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こわれかけた愛

こわれかけた愛


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー シリーズ: こわれかけた愛
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ヘレン・ビアンチン(Helen Bianchin)
 ニュージーランド生まれ。想像力が豊かで、読書を愛する子供だった。十代の初めのころに初めて物語を書く。学校を卒業して、法律事務所で秘書をしたのち、二十一歳のときに友人とともにワーキングホリデー制度を使ってオーストラリアにわたる。メルボルンで数カ月働き、北クイーンズランドのたばこ農園を手伝っていたときにイタリア人男性と知り合い結婚した。その後三人の子供に恵まれ、子供たちや友人にたばこ農園の話を聞かせているうちに小説を書くことを思いついたという。イタリア人男性をヒーローにした最初の小説は、一年をかけて完成され、その後イギリスのハーレクイン社から出版された。もっとも尊敬する作家はノーラ・ロバーツと語るが、プライベートな時間に“座り心地のいい椅子に丸くなって”する読書は、ミステリーからロマンスまで幅広い。これまでに訪れたいちばんロマンティックな場所はハワイのホノルルだという。

解説

 “別居中の夫、ニコス・カリソスと1年間ともに暮らすこと”父の遺言状に書かれた一文に、カトリーナは呆然とした。カトリーナが実業家の夫ニコスと別居したのは、結婚直後。彼が愛人を妊娠させたと知り、ショックのあまり家を出たのだ。父は、もし遺言条件をのまないのであれば、一族の会社を、娘ではなくニコスに譲り渡すという。大切な会社を、ニコスに渡すなんてできないわ……。悩んだすえ彼女は、以前暮らしていた屋敷に戻ろうと決めた。待っていたのは、愛憎と官能うずまく駆け引きの日々だった。

抄録

「カトリーナ、シボーン」
 ニコスの声はこのうえなくなめらかだったが、どことなく危険な響きが潜んでいた。
「まあ、ニコス。会えてよかったわ」
 うれしそうに応じるシボーンの頬にニコスは軽く唇を押し当てた。
 裏切り者。カトリーナは胸の内で母親を非難した。シボーンはニコスを崇拝していた。その気持ちは今も変わらないようだ。
「ぼくもです」ニコスはちらりと振り返り、カトリーナに思わせぶりな優しいまなざしを向けた。「明日の夜、ディナーを共にしよう。七時でどう?」
 ろくでなし。母の驚きに気づき、カトリーナはののしりの言葉をのみこんだ。いまいましいことに、ニコスは眉をつりあげただけだ。
「お母さんはまだカトリーナから聞いていないんですね?」
 ひっぱたいてやりたい。カトリーナの手がうずいた。「そうよ」怒りをこめて言う。
 シボーンは娘へ、そしてニコスへと視線を移した。彼はカトリーナへ無言の敬意を表してうなずいただけだった。
 彼は知っているんだわ。高みの見物としゃれこんで、わたしがボールを拾ってゲームを始めるのを待っているのよ。
 ほかに道はない。へたに言い逃れをするより、真実を打ち明けたほうがいいのだろう。
「お父さんの賢くもたぐいまれな提案で」カトリーナは皮肉たっぷりに言った。「わたしが遺産を相続するには、ニコスと一年間一緒に住まなければならないの。わたしが遺言に従わなければ、ニコスはマクブライド社の支配権を握ることになるわ」カトリーナは恨みのこもった目で彼をにらみつけた。気の弱い男ならその場で殺されかねない、強烈な視線だった。「もちろん、わたしがそんなまねをさせるわけはないでしょう」
「あらまあ」娘がふつふつと怒りをたぎらせるのを見て、シボーンは顔を曇らせた。
 娘の父親――夫の性格を、シボーンは熟知していた。いかにもアイルランド人らしい人当たりのよさとは裏腹に、不屈の意志を持っていた。別れてずいぶんたつが、シボーンはとうに夫を許していた。二人の結婚が生んだ唯一のすばらしい贈り物、カトリーナのために。
「あの人はお節介なおばかさんなのよ」シボーンは静かに言ってから、娘の皮肉な笑みに気づいた。だけど抜け目のない人だわ、と娘の目は語っている。
 もちろんよ。シボーンは心の中で娘に言った。ケビン・マクブライドほど目先のきく男はいなかった。そして、彼は娘の夫となったギリシア人をひと目で気に入ってしまった。たぶん、ケビンは、自分が生前できなかったことを、死をもって成し遂げようとしているのかもしれない。
 お母さんたら、どうしてそんなにのんびりかまえていられるの? カトリーナは無言でいらだちをぶつけた。わたしはドラゴンに食い殺されるかもしれないのよ。敵に愛嬌をふりまく前に、わたしと一緒に闘ってちょうだい。
 ニコスは妻のほんのわずかな表情も見逃さなかった。やせて青ざめた妻は抑えきれないほどの怒りに身を震わせている。手足をばたつかせてののしられようとも、彼女を肩にかついで車に押しこめ、自分のベッドへ連れ去りたい。彼はそんな衝動に駆られた。
 ニコスの黒い瞳に宿る欲望を見抜き、カトリーナは彼を殴りたくなった。「おやすみなさい」代わりに冷たい拒絶の言葉を投げつける。
 ニコスが何をしようとしているのかカトリーナが気づく前に、彼は妻のやわらかい唇を自分の唇でふさぎ、彼女が入念に築きあげてきた防御の壁を打ち壊した。
 瞬時のキスで、カトリーナの胸に思い出が鮮明によみがえった。
 同時に、彼女はそれが再び現実になることにも気づいた。
 まさにそれがニコスの目的だった。脅しや挑戦ではなく、無言の儀式で二人の目の前に横たわっている近未来を示したのだ。
 上体を起こしたニコスは、カトリーナの緑色の瞳にまぎれもなく怒りがきらめいているのを認め、愉快そうに唇の端を上げた。
「七時だよ、カトリーナ」ニコスがうわべだけの穏やかな口調で念を押すと、彼女の顎がかすかに上がった。
 平静を保つのよ。自制しなさい。どちらも充分に訓練を積んでいるでしょう。「場所を指定して。そこで待ち合わせるのがいいわ」
 ニコスの片方の眉がつりあがる。そのからかうようなしぐさはカトリーナの自尊心をひどく傷つけた。
「リッツ・カールトン・ホテルのロビーで」
 ダブル・ベイにあるカトリーナのアパートメントから数ブロック離れた高級ホテルだ。車を使う必要はない。計算ずくで選んだに決まっている。カトリーナは確信し、地団駄を踏みたくなった。
 彼女はニコスに冷ややかな視線を投げ、声色ひとつ変えずに応じた。「わかったわ」
 ニコスはシボーンにうなずいてから、くるりと背を向け、大勢の客の間を縫うようにして出口に向かった。
「何も言わないで」外に出るなり、カトリーナは母に釘を刺した。
「口を出そうなんて夢にも思わないわ、ダーリン」母はくすくす笑いながら言った。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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