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危険な駆け引き

危険な駆け引き


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンダ・ハワード(Linda Howard)
 数々の受賞歴を誇る、世界中で大人気の作家。栄えあるNYタイムズやUSAトゥデイのベストセラーリストにもしばしば顔を出す。読むにしろ書くにしろ、本は彼女の人生において重要な役割を果たしているという。読み始めはマーガレット・ミッチェルの作品。それ以後、広く読書に熱中するようになった。少女のころから書くことが好きだったリンダの作家デビューは三十歳のとき。現在はアメリカの作家大会や授賞式の席に常連の人気作家で、サイン会にもひっぱりだこである。とりわけ、彼女の描くヒーローが魅力的だというファンが多い。現在、生まれ故郷のアラバマ州に夫とともに住んでいる。

解説

 「その男をとめて!」混雑したロビーでサニーは叫んだ。搭乗便の出発のめどが立たないうえに、今日中に届ける約束の書類をひったくられるとは。すると前方で、長身の男が犯人を取り押さえた。その恩人との出会いはサニーにさらなる幸運をもたらす。チャーター機のパイロットだという彼が、目的地まで乗せてくれると言うのだ。思わずサニーはチャンスと名乗る男の厚意に飛びついた――すべては仕組まれたシナリオどおりだとも知らずに。ファンの熱烈なリクエストによって誕生したチャンス・マッケンジーの物語、伝説のロマンス。

抄録

  あっという間のできごとだった。気がつくと地面がすぐそこにあった。着陸の激しい衝撃でふたりの上体はいったん前方に投げだされ、そして後ろへもどった。車輪が弾んでもう一度かすかに機体が浮き、そしてさらに激しく着地する。金属が悲鳴のような音をあげたと思うと、頭が窓にぶつかって、一瞬目と耳がふさがれたようになった。感じるのは跳ねるような機体の動きだけだ。サニーは全身の力が抜け、乾燥機のなかの洗濯物のようになす術もなく揺られていた。
 次に、歯ぎしりするほどの最大の衝撃が起きた。機体は吐き気を催させるような動きで斜めに傾いて回転し、よろよろと止まった。時と場所の観念がすべてばらばらになり、しばらくは何がなんだかわからなかった。
 どこからか声が聞こえる。
「サニー? サニー、だいじょうぶかい?」チャンスが必死に呼びかけている。
 しっかりするのよ、とサニーは自分に言い聞かせた。ぼんやりした頭で周囲を見まわすと、着陸の衝撃で体が回転し、ドアのほうを向いていることに気づいた。後ろから伸びてきたチャンスの手がシートベルトをはずし、サニーの上体を受けとめて胸で支えてくれる。
 サニーはようやく声を絞りだした。「だいじょうぶよ」かすれた声しか出ないが、声が出るというのは生きているしるしだ。ふたりとも死なずにすんだ。胸のなかで喜びが大きくふくれあがった。着陸に成功したのだ!
「すぐに避難したほうがいい。燃料が漏れている可能性がある」チャンスはそう言いながらドアをあけて外に飛び降りると、サニーを小麦粉の袋か何かのように引きずりだした。
 エンジンは着陸する前にすでに停止していたが、バッテリーや配線がショートする恐れがある。漏れた燃料に火花が飛んだら、機体も何もかも火の玉となって燃えあがるのは必至だ。
 何もかも……。缶に入れたビー玉のように、その言葉が頭のなかでがらがらと音をたてた。大変だ。バッグはまだ機内にあるのだ。
「待って!」思わず叫んでいた。恐怖によって急激に増加したアドレナリンが体じゅうを駆けめぐり、骨や筋肉に力を与えたらしい。彼女は身をよじってドアの取っ手にしがみついた。「わたしのバッグ!」
「サニー、やめるんだ!」チャンスは取っ手にかけた彼女の手をもぎとろうとした。「バッグはあきらめろ!」
「いやよ!」
 サニーはその手を振りきって機内にもどろうとした。チャンスは小声で悪態をつくと、彼女のウエストをつかんで体ごと持ちあげ、飛行機から離れた場所に下ろした。「バッグは僕がとってくる! きみは早くここから離れるんだ。走れ!」
 わが身の危険をかえりみずにこちらの身の安全を気遣ってくれるチャンスの思いやりに、サニーは唖然とした。「わたしがとってくるから、あなたは早く逃げて!」ズボンのベルトに手をかけて引きもどそうとする。
 ほんの一瞬、チャンスは文字どおり凍りついて、サニーを茫然と見ていた。それから小さく首を振ると、手を伸ばしてバッグをとりだし、やすやすと持ちあげた。当然のようにバッグを受けとろうとしたサニーを、火の出るような目つきで睨みつける。左手でバッグを持ち、右手でサニーの腕をつかむと、機体から遠ざかるように走りはじめた。サニーは砂にヒールをとられ、低木に足首をこすられながらも、なんとか遅れずに走り続けた。
 五十メートルほど行ったところで、チャンスが足をとめた。バッグを下ろすと、獲物に飛びかかる寸前の豹のような目でサニーを睨みつけ、左右の腕を乱暴につかむ。「いったいどういうつもりだ!」すさまじい剣幕でどなりはじめたが、彼女の顔に目をとめるとふっと口をつぐんだ。表情が変化し、瞳の色が深みを帯びる。
「血が出てるじゃないか」ポケットからハンカチをとりだして、サニーのあごにあてた。厳しい口調にもかかわらず、手つきは信じられないくらいやさしかった。「怪我はしていないと言ったのに」
「していないわ」サニーは震える手でハンカチを受けとると、あごと口に押しあてた。たいした傷ではないし、すでに出血はとまっている。「着陸する前、唇を噛んでいたの。悲鳴をあげないように」
 チャンスは硬い表情でサニーの顔を見つめた。「無理に我慢しないで悲鳴をあげればいいのに」
「あなたの邪魔をしたくなかったのよ」サニーの体の震えは刻々とひどくなっていく。まっすぐ立っていようと思うのだが、手足にまるで力が入らない。
 深まりゆく黄昏のなか、チャンスは彼女の顔を上に向けてしばらく見つめていた。小声で何かつぶやいたあと、ゆっくりと顔を近づけて唇にキスをした。乱暴な印象とは似合わない、挨拶のような軽いキスだった。サニーは息をとめて、柔らかい唇の感触と、温かい肌のにおいを味わった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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