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発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス、 華麗なるシチリア
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和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス

億万長者と嘆きのメイド 華麗なるシチリア IV
著: ケイト・ヒューイット 翻訳: 井上絵里発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス、 華麗なるシチリア
価格:600pt
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレットみんなの評価 (未評価)
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著者プロフィール
ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。
アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。
解説
何が不満なんだ? と彼は訊く。
お金では、失われた愛や命は戻らないわ。
メイドのルチアは、アンジェロ・コレッティにとって唯一の友人だった。シチリア名家の婚外子として蔑まれ、孤独なアンジェロに、ルチアは幼い頃から寄り添い、支え、慰めた。ある夜、たった一度だけ、二人の情熱が交錯する。だが翌朝、彼は忽然と姿を消してしまい、ルチアの愛は報われぬまま、授かった小さな命までも流産で失うという悲劇に終わったのだった。7年後、アンジェロがシチリアへ戻ってきたとき、ルチアはつい、彼が迎えにきてくれたのかもしれない……と淡い期待を抱いた。だが、何も知らない彼は、メイド姿のルチアに平然と言った。「そんな仕事の代わりに、破格の給料でぼくの世話をしないか?」
■アンジェロはコレッティ一族への復讐に邁進するあまり、ルチアの愛も彼女の悲しみも、目に入らないのでした。大好評を博している作家競作8部作〈華麗なるシチリア〉はいよいよ4話目。後半も注目作家のドラマティックなロマンスが続きます。どうぞお楽しみに!
お金では、失われた愛や命は戻らないわ。
メイドのルチアは、アンジェロ・コレッティにとって唯一の友人だった。シチリア名家の婚外子として蔑まれ、孤独なアンジェロに、ルチアは幼い頃から寄り添い、支え、慰めた。ある夜、たった一度だけ、二人の情熱が交錯する。だが翌朝、彼は忽然と姿を消してしまい、ルチアの愛は報われぬまま、授かった小さな命までも流産で失うという悲劇に終わったのだった。7年後、アンジェロがシチリアへ戻ってきたとき、ルチアはつい、彼が迎えにきてくれたのかもしれない……と淡い期待を抱いた。だが、何も知らない彼は、メイド姿のルチアに平然と言った。「そんな仕事の代わりに、破格の給料でぼくの世話をしないか?」
■アンジェロはコレッティ一族への復讐に邁進するあまり、ルチアの愛も彼女の悲しみも、目に入らないのでした。大好評を博している作家競作8部作〈華麗なるシチリア〉はいよいよ4話目。後半も注目作家のドラマティックなロマンスが続きます。どうぞお楽しみに!
抄録
ルチアはタオルを胸に押し当てたまま、一歩も動けなかった。あらゆる思考が水蒸気のように蒸発した。彼女は唇を湿してからようやく言った。「タオルをお持ちしました」
「タオル?」アンジェロは眉をひそめた。「頼んだ覚えはないが」
ルチアの頬が赤く染まった。「本当に頼んでいないの?」ということは、エミリアが間違えたか、わたしをだましたのだ。今ごろ彼女は、深夜にわたしがアンジェロと密会しているとか、くだらない作り話を同僚に吹聴しているのだろう。スキャンダルの怖さは身にしみて知っている。疑わしげに細めた目を見れば、彼も同じことを考えているに違いない。
アンジェロはルチアを見つめた。頬を赤く染めているが、目にはなんの感情も表れていない。昔はその真っ青な瞳に浮かぶ感情がはっきりと見えた。彼女はそれを隠そうとしなかったからだ。当時のぼくは当然のように受け止めていたが、子供のころの彼女はぼくのことを英雄のように崇拝していた。子供っぽい憧れだと思うが、今となっては懐かしい。せめて好意のかけらでも示してくれたら……。
だが、ルチアはまったくの無表情だった。あれは見ず知らずの他人に対する態度だ。怒りや憎悪ならまだわかるが、彼女の瞳にあるのは冷たい無関心だった。ぞっとするほど冷たい光。初対面のときのカルロ・コレッティの目にも同じ光が宿っていた。
“おまえはシーツの染みだ”と言わんばかりの光が。
ぼくの存在を無視するかのようなルチアの視線にも我慢がならない。
「タオルなど頼んでいない」これはぼくに会うための口実だろうかと疑いながら、アンジェロは繰り返した。だが、ルチアは心ここにあらずといった様子だった。
「聞き間違いのようね」ルチアはぎこちない声で言った。「失礼するわ」
ルチアはくるりと体の向きを変え、廊下を歩きだした。その瞬間、アンジェロは狂おしい衝動に駆られて前に出て、彼女の腕を取った。「待て」
ルチアは足を止めた。「アンジェロ、放して」低い声で言う。
彼女の脈が速いのを感じて、アンジェロの気持ちは晴れた。冷たい無関心の表情の裏で彼女は何かを感じている。ぼくと同じように。「何をやめるというんだ?」彼は手を離し、静かな口調で尋ねた。
「こんなことしないで」ルチアは答えた。「わたしたちは終わった。それでいいのよ」
「よくない」
ルチアはさっと振り向いた。彼女の瞳には困惑の色が浮かんでいる。「どうして? なぜあなたがわたしの気持ちを気にするの?」
「それは……」アンジェロは言いよどんだ。いらだちで声が大きくなるのが自分でもわかる。それは……きみのことを考えずにはいられないからだ。ようやく眠りに落ちても、きみの目と唇と柔肌が夢に出てくるからだ。どうすればきみのイメージを頭から追いだせるんだ?
ルチアは彼の顔にさっと目を走らせ、それから下を向いた。「もう行くわね」エレベーターのほうを向き、手を伸ばしてボタンを押す。
アンジェロは無我夢中で進み出て、彼女の手を取った。「待て」
ルチアは身動きができなかった。
無意識のうちにアンジェロは彼女の体をエレベーターの横の壁に押しつけていた。彼女のすらりとした体から燃えるような熱が伝わってくる。そして渇望も。二人のあいだに電気が走り、火花を散らした。七年前、アンジェロは彼女のとりこになった。そのときの引力を今も感じる。そして彼女も同じものを感じている。ぼくたちはまだ終わっていない。
アンジェロは頭を下げ、彼女の黒髪をかすめるように唇を近づけ、清潔な香りを吸いこんだ。「ルチア」呼びかけたとたん、彼女の体が緊張するのがわかった。
「放して、アンジェロ」
その声はかすれ、震えている。ルチアが何かを感じているのがわかり、アンジェロのなかで残酷な喜びがこみ上げた。もう一度唇でそっと髪に触れ、エレベーターのボタンを押そうとする手を引き寄せる。触れた瞬間、彼女の体に震えが走った。その明らかな反応に彼はぞくぞくするような興奮を覚えた。
指をからみ合わせたまま、もう片方の手を彼女の肩にかけて引き寄せる。ルチアはエレベーターのドアに背中をつけて、彼と向き合った。
アンジェロがさらに強く体を押しつけると、彼女の体が反応しているのがわかった。ゆっくりと彼の胸に倒れこんでくる。これがぼくの求めていたものだ。だから忘れられなかったのだ。
それなら、なぜこっそり逃げだしたんだ?
ルチアがうつむき、髪が流れ落ちて顔を覆う。アンジェロはその髪を耳にかけた。
「やめて」ルチアはそれだけ言うのがやっとだった。
「やめるって何を?」アンジェロはかすれた声で尋ねた。「手で触れるのを? それとも、手を離すのを?」彼はルチアの頬に指を滑らせ、親指でふっくらとした唇を愛撫した。彼女の体が再びわななく。彼も体の奥から興奮がわき上がるのを感じた。彼女の唇も髪も頬も、とろけるように柔らかい。「キスもだめなのか?」そうささやくなり唇を重ねる。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「タオル?」アンジェロは眉をひそめた。「頼んだ覚えはないが」
ルチアの頬が赤く染まった。「本当に頼んでいないの?」ということは、エミリアが間違えたか、わたしをだましたのだ。今ごろ彼女は、深夜にわたしがアンジェロと密会しているとか、くだらない作り話を同僚に吹聴しているのだろう。スキャンダルの怖さは身にしみて知っている。疑わしげに細めた目を見れば、彼も同じことを考えているに違いない。
アンジェロはルチアを見つめた。頬を赤く染めているが、目にはなんの感情も表れていない。昔はその真っ青な瞳に浮かぶ感情がはっきりと見えた。彼女はそれを隠そうとしなかったからだ。当時のぼくは当然のように受け止めていたが、子供のころの彼女はぼくのことを英雄のように崇拝していた。子供っぽい憧れだと思うが、今となっては懐かしい。せめて好意のかけらでも示してくれたら……。
だが、ルチアはまったくの無表情だった。あれは見ず知らずの他人に対する態度だ。怒りや憎悪ならまだわかるが、彼女の瞳にあるのは冷たい無関心だった。ぞっとするほど冷たい光。初対面のときのカルロ・コレッティの目にも同じ光が宿っていた。
“おまえはシーツの染みだ”と言わんばかりの光が。
ぼくの存在を無視するかのようなルチアの視線にも我慢がならない。
「タオルなど頼んでいない」これはぼくに会うための口実だろうかと疑いながら、アンジェロは繰り返した。だが、ルチアは心ここにあらずといった様子だった。
「聞き間違いのようね」ルチアはぎこちない声で言った。「失礼するわ」
ルチアはくるりと体の向きを変え、廊下を歩きだした。その瞬間、アンジェロは狂おしい衝動に駆られて前に出て、彼女の腕を取った。「待て」
ルチアは足を止めた。「アンジェロ、放して」低い声で言う。
彼女の脈が速いのを感じて、アンジェロの気持ちは晴れた。冷たい無関心の表情の裏で彼女は何かを感じている。ぼくと同じように。「何をやめるというんだ?」彼は手を離し、静かな口調で尋ねた。
「こんなことしないで」ルチアは答えた。「わたしたちは終わった。それでいいのよ」
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ルチアは身動きができなかった。
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本の情報
紙書籍初版: 2014/8/20
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>シンデレラ
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>愛の復活/運命の再会
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ラテン
小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
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