらされたように感じた。生気が吹き込まれた肌に、痛みに似た感覚が走る。生々しい性的な感覚が突如自分の中に生じたことに、彼女は当惑していた。
 その症状はジョッシュの手が離れてもすぐには治まらなかった。なぜこんなに動揺するのだろう。冷たい秋の午後の大気に、荒く吐きだされる息が白い。
「私、もう行かなくては」フローラは所在なく地面を爪先で蹴った。
 その靴がさっき汚したローファーに劣らず高価なものであることに、ジョッシュは気づいた。父親に甘やかされて育ったお嬢さん、か。心の中でそうつぶやいても、なぜか彼女への怒りがわいてこない。
「ありがとう」フローラがあどけない微笑を見せた。「いろいろと……」これ以上ぐずぐず言ったら、立ち去りがたいと思っているのがばれてしまうわ。
 ジョッシュもまったく予期しなかった感情に襲われていた。フローラを抱きたいと思うなんて。そんな気持ちになるはずはなかったのに。我慢して、復讐という目的の達成のためにいやいや抱くはずだった。心ない、鈍い、いやな女だったらそれは簡単だったはずだが、彼女は明らかに違っているし、無防備で、繊細な感受性を持っていることを隠そうともしない。
 さっきちょっと触れただけで、敏感なサラブレッドのように身を震わせていた。彼女は僕に好意を持ち、信頼したようだ。父親は社会的な体面を失い、フィアンセには捨てられ、傷ついている。誘惑するのは朝飯前だろう。真実を話してやったら、どんなにすっきりするだろうか。あせらず、慎重に、優しくことを進めて……。
 どうすれば無力な犠牲者を屈伏させ、協力態勢を取らせることができるかをジョッシュの唇は熟知していた。肉体を超えて精神まで焼きつくすような、唇と舌の熱い攻撃が始まった。
 押しつけられた唇の力がゆるみ、顔をはさんでいた手がすっと落とされると、フローラは立っていられず、よろよろと後ろの木の幹にもたれかかった。浅く速い息をつき、突然不確かになってしまった世界で少しでも確かなものを求めるかのように、手を回して幹の感触を確かめる。
「どうして……」震えそうな声でフローラは言った。「こんなことをするの?」なんとか普通の声に戻せたことにほっとする。
 さっきは楽しんでいるように見えたのに、この人はどうして怖い顔をしているのだろう。それなのに私、胸の先がずきずきする――フローラはそのことに屈辱を覚えた。
「君が見かけどおりのばかかどうか、確かめたくなったんだ」
 怒りを含んだ口調に驚いて、フローラは目をぱちぱちさせた。「で、どうだったの?」
「思ったとおりのばかだったよ。待っていましたとばかりに応じるなんて、君には自衛本能というものがないのか? どんな男かもわからないのに、あっさり信用するなんて。女を襲おうと思っているやつかもしれないのに、君は信頼しきったうっとりした目で……」彼は鼻を鳴らして言葉を切った。「ぱっと見て気に入ったというだけで、自分が思っているとおりの人間だと判断するなんて、軽率すぎる」僕は少なくとも警告してやっている、その点ではフェアにふるまっているさ――いや、単にばかげたことをしているだけかもしれない、とジョッシュの心の奥でもう一つの声がした。
 青ざめた頬がほんのり赤らんだ――私はそんなに誘惑されたがっているように見えたのかしら?
「私があなたを気に入ったなんて、どうしてそんなふうに思うの?」冷たく彼女はやり返した。
 ジョッシュは頭をのけぞらせて苦々しげに笑った。「キスも気に入らなかった?」片方の眉がぴくっと上がる。「君がキスをいやがっているのも、それと同じくらいよくわかったよ」
 嘲られて、フローラの顔はかっと熱くなった。ほんの一瞬キスに応じる態度を見せたからって、なんなの?「たいていの男性は文句なんか言わないわ」唇をかんで相手をにらんだ。今さらキスされたくなかったとは言えない。「でもあなたは、男を簡単に信用すると危険だと教えるためにキスをしたんですものね。したくてしたわけではないんでしょ」
「したかったからしたのさ」吐き捨てるように言うと、彼は食い入るようにフローラを見つめた。
「まあ」ため息をつくように言って、彼女はジョッシュを見た。どうしてこの人は、まずいものでも食べた時のような顔で私を見るのだろう。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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