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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

ほどけた絆

ほどけた絆


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 シャーリー・ロジャーズ(Shirley Rogers)
 バージニア州のタイドウォーター地区で生まれ育ち、今もそこで夫と二匹の猫と、かわいいマルチーズ犬とともに暮らす。子供のころは想像力が豊かなことで有名だった。ロマンス小説を読むようになってはじめてそれを書くことが自分の運命だと気づく。成人した息子と娘がおり、余暇には読書や旅行、映画鑑賞、娘とのショッピングを楽しむ。

解説

 あれほどひどく傷つけられたのに、彼を見ると、いまだに胸が震えてしまう。

 ■大学時代、キャサリンは最愛の恋人ジェイクとけんか別れをした。直後に妊娠が発覚し、彼女はジェイクに連絡を試みたが、そんな女性は知らない、とすげなく拒絶された。“いくらジェイクの愛を望んでも彼にとって私はもう過去の人間なのだ”そう悟ったキャサリンは、ジェイクには何も告げず、一人で子供を育てよう、と心に決めた。世間体を気にする両親に見放され、頼る人もなかったが、キャサリンは必死に働き、ようやく安定した生活を手に入れた。そんな矢先、ジェイクの存在を知った息子が父親に会いたい一心で彼の元へと家出してしまった。私を見捨てたジェイクが、今さら息子を受け入れるはずがない。なんとかしてあの子を連れ戻さなければ……。

抄録

 キッチンへ戻ると、ライダーがアシュリーとリンと一緒にテーブルに皿を並べていた。マシューまでが手伝っている。母親の方を見向きもしない息子の態度に、キャサリンは深く傷ついた。
 食卓では和やかな会話が進んでいたが、キャサリンはできるだけジェイクと目を合わせないようにしていた。マシューは余計なことは一言も言わず、何か尋ねられたときしか口を開かなかった。食事がすむと、全員がそれぞれ自分の皿をキッチンへ運んだ。あとは汚れたお皿を皿洗い機に放りこむだけだから一人でじゅうぶんよ、とリンが言い、みんなを追い払った。ライダーとマシューはテレビを見に行き、アシュリーは今日はゆっくりおふろにつからせてもらうわ、と言って部屋を出ていった。
 結局、ジェイクとキャサリンは二人きりになり、話の続きをすることになった。キャサリンは昼間と同じ事務室へと促された。ジェイクが扉をぴたりと閉めた。
 ジェイクはソファーに座り、キャサリンが腰を下ろすのを待った。驚いたことに、彼女は一人掛けの椅子ではなくジェイクの隣に腰かけた。両手をしっかりと組み合わせ、まるでピストルで脅された被害者のように緊張している。
「楽にしてくれ」ジェイクは上体をかがめ、キャサリンの方へほんの少し体をずらした。「襲いかかったりしないから」
 つまらない冗談だ。キャサリンの気持ちをほぐそうと気を使ったつもりだったのだが。妙な下心がないことを示しておけば、少しは心を開いてくれるかと思ったのだ。
「昼間の話の蒸し返しはお断りよ」キャサリンが話の口火を切った。「お互い、昔のことについては考え方が違っているようだから」
 その言葉で、ジェイクの胸にキャサリンと愛し合った思い出がよみがえってきた。楽しかった日々がまるで昨日のことのように思い出される。体が自然に反応し、ジェイクはソファーの中でかすかに身じろぎをした。今は思い出に浸っている場合ではないのに。
「確かに、そうだな」ジェイクはうなずいた。とはいえ、キャサリンの話にはまだ釈然としない部分が残っているが。
「それに、過去のことをいくら話し合ってもマシューの問題は解決しないわ」キャサリンは言った。
「もっともだ」過去をすべて水に流す気にはなれない。キャサリンがマットの存在を隠していたことに、ジェイクはまだこだわっていた。だが、今最も考えなければならないのは何がマットにとって一番いいか、ということだ。
 キャサリンは深くため息をつき、ジェイクを見つめた。「ジェイク、お願いだからわかってちょうだい」懇願するような口調で彼女は言った。「マシューは家へ連れて帰って、今までどおりの生活をするのが一番いいのよ」
「おれはそうは思わないよ」ジェイクはソファーの背に片腕をのせた。「それはきみの勝手な都合だ。きみはマットやおれの気持ちなどこれっぽっちも考えていないんだ」
 キャサリンが舌で唇を嘗め、その舌の動きをジェイクはじっと見つめた。彼女にキスをし、肌に触れたときの記憶がよみがえる。この唇は今もあのころと同じ味がするのだろうか――確かめてみたいという衝動が不意にわき起こってきた。
「マシューに二度と会わないでと言っているんじゃないの。ただ、この牧場は自分の家だ、などという錯覚をあの子に植えつけたくないのよ」
「ここはマットの家だよ。マットはおれの息子だ。つまり、この家の家族なんだ。彼だってこの牧場の後継者の一人なんだ」ジェイクは腰を浮かせ、キャサリンの方へにじり寄った。「問題は、おれには息子がいたのに今までそのことをまったく知らなかったということさ。おれとマットには、互いに父子の絆を深める時間が必要なんだ。いくらきみでも、そこまで否定するつもりはないだろう?」
「もちろん、ないわ」キャサリンはきっぱりと答えた。
「だとしたら、ここほど理想的な場所はないじゃないか」ジェイクは鋭い視線をキャサリンに向けた。
 しばらくの間、重苦しい沈黙が流れた。やがてジェイクは自分の考えをようやく口にした。
「マットを夏の間、ここに置いておきたい」
「夏の間ですって?」キャサリンは唖然とした顔つきになった。
「学校は休みだし、夏の間だけここにいたってなんの問題もないじゃないか。そうすればあの子は二度と家出なんてばかなことを考えないだろうし」
「だめよ」ジェイクの提案を聞くと、キャサリンは言った。「とんでもないわ。マシューを夏じゅうここに置いておくなんて。お断りします」
 ジェイクは歯ぎしりをし、胸に燃えさかる怒りの炎を懸命に鎮めようとした。彼はなおも食い下がった。「ケイティ、考えてもごらん」いつの間にか昔の愛称で呼びかけていた。「マットはきみと一緒に帰りたくないと言っているんだ。だったらうちに置いても構わないじゃないか」
 キャサリンは取り乱し、目に涙をあふれさせた。
「ああ、ジェイク」あえぎながら唇を噛みしめる。
 ジェイクはとっさにキャサリンの手を取り、両手で包みこむと親指で優しくさすった。「なんだい?」
 マットのことなどすっかり忘れ、ジェイクはキャサリンの顔をのぞきこんだ。ほんの一瞬、彼女を抱きしめたいという衝動にかられた。かぶりを振り、あらぬ欲望を必死で追い払う。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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