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和書>小説・ノンフィクションハーレクインクリスマス・ストーリー

恋を忘れた公爵

恋を忘れた公爵


発行: ハーレクイン
シリーズ: クリスマス・ストーリー
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 クララは身分も財産もある家の娘。年ごろだからといって、浮ついた貴族たちにちょっかいを出されるのが悩みの種だ。そこで彼女はある人物に助けを求める手紙を出す。その相手とは、かつて結婚を断られたことがあるロンドン随一の放蕩者の公爵、セバスチャン・フリートだった。終わったはずの恋が、思いがけずふたたび燃えあがるとは知りもせず。

抄録

 その瞬間までは、手を引こうと決めていた。クララ・ダヴェンコートはぼくにふさわしい女性じゃないことがよくわかった。彼女のためにも近づかないようにしようと。
 それなのにエルトン卿がクララの手をとってダンスに連れ出したとき、セバスチャンは激しい嫉妬に襲われ、二人に向かって歩きだした。
 一度だけキスをしよう。一度だけ唇を奪ったら、あとは彼女にかかわるのはよそう。セバスチャンは心に誓った。
 クララが近づいてくるセバスチャンに気づいた。感情を抑えきれず、信じられないというように青い瞳を細くする。ふっくらとした下唇を噛んでいたが、次の瞬間エルトン卿になにか話しかけられて振り向いた。
 さっきセバスチャンが廊下の暗闇の中で触れた蜂蜜色の髪が、喉元でカールしている。クララはか弱いようにも見えたが、毅然としているようにも見えた。セバスチャンはひと筋縄ではいかないことを感じ取った。
 エルトン卿は女性のことで争う男性ではなかった。セバスチャンがやってくるのを見て真っ青になり、クララに何事かつぶやくと、上着に火がついたように立ち去った。
 クララはセバスチャンの方を向いた。ダンスが始まる直前に置いてきぼりをくらった自分を、まわりにいる紳士淑女たちが興味津々で眺めているのには気づいていたが、かまわなかった。
「いったいエルトン卿になにを言ったんですか?」クララは甲高い声をあげた。
「べつになにも言っていないが」セバスチャンはまったく悪びれたようすもなく、クララの隣に来て腕をとった。
「とぼけないでください!」クララの顔はいらだちで真っ赤になった。「さっき彼と話していたでしょう! なにを言ったんですか?」
「間違った愛情表現できみを困らせるなと警告したんだ」
 クララは鼻を鳴らした。「それで、代わりにあなたが困らせに来たってわけですか?」
「傷つくことを言うんだね」
「あなたがわたしを怒らせるからです!」クララの青い瞳がきらりと光る。「もう一度お別れの挨拶をさせていただきます。いい夜を」
「すまないんだが、こんなに早く舞踏会から引きあげるつもりはない」
「まあ!」クララは腹立ちをまぎらすようにため息をついた。「あなたがえらそうにじゃまをしたせいで、さっきはパートナーがいなくなったし、今はみんなが踊っている中で一人置いてきぼりになったんですよ」
「きみにダンスを申しこみたい」セバスチャンは言った。「だが、すでに断られたから、もう一度運を試す気にはなれないな」
 クララは激昂した表情でセバスチャンを見据えると、大股に立ち去った。背筋をまっすぐ伸ばし、怒りで全身をこわばらせて。眉を上げたり、おもしろがって忍び笑いをもらす人々には一瞥もくれなかった。
 セバスチャンはあとを追った。クララは彼に背中を向けて立っている。セバスチャンはその腕をつかんで体を引き寄せると、クララだけに聞こえるよう耳元でささやいた。
「さっきはうまく逃げおおせたと喜んでいてはいけないよ。夜が終わるまでに、ぼくはきみの唇を奪ってみせる。ぜったいにね」
 クララが震えているのがわかった。彼女がくるりと振り返り、セバスチャンを見つめる。目の焦点は合っていなかったものの、その奥ではなにかが光っていた。
 クララは自分の意志に反して興味をかきたてられている。不本意だと思いながらもぼくに魅力を感じ、誘惑されたがっている……。そう思うと、セバスチャンの体は燃えるように熱くなった。
「あなたの言ったことなんて信じませんから」クララは気力を振り絞り、しっかりしなさいと自分自身に言い聞かせた。
「信じてくれ」セバスチャンは言った。
 その言葉はちょうどいいときに発せられた。大声で無言劇の役者の到着が告げられると、人々はダンスをやめ、潮が引くように部屋の端へと下がった。ドアが大きく開いて、役者たちがドラムのリズムに合わせて行進してくる。
 オーケストラが楽しげに演奏を再開すると、人々はすばやくダンスに戻った。気品ある優雅なワルツだ。この曲は速く激しい。暖炉の炎とろうそくの明かりがきらめき、ひいらぎや宿り木の枝に囲まれていると、まるでクリスマスを祝う華やかな中世の舞踏会にいるような気がした。
 セバスチャンはクララの手首をつかんで、腕の中に引き寄せた。彼女はためらうこともなく、すんなりと体を寄り添わせた。これからダンスを踊ると思ったのだろう。音楽が部屋じゅうを満たし、笑い声や話し声がそこここで聞こえていたせいかもしれない。
 ところがセバスチャンはクララを、窓辺にある奥まった暗い場所へ連れていった。そこは寒かった。雪が窓枠にぶつかり、ろうそくの光がガラスを反射するように輝いている。
 その場へ着いたとたん、セバスチャンは顔を近づけて、クララの唇を唇でふさいだ。
 クララはショックを受けて身をこわばらせたが、それもほんの一瞬のことだった。セバスチャンは彼女の体から力が抜け、こらえきれずに本能的な反応を返すのを感じた。クララがキスをしながら唇を開くと、体は万力で締めつけられているかのように苦しかったものの、彼はうれしくて舞いあがった。抑えきれない欲望が全身を野火のように駆け抜ける。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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