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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

フィアンセはレンタルで

フィアンセはレンタルで


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
 南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。

解説

 ヴィヴィアンは広告会社の経営に携わる二十五歳。最近、共同経営者の一人が別の広告会社に引き抜かれて、大口のクライアントを失い、会社は存亡の危機に瀕していた。会社を救うためには、大きな広告の契約を獲得しなければならない。そこへ舞いこんできたのが、クローヴァー社の広告の契約だ。ところが、クローヴァー社の社長レイトンは、ヴィヴィアンの体を眺めまわしたあげく、取り引きを持ちかける。自分のフィアンセとして実家のパーティに出て、群がる女性たちの盾になってくれれば、広告の契約を結ぼうと。ぶしつけな視線をそそぐレイトンに反感を覚えながらも、ヴィヴィアンは契約欲しさにその取り引きを受け入れる。レイトンがなにを企んでいるにしろ、自分の身は守れるはずよ。あっさり誘惑の罠にかかったりしないことをわからせてあげる!

抄録

 確かにそうだった。レイトンは、セント・ヘレナ島、マッド島、モートン島、ピールを指さして教えた。やがて飛行機はサーファーズ・パラダイスの上空を通過した。
 ヴィヴィアンはいくらかリラックスしてきた。完全にではないが、順調な飛行のおかげで、旋回しても膝をぎゅっとつかまなくなった。レイトンはニュー・サウス・ウェールズの海岸沿いにある町や川を指し示したり、計器類や飛行の基礎を説明したりした。数時間後、飛行機はホークスベリー川の上空を飛んでいた。そろそろハーヴェスト・ムーンの私設滑走路に着陸すると、レイトンが告げた。
 ヴィヴィアンはまた冷や汗が出てくるのを感じ、レイトンの説明に注意を向けられなくなった。だが、レイトンは羽のはばたきのように軽やかに飛行機を着陸させた。体からいっきに緊張が解け、力が抜けたせいで、ヴィヴィアンはレイトンに支えてもらわなければタラップを下りることができなかった。
 レイトンがヴィヴィアンの片手を握ったまま言った。「勇敢だったね、ヴィヴィアン」
 ヴィヴィアンの体を喜びが貫いたが、そのすぐあとで、いつもの吐き気が襲ってきた。
「レイトン、ごめんなさい」彼女はくぐもった声で言った。「吐きそうなの」
「大丈夫さ」レイトンはヴィヴィアンの体に腕をまわした。「深呼吸をして」
「だめよ、レイトン――」
「だめじゃない。さあ、息を吸って。君はもう地面の上にいるんだ。ほら、空気はこんなに新鮮で澄んでいる。そして、君は一人じゃないし、僕は君につくづく感心している。さあ、もう一度息を吸って」
 穏やかで自信に満ちたレイトンの話し方を聞いていると、意外なほど気持ちが落ち着いた。それだけでなく、こうして腕をまわされていると、安心できた。父親を亡くしてから、こんなふうに守られているという感覚を抱いたことは一度もなかった。深呼吸を繰り返しているうちに、吐き気がおさまってきた。
 レイトンの腕の中にいると、自分が女だということがいやになるほど意識される。いや、正直に言えば、体がうずきだしていた。
 レイトンの視線が唇から首へ、さらに胸へと移るのがわかった。自分が彼を引きつけているかもしれないという思いに、ヴィヴィアンは胸をはずませた。こんなふうに感じた男性は彼が初めてなのだから、今なら、これまでできなかったこともできるかもしれない。
 ヴィヴィアンの心をよぎったその考えをレイトンが読み取ったのがわかった次の瞬間、彼がその“できなかったこと”をした。あるいは、彼女の体がせがむように小刻みに震えはじめたからかもしれない。だが、ヴィヴィアンにはわかっていた。彼がキスをすることも、自分がそれを拒まないことも。
 数分後、レイトンの腕の中で身を震わせながら、ヴィヴィアンは額を彼の肩に押し当てた。レイトンが指で髪をすき、自分を抱き寄せるのを感じつつ、ゆっくりと息をする。目を上げて彼の顔を見る勇気をふるい起こしたとき、声がした。
「失礼」
 レイトンの腕にしっかりと抱かれていなかったら、驚いて飛びあがるところだった。レイトンはヴィヴィアンにまわしていた腕をゆっくりとほどいて振り向いた。
 ダークブラウンの髪をポニーテールにして、片耳に銀のピアスをつけた背の高い青年が、ランドローヴァーのボンネットに寄りかかっていた。ヴィヴィアンは顔を赤らめた。車の音も耳に入らなかったのだ。
 グレーの瞳のその青年は、背筋を伸ばして彼女にお辞儀をした。「すみません。飛行機が着陸するころ迎えに行くようにと言われていたので」
「ありがとう、ラルフ」レイトンがヴィヴィアンの手を放さずに言った。「紹介しよう、フィアンセのヴィヴィアンだ」
「なんだって?」ラルフが唖然としてきき返した。
「聞こえたはずだ」レイトンは言った。「ヴィヴィアン、弟のラルフだ。昨日ちらっと話しただろう」
「え、ええ」ヴィヴィアンはそれしか言えなかった。一つには、昨夜、自分が言った“ラテン系の男性”にラルフがあまりにもぴったりと当てはまったからだ。もう一つには、どうして彼がレイトンの紹介を聞いてこれほど仰天しているのかわからなかったからだ。
 そして、なによりも、どうして自分がランドローヴァーの音が聞こえないほど我を忘れていたのかわからなかったからだ。レイトンも同じように、車の音が聞こえなかったのだろうか?
「荷物を運ぶから手伝ってくれ」レイトンが言った。
 ぽかんと口を開けていたラルフが、ようやく我に返った。「いいとも。だが、その前に言わせてくれ。すてきな名前だ、ヴィヴィアン! 君のすべてが気に入ったよ!」ラルフは少年のような無邪気な笑みを浮かべて手を差し伸べた。「ハーヴェスト・ムーンにようこそ! すばらしい一週間になりそうだ」
 ヴィヴィアンはラルフの手を握り、弱々しくほほえんだ。「ありがとう。とても……すてきなところね」だが、周囲を見まわすと、見るべきものはあまりなかった。コンクリートの滑走路に小さな格納庫、それに原生林しかない。
「なにを考えているかわかるよ」ラルフがウインクした。「家は一キロ以上先なんだ」
「昼食の用意はできているんだろうな」レイトンがどこか冷たさの感じられる声で言った。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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