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素足の妖精

素足の妖精


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

 17歳のリンデンにとって、毎日が薔薇色だった。なぜなら家にはジョス・ホワイトがいるからだ。険しい坂道で事故を起こした彼を車から助け出し、家へと連れ帰った。リンデンとジョスは親子ほども年がちがうのに、とても気が合って、人間嫌いの画家の父も、彼を気に入っている。そんなある夜、生まれてはじめてパーティへ出かけたリンデンは、同じ年頃の男の子たちなど誰一人目に入らず、ジョスのことを愛していると気づいてしまうのだった。月光を浴びて泳ぎながらふと岸を見やると、ジョスが立っている。彼は水の中に入ってきて、裸のリンデンを抱きすくめた。

 ■月の光に照らされ、柳の木の下で結ばれた二人。しかし翌朝リンデンは、父親からジョスが出ていったこと、彼に妻がいることを知らされてしまう。絶望したリンデンは……C・ラム、衝撃の初期傑作品。

抄録

「トラクターをどかしてもらえないかね?」後ろでジョスの冷たい声がした。「修理屋が帰るそうだ」
 ジェフはじいっとジョスの顔を見返していたが、黙ってうなずくと、トラクターの方へ歩いていった。騒々しいエンジン音をたてて、トラクターと修理工のトラックが小道を下っていく。リンデンは目を閉じて天を仰ぎ、太陽の光を体いっぱいに浴びた。
「ジェフのこと、気に入った?」ジョスの視線を体に感じて目を開ける。ジェフは彼女のたったひとりの友だちなので、ジョスにも気に入ってもらいたかった。
「きみはどう思ってるんだい?」
「そりゃあ好きよ。幼なじみですもの」
「キスはしたのかい?」
 リンデンは眉をひそめて地面に降りた。「そんなことばかり考えてるのね」背を向けて歩きだすと、ジョスもあとからついて来た。
「人間だれもが通る道さ。大むかしからね。いくら修道院で教育を受けたからって、男と女の愛については知ってるんだろう?」
「わたしはまだ女じゃない、って言ったでしょ?」
「少女と女との境い目はどこにあるんだい?」
 リンデンは一瞬たじろいだ。「そ、そうね……。どこかしら?」
 ジョスは急に笑いだす。「ぼくに説明しろって言うの? 手とり足とり教えてあげようか?」
 ジョスの言葉にかちんときて、リンデンは顔をそむけた。「あなたは女じゃないんだから、わからないでしょ」
「ははん、うまくごまかされた感じだな」
「今日はどうする予定?」リンデンは話題を変えた。「馬に乗るのはどうかしら? ブルーボーイ山までピクニックに行かない?」
「ブルーボーイ山か……」ジョスの目の色が変わった。「子どものころ行ったことがあるよ。また行ってみたいね」
 一時間後、二人はサンドウィッチと紅茶を用意して、ヘレンの家から借りてきた馬にまたがって出かけた。日の光は暖かく、空はまっ青に晴れあがっている。
 荒野に出ると馬を止め、遠くの景色をながめた。水平線は青く、わらびやはりえにしだやヒースにおおわれた平原が何キロにも渡って広がっている。リンデンは、あちこちで乾いたヒースをはんでいるひつじの群れに目をとめた。「“荒野のいたずらっ子”って呼ばれてるのよ」
「うん、知ってるよ」
 リンデンは鼻にしわを寄せた。「そうね、あなたはなんでも知ってるものね」
 彼のグレーの瞳が輝きを増し、銀色の光を放った。
「きみは男心をくすぐるセイレーンだ……」そっとつぶやくと、身を乗りだして、リンデンの鼻に軽く唇を触れた。
 リンデンも今度は取り乱したりはしなかった。澄みきった目で彼を見上げ、優しく笑いかける。キスされるのはうれしい。リンが積極的に愛情表現をする父親ではないので、子どものときでさえ、抱きしめられたりキスをしてもらった経験はなかった。リンデンはお返しのキスをしようと、ジョスの鼻をめがけて伸びあがったが、彼が顔をずらしたので唇が触れあってしまった。
「ブルーボーイ山まで競走だ」ジョスは急に馬を走らせた。
 頂上に着くころには、リンデンはすっかり息が切れ、彼女がまたがっている雌馬のレイディの鼻息も荒くなっていた。
「ルドには追いつけないわ」ジョスの乗っていた雄馬は、先に着いてもう草をはんでいる。
 ジョスは馬から降りようとしているリンデンを抱きとめ、紅潮した顔をじっと見つめた。やがてその手がゆっくりと背中に沿って下りてきて、Tシャツの体を抱きしめる。熱い唇が重なったとき、リンデンは昨日ジョスに言われたように、目をつぶり口もとの力をゆるめた。じかに伝わってくるジョスの激しい鼓動にあおられて、動悸がどんどん速くなっていく。息苦しくなって両手で彼の胸を押した。ふっとジョスの腕の力がゆるむ。彼は大きく息を吸いこんで、もの問いたげなまなざしで、リンデンの顔をのぞきこんだ。
「こんなこと、しないでほしかったわ」リンデンは彼の視線を見返して、率直に言った。「どうしてこんなのが好きなのか、気が知れないわ。目がくらくらしちゃう……」
 ジョスの目もとにしわが寄った。「ぼくもめまいがするよ。おそらく理由は別なんだろうけどね。そう……きみはキスが嫌いなの?」
「こういうのはね。鼻の先にちょこんとするのは好きだけど……」
「だったらどうしてこんなにドキドキしてるのかなあ」ジョスはさっと彼女の胸に手を当てた。
 リンデンはあっけにとられて胸もとを見下ろす。長いごつごつした指のぬくもりが、コットンの生地を通して伝わってくる。
「たぶん、呼吸が苦しくなったせいでしょ」
 ジョスはまた笑った。「たぶん、か」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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