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はじまりはハプニング 恋人はドクター

はじまりはハプニング 恋人はドクター


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・リクエスト恋人はドクター
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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著者プロフィール

 キャシー・ディノスキー(Kathie DeNosky)
 ウォールデンブックスのベストセラーリストにもたびたび登場する人気作家。イリノイ州南部に夫と三人の子供たちと住む。ティーンエイジャーのころからロマンス小説を読んでいたが、自分で書き始めたのは、一番下の子供が学校に通い始めてからだという。作家になる以前は絵画教師をしていた。今では絵筆を鉛筆に持ち替え、物語を描くことが気に入っている。

解説

 これは激しい陣痛による幻覚症状に違いない。シカゴでも指折りの名医の彼が、どうしてここにいるの? 出産で診療所に運ばれたレキシーは、立ち会いの医師を見て驚いた。シカゴに住んでいたときの隣人で一度だけ夜をともにしたタイラーだ。あの夜レキシーはリストラで職を失い、故郷に戻ることになっていた。だが普段と違って憔悴したタイラーに会い、ディナーに誘われるとずっと彼に憧れを抱いていた彼女は街を去る感傷も手伝ってノーとは言えなかった。そして、そのまま愛をかわしてしまったのだ。翌朝幸せに満ちて目覚めたものの、彼が見せた冷たい態度に傷つき、レキシーはすべてを忘れて一人で生きていく決心をして帰郷した。それなのにタイラーが再び目の前に現れ、作り笑いを浮かべている。たった今、自らが取り上げた子があの夜の情熱の証とも知らずに……。

抄録

 居間に入ると、自分を欺いたレキシーを懲らしめるかのように、タイは突然彼女の唇を乱暴に奪った。だが彼女への恨みはたちまち欲望へと変化し、彼はその唇をそっと自分の唇でなぞった。
 レキシーの唇はふっくらとして温かく、タイの唇を求め、受け入れている。彼はじらすように舌を差し入れ、マシューを授かったあの夜と同じ甘いときめきに酔いしれた。
 腕に力をこめ、レキシーを強く抱きしめる。すいかずらと太陽の香りが鼻孔をくすぐった。あの晩、生まれて初めて味わった官能的な香りだ。豊かな胸のふくらみが彼の胸に押しつけられた。レキシーが柔らかな体をぴったりと寄せ、うめき声をもらす。タイの体がたちまち反応して固くなった。ジーンズが今にもはちきれそうになる。
 窮屈なその感触に、タイはようやくわれに返った。レキシーが欲しい。再会した日からずっとそう思っていた。だが、出産後間もない彼女を抱くことなどとてもできない。だいいち、二人の間には話しあわなければならないことがたくさんあるのだ。ききたいことも山ほどある。
 ありったけの意志の力をかき集め、タイは唇を離した。一歩あとずさり、レキシーへの衝動を抑えるために後ろを向いた。
「これ以上厄介なことにならないうちに話をしよう」とても平静とはいえない声で、タイは言った。
 レキシーはまるでゴム人形のようにぎこちない足取りでロッキングチェアのほうへ向かった。立ったままでいると、今にも倒れてしまいそうだ。
 あの晩、マンションの部屋で交わしたキスは激しい欲望をかきたてるものだった。だが、今日のキスはあのときとはまったく違う。まるで全身の力を吸い取られてしまったかのようだ。
 唇が触れあった瞬間、レキシーは二人の間に横たわる問題も、それらを解決することも、なにもかも忘れてしまった。ただひたすらタイに呼び覚まされた感情に身をゆだねていた。
 レキシーはロッキングチェアに座り、ソファーに腰を下ろすタイの姿を見つめた。タイは柔らかな革のソファーに頭をもたせかけ、レキシーをどんな言葉で問いつめようかと考えている様子だ。
 タイとしても、口にするのはつらいのだろう。だがレキシーの口からは案外すんなりと言葉が出た。「タイ、わたしはわざと妊娠したわけじゃないのよ」レキシーは勇気を奮って口を開いた。
 タイはかぶりを振った。「ぼくだってそんなことは思ってないさ」
「ここに帰ってきてから数週間して、妊娠していることがわかったの」
「そんなことだろうと思ったよ」タイはソファーから身を乗り出した。顎をぐっと引きしめた表情が、彼の心境を物語っている。「しかし、連絡ぐらいしてくれてもよかったじゃないか。ぼくには赤ん坊のことを知る権利がないと思っていたのか?」
「知らせようと思ったのよ」
「だったら、なぜそうしなかった?」彼はすっと立ち上がり、部屋の中をうろうろと歩き回った。
 レキシーはため息をついた。「タイ、わたしは自分の子供を産みたかったの」
「ぼくたちの子供だ。マシューはぼくの子でもあるんだぞ」
「ええ」
 難しい話しあいになることは承知だが、この何カ月もの間ずっと恐れていたことを口にするのはやはりためらいがある。膝の上で震える手をしっかりと握りあわせながら、レキシーは怒りを含んだタイの目をまっすぐに見つめた。「あなたに赤ん坊をおろせと言われるんじゃないかと思ったの」
 タイははっと息をのんだ。「なぜそんなことを?」
「そう考えるしかないでしょう? あの晩あなたは、子供を持つつもりはないとはっきり言ったじゃないの」
 タイは怒りが消えていくのを感じた。たしかに以前はそう思っていた。マシューのことを知らなければ、今でもそう考えていただろう。だが今、彼は息子の存在を知っている。その事実がすべてを変えたのだ。
 タイは首筋を手でさすった。「あのときと今では事情が違う」
 レキシーは立ち上がり、タイと向きあった。「マシューの存在を知ったから?」
「そうだ」
「タイ、あなたはなぜ子供が欲しくなかったの?」レキシーはタイの腕をつかんだ。「マシューに接しているときのあなたはとても子供好きに見えるのに」
 タイは答えなかった。今はまだ、彼女に打ち明ける勇気も、打ち明けたことで彼女のエメラルド色の瞳に嫌悪の色が浮かぶのを見る勇気もなかった。「ともかく、望むと望まざるとにかかわらずぼくは父親になった。なった以上は責任がある」タイはレキシーの肩に手を置き、彼女をじっと見下ろした。「レキシー、なぜぼくに嘘をついたんだ?」
「嘘なんてついていないわ」すらりとした体を震わせながらレキシーは訴えるように答えた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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