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スペインの情熱と絆

スペインの情熱と絆


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

 幸せだったあの頃に戻りたい。この思いは彼に届かないの?
 1年前、スペイン人の夫サヴの運転する車が衝突され、アイラは4歳の息子ケーシーを失った。その後、サヴは罪悪感から心を閉ざし、彼女に冷たい態度をとるようになっていった。背中を向け合って眠りにつく日々が続き、やがてアイラは離婚しかないと考えるようになる。そのために仕事への復帰を決める彼女だったが、皮肉にも、サヴと同じ職場を選ばざるをえなかった。仕事場では気さくで、魅力的で、部下からの信頼も厚い彼。妻の自分には見せてくれない顔に、アイラの心はさらに沈み……。

 ■仕事を通じてお互いへの考えを見直し始めるサヴとアイラ。再び心を開き合い、久しぶりに情熱の一夜を過ごした矢先、アイラが離婚を考えていたことがサヴに知れてしまい……。彼を愛しているのにうまく伝わらない切なさが涙を誘う、感動的な愛の再生物語です。

抄録

「あの二人、うまくいくかな?」
 サヴの声が聞こえたとき、アイラもちょうど同じことを考えていた。
「たぶんね。まだ愛情がたっぷり残っているように見えるもの」アイラはきまりが悪くなって肩をすくめた。この前弁護士に言われたのと同じせりふじゃないの。「でも、他人のわたしにわかるわけがないわね」腕時計を見て、アイラは小さく叫んだ。「いけない、終業時間を五分も過ぎてるわ」
「慌てなくても大丈夫だよ」サヴはのんびりとほほ笑んだ。「子どもたちの学校が終わるまであと三十分ある」
「でも……」アイラは口ごもった。本当は夕食の買い物をしてから迎えに行くつもりだったのだ。豪華でおいしい食事を用意して、きちんと家事もこなせることをサヴに証明してみせたかった。でも、子ども連れでは手早く買い物をするのは無理だ。
「夕食のことなら気にしなくていい」またしても、心を読んだかのようにサヴが言った。「子どもたちには簡単なものを食べさせて、大人の分はぼくがカレーでも買って帰るのはどうかな?」
「そんなことさせられないわ」
「そうしたいんだ」サヴが立ち上がると、突然狭い面談室がよけい窮屈になったような気がした。毎朝のバスルームと同じ香りが立ちこめて、頭がくらくらしてくる。ずっと愛していたかつての彼がそこにいて、まなざしでアイラをくぎづけにし、言葉で酔わせる。「きみも働いているんだから、食事の支度なんてしなくていい。子どもたちは早く寝かしつけて、きみはゆっくり風呂にでも入って」サヴはアイラにしか見せないけだるい笑みを浮かべた。「おいしいワインでも開けるといい。夕食はぼくが用意する」
 アイラは黙ってうなずき、近づいてくるサヴの香りを吸い込んだ。あってはいけないことなのに、ここは職場なのに、サヴは意にも介さずアイラを引き寄せ、唇を重ねて、きつく抱き締めた。アイラも彼を味わい、夢中で応えた。この長く寂しい一年二カ月の間にもキスはしたし、愛し合ったこともあったけれど、このキスは今までとはまるで違っていた。慰めでも慈しみでもなく、体じゅうが溶け合うような情熱があふれている。サヴはたくましい体でアイラを包み込み、目を欲望にきらめかせて、ざらついた顎をすりつけながら舌で喉のくぼみを探っていたが、ふと体を離した。
「ぼくたちはあんなふうにはならないよな?」
「あんなふうって?」
「チャペル夫妻のようにだ」切々とした響きがアイラの胸を突いた。「目をふさがれてすぐそこにあるものさえ見えなくなり、プライドに邪魔されて問題に立ち向かえなくなっている。ぼくたちもたくさんの問題を抱えているだろう、アイラ」
「サヴ」アイラは彼の頬を撫で、傲慢にも見えるその顔に手を当てて、自分のほうを向かせた。「愛してるわ」涙をこらえて言う。「ただ、あなたが苦しむのを見ていられないの。そんなに傷ついているのに、何もさせてもらえないのがつらいのよ」
「あの子はもういないんだ、アイラ」誇り高い、威厳に満ちた目に涙がにじんだ。「この悲しみは埋められない。どうやっても」
 たったひと言だった。それでも、サヴが痛みを認めるような言葉をもらしたのは、わずかにでも心を開いてくれたのは、それが初めてだった。そのひと言で充分だった。それだけで、これから何があっても乗り越えていける。
「仕事に復帰したのはいいことだったようだね」サヴはアイラを見つめた。「反対して悪かった。ぼくはただ……」
「ただ、何?」
「きみのことが心配だったんだ」サヴは静かに言った。「今も不安だよ。きつい仕事なのはわかっているし、ここにいるとあの日のことを思い出すんじゃないかと思って」
 アイラは目を閉じた。もっと早く話してくれていたら。男のプライドを振りかざして、わたしを家に閉じ込めようとしているのだとばかり思っていた。ずっとわたしを守ろうとしてくれていたのに。
「わたしは大丈夫よ、サヴ」声は震えていても、決意は揺るがなかった。「仕事に復帰すればつらいこともあるでしょうけど、家に閉じこもっているのに比べればなんでもないわ」
「そうだね。今ならわかるよ」ポケベルが鳴って、サヴはしぶしぶアイラを放した。
「わたしも行かないと」アイラはほほ笑んでドアに向かった。驚き、ほっとし、心がはずんでいた。サヴの変化に。二人の変化に。仕事に復帰して結婚生活を終わらせるつもりだったのに、逆に結婚生活を救うことになりそうだ。
「料理はなしだ」サヴはドアノブに伸ばしたアイラの手を握った。「話し合いもだよ」ぶっきらぼうに言うと、目を閉じてもう一度アイラを抱き締めた。アイラの髪に顔をうずめ、胸いっぱいに香りを吸い込む。「ともかく、重要な話はなしだ。今夜はきみが欲しい、アイラ」
 アイラにはよくわかっていた。たぶん、サヴ以上に。
 二人は医師と看護師であり、息子と娘でもあり、親でもあり、友人でもある。
 でも、今夜は恋人同士でなければならないと。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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