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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

理想的な婚約者

理想的な婚約者


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リズ・フィールディング(Liz Fielding)
 イングランド南部バークシャー生まれ。二十歳のときアフリカに渡り、秘書の仕事に就いた。土木技師と結婚し、その後十年間をアフリカと中東で暮らす。夫は激務で、彼の帰宅を待つ長い時間、ものを書いて過ごすうち作家の道に。現在はウェールズに住んでいる。夫とのあいだに二人の子供がある。

解説

 結婚回避――共通の思いを抱く二人は、しばし見せかけの恋人同士になることに。

 ■午前八時十五分発ロンドン行き列車の食堂車に座っていたベロニカは、発車間際にあわただしく列車に乗りこんできた男性に目を奪われた。ロンドンでも著名な大企業を率いる、実業家のファーガス・カバナだ。彼を見て、ベロニカはとっさに決断した。「どうぞおかけになって」さりげなく彼に相席を勧める。彼女の魅力に引きつけられたファーガスは、申し出を受けた。ベロニカは今日、いとこの結婚式に出席することになっていたが、花婿候補を押しつけてきそうな母親をかわすために、とりあえず結婚式にエスコートしてくれる男性を探していたのだ。独身で資産家のファーガスなら、母も納得するだろう。彼のほうも、妹たちに冴えない花嫁候補を挙げられ、閉口していた。互いの立場を理解した二人は、しばらく恋人役を演じることにする。

抄録

「真実を?」
「食堂車の旅客係に賄賂を渡してぼくを自分のテーブルに呼び寄せ、厚かましい提案をしたことだよ」
「それもひとつの案ね」ベロニカはさっと横目で彼を見た。
「誰も本気で信じないという有利な点がある」
 ふだん、めったなことではとり乱さないベロニカだが、どうやらファーガスも同じらしい。彼に揺さぶりをかけなくては。「リスクを負う覚悟はないけど、よければあなたの妹さん相手に試してみてもいいわよ」
 ファーガスはにやりとした。「まいったな。じゃ、どうやって知りあったことにする?」
「そうね、ロンドンに来る列車のなかで知りあったという話が、もっともらしく聞こえるんじゃないかしら。あなたは毎日乗っているし、わたしも月に二回は利用しているもの」
「朝食の時間に?」
 ファーガス・カバナはわたしをからかっているのかもしれない。からかわれるなんてごめんだわ。「当たり前でしょう。列車に乗るときはいつも朝食をとるわ」ベロニカはきっぱりと言い放った。「それに、二人ともメルチェスター近辺に住んでいるんだから、どこかでもう一度会ったと言ってもおかしくないんじゃない?」言葉を切り、彼の提案を待つ。
「コンサート会場で?」
「あなた、音楽が好きなの?」
「メルチェスター・シティ・オーケストラを後援している」
「すてきだわ」
「それとも、美術館で会ったっていうのは? カバナ・ルームを見たことはあるかい?」
 まだ見ていなかったが、地元の新聞の記事で最近オープンしたことは知っていた。「ギリシアの壺のかけらを展示しているところ?」
「土器片だよ」ファーガスは訂正した。「土器の破片だ。母は考古学者だった。“壺のかけら”は母が発掘して、保管するための費用と一緒に美術館に寄贈したんだ。まだ完成していないが、新しくできる別館は見る価値がある。もし壺のかけらに興味があればだけど」笑うべきか笑うべきでないか、ベロニカは決めかねているようだ。「きみはどういうことに興味があるんだい、ベロニカ?」
「友人の家を訪ねたり、機会があれば乗馬もするわ……」ファーガスがにやりとした。「何?」
「別に」彼は首を振った。「ただ、ドーラの言葉を思い出して……」タクシーが角を曲がり、小さいながらも魅力的な家の前で止まったので、彼の言葉は尻切れとんぼになった。「着いたようだ」ファーガスはドアを開けて降り立ち、帽子の箱とスーツケースを玄関前に運んでベルを鳴らした。
「待っていてくださる必要はないわ」
「ぼくは紳士だからね。友達が留守ということもある。その場合、荷物を持ったまま玄関の前で友達の帰りを待っていなければならない」
「スージーはわたしを待っているわ」
「何か急用ができて外出する羽目になったとしたら?」
「スージーに急用なんかないわ……」言いかけたとき、ベロニカの言葉を裏づけるように、ドアに向かってくる足音が聞こえた。「ほらね」
「なるほど」ファーガスが帽子の箱をさしだした。
「ありがとう」ベロニカは箱を受けとった。
「どういたしまして」彼女の両手がふさがったのを幸い、彼は彼女の顔を両側からはさんだ。「正直言って、八時十五分発の列車でこれほど楽しい思いをしたのは初めてだ」
 ベロニカの目が驚きに見開かれた。だが彼女は身じろぎもしなかった。ドアが開く気配を察してファーガスは身をかがめ、軽く唇を触れあわせた。
 彼女は友人の前で恋人同士のふりをするなどわけもないとたかをくくっていたのだろう。しかしファーガスはそういうことをなりゆきに任せる男ではなかった。キスはどんな言葉よりはるかに雄弁なのだから。少なくとも彼はほんの軽いキスでやめておくつもりだった。ところがなぜか、最初の予定と違ってしまった。
 外見こそガラスについた霜のように冷ややかなベロニカだが、唇は意外にも温かかった。拒みきれないことを知ってか、彼を歓迎しているようにも思えた。胸の内でわき起こり、噴出する機会を待っていたある種の情熱が感じられた。
 それは、フランベしたアイスクリームにも似ていた。甘くて意外な感じ……。錯覚でないことを確かめるために、ファーガスはもう一度試みた。
 錯覚ではなかった。そして甘い唇を味わううちに、先ほど列車のなかでふと浮かんだ疑問に対する答えを得た。この女性の心を解かすのに、ひと晩も必要ない。彼女はまさしく火山だ。おそらく、休火山だろう。だが穏やかな外見とは裏腹に、内面は間違いなく熱い溶岩がどろどろしている。やがてファーガスがしぶしぶながら体を起こし、彼女の銀色に輝く瞳をまっすぐに見下ろしたとき、その瞬間まで彼女自身、自分の情熱的な側面に気づいていなかったのではないかという気がした。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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