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罪なき愛人

罪なき愛人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 ぽっちゃりとして不器量な18歳のジョージアは、決して実らぬ恋だと知りつつも、母の再婚相手の息子――血のつながらない兄ジェイソンに想いを寄せていた。だがある日ひょんなことから、ひどい濡れ衣を着せられてしまう。彼女が義父を誘惑しようとしたというのだ! 愛するジェイソンからも、実の母親からも信じてもらえず、蔑みの目を向けられたまま、失意のジョージアはNYへ……それきり、ジェイソンとも顔を合わせることはなかった。7年後に義父が亡くなり、帰郷することになるまでは。

抄録

 急激な痛みに、ジェイソンの心臓は締めつけられた。ふいにジョージアが弱々しく、そしてひどく寂しそうに見えて、彼女を大切に守ってやりたいという昔の衝動が呼び覚まされた。その感情こそ、ジョージアとジェイソンの関係の基礎をなすものだった。あの運命の夜がきて、彼自身もよくわからないうちに、まったく別のものに変わるまでは。あの夜、アルコールと高熱で半ばもうろうとしたジェイソンは、これまで二人の関係と結びつけたこともなかった生々しい欲望にとらわれたのだ。
 守ってやりたいという感情はいらない。抱いて慰め、安心させてやりたいという衝動もいらない。だが頭では拒絶していても、感情が先に立ち、ジェイソンはジョージアが立っている場所までそっと近づいた。彼女は何か物思いにふけっている様子だったが、ジェイソンにはよくわからなかった。過去にいろいろあったにせよ、結局彼はジョージアのことが本当にわかってはいなかったのだ。
 足音は苔で消されていたが、ジェイソンがジョージアの肩に触れたとき、彼女は驚いた様子をまったく見せなかった。ただ顔を上げ、彼を見つめた。金色の目は、あたかも彼女が遠い過去を、あるいは未来をのぞき込んでいたかのように、ぼんやりしていた。
「ここはおそらく地上でもっとも平和な場所の一つだろうね」ジェイソンは静かに言った。日焼けしたばかりのジョージアの顔が青ざめているのがわかる。肌はばらの花びらのように柔らかそうだった。唇の鮮やかな色が彼の注意を引き、ふくよかで官能的な唇から目を離せなくなった。
 ただ唇を見ているだけで、ジェイソンの心は激しくうずいた。彼女の唇を奪い、彼女の唇が開いて天国へ招いてくれるのを感じたかった。ジョージアには人の心を乱し、そそる力がほかのどんな女性よりも強くある。今、それがわかってきた。
 ジェイソンは当惑した。いつの間にか手が動いて、彼女の髪をほどいていた。ジョージアがあらがわず、まるでほどくのを助けるかのように心持ち頭を傾けたので、彼の困惑はさらに深まった。
「だから、私たちは二人ともここへ来たの? 心の平和が必要だと感じて?」ジョージアは考え込むように答えた。あたかも、彼のちょっとばかり陳腐なせりふが琴線に触れでもしたかのように。
「心の平和というのはとらえどころがないけれど、必要なものだ」ジェイソンは静かに同意した。彼の指は独自の生命を持った生き物のように彼女の髪をほどき、魅入られたようにすいていた。
 ジョージアが小さなため息をもらした。襟元からのぞくジェイソンの裸の胸にその息がふわりとかかる。ジェイソンはいつしか自分が未知の領域へ踏み込んでいくのを感じた。意識が現実から完全に遊離している。
 ジョージアは弱々しく視線を落として、深い湖の底をじっとのぞき込んだ。ジェイソンとブロッサムに加わることができずに家を出ると、無意識のうちに人目につかないこの静かな場所へ足を運んでいた。そして待った。本能が、彼が来ることを告げていた。それが運命だった。
 彼はなんて言ったのだったかしら? 未解決の問題?
 彼を避けることができないという事実が、不思議にジョージアをリラックスさせた。だから彼が来たときは、いわば催眠状態としか言いようのない状態になっていた。それに、近くにあるたくましい体とかすかに鼻を刺激するムスクの香り、じんわり放たれる熱、髪をなでたりすいたりする彼の指の動きが、最後の緊張からジョージアを解放し、知らぬ間に押し寄せていた感覚の中へいざなっていった。
 長年、厳しく禁じられていたその感覚は、圧倒的な快感の波へと変わっていった。骨が溶け、血潮が燃え、体の奥深くで熱いものが噴き出す。これほど長い間忘れていたにしては、思い出すのは簡単だった。
 我を忘れて、ジョージアはジェイソンのほうへ身を投げかけた。脚から力が抜けていく。ジェイソンは彼女を抱き止めると、苔に覆われてひんやりした地面に一緒に横たわった。
「この暑さだ」彼はつぶやいた。「君は慣れていないだろう?」
「あなたは慣れているの?」ジョージアは、無意識のうちに主導権を握ろうとする彼をからかおうとした。だが出てきた声はかすれ、麻酔にかかったように言葉がはっきりしなかった。実際、麻酔にかかった気分だった。ジェイソンの目を捜し求めると、このなりゆきをいぶかっているように、眉間にかすかなしわが寄っていた。彼もまた、現実をとらえようとしているが、その現実は遠のくばかりのようだ。
「僕は大丈夫だ」
 ジェイソンのまぶたが重たげに下がり、うっすらと汗で光るオリーブ色の肌に濃いまつげが三日月形の影を落とした。彼の視線は長い間彼女の唇の上にとどまっていたが、やがて細い首から長袖のブラウスへと下って、再びぼんやりした彼女の金色の瞳をとらえた。
「しっかり上までボタンがかかっているね。君が暑さにやられたのも無理はない」それが口実であることを、ジェイソンは自覚していた。整然と並んだボタンをはずすための口実だと彼女にもわかっただろうか。この目で彼女の体をむさぼり、魅力的な白い肌に触れるための口実だと。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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