マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

沈黙

沈黙


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


解説

 医師が自宅のガレージで燃料をかぶり、自らの体に火を放った―アヴェリーは愛する父の自殺のニュースに打ちひしがれた。もっと話を聞いてあげていれば……。罪悪感とともに帰郷した彼女は、謎めいた女からの脅迫電話を機に真相を探り始めた。そして、町を恐怖で牛耳る秘密組織の存在を知る。父は彼らに殺されたのでは? 黒幕の正体を暴こうとしたとき、アヴェリーの命運はすでに尽きかけていた。全米ベストセラー作家のノンストップ・スリラー。

抄録

「誰が怖じ気づくもんですか」アヴェリーは虚勢を張った。「ただ、サム爺さんのショットガンが心配なだけよ」ティラー農場には木に囲まれた湧き水の泉があり、町の若者たちの楽園になっていた。ただし、サム・ティラーはその事実を喜んではいなかった。
 彼は若者たちに向けてショットガンをぶっ放し、たびたび警察の厄介になった。威嚇射撃であろうと、相手が不法侵入者であろうと、バディは容赦しなかった。人に向けて発砲するのは違法行為なのだから。
「その点は大丈夫。前に彼の法律問題を処理したことがあってね。俺とサラはいつでも出入り自由なんだ。裸で泳ごうがおとがめなしさ」
 アヴェリーは素知らぬ顔で聞き流したが、ハンターが昔のことを当てこすったのは明らかだった。十数年前の八月の暑い夜、二人は実際に裸で泳いだことがあった。ハンターは絶対に見ないと約束した。彼女はハンターの言葉を信用した。
 しかし、その約束は守られなかった。
「覚悟はいいか?」
 アヴェリーは腹をくくった。「もちろん」
 体を温めるためにも、二人と一匹はゆったりとしたペースで出発した。アヴェリーも最初は難なくついていくことができた。しかし、ハンターがペースを抑えてくれたにもかかわらず、彼女はじきについていくのがやっとの状態になった。
 一キロほど走ると、息が上がりはじめた。全身から汗が噴き出してきた。濡れた肌にジーンズとコットンのブラウスが張りつき、彼女の動きの邪魔をした。
 今ここでショートパンツとスポーツブラをくれる人がいたら、全財産をあげるのに。アヴェリーは恨めしげに考えた。走りつづけながら、ブラウスの裾をジーンズから引っ張り出し、ボタンを外した袖をまくり上げた。
 ハンターが視線を投げてよこした。「もうばてたのか?」
「平気よ」アヴェリーは息も絶え絶えに答えた。自分の強情さに腹が立った。すっかりなまってしまった体が情けなかった。以前は毎日ジョギングをしていたが、ここ数カ月は週に一度くらいしか運動していなかったのだ。運動不足に加えて、ハンターとの歩幅の差というハンデもある。これではまるで拷問だった。
 それでも中間地点に到達する頃には、エンドルフィンの作用で多少は楽になっていた。ハンターのペースが上がった。アヴェリーは無理に追いつこうとはしなかった。肺と心臓と筋肉の動きを協調させながら、戸外で過ごす喜びに浸った。
「池で落ち合おう」ハンターが肩ごしに叫んだ。
 アヴェリーはうなずき、遠ざかる彼の背中を見送った。
 ようやく池にたどり着くと、ハンターが待っていた。サラは彼の横で荒い息をしている。どうやら、五、六分前には到着していたようだった。
 ハンターは彼女に水のボトルを手渡した。「すっかり忘れていたよ」
「何を?」アヴェリーはボトルを受け取り、一息に飲んだ。
「君が意志強固な人間だってことを」
 水をもう一口飲んでから、彼女はボトルを返した。「要するに強情っぱりだって言いたいんでしょう」
「ときにはね」ハンターはにやりと笑った。「俺は強情も長所のうちだと思うが」
 サラが立ち上がり、のんびりとした足取りで池に近づいた。水に浸かって喉を潤す犬を、アヴェリーはうらやましげに眺めた。池の水は見るからにおいしそうだった。
「行けよ」ハンターが言った。「ひと泳ぎしてこい。ここの水は湧き水だ」
「ばか言わないで、スティーヴンス」
「誰も裸で泳げとは言ってないのに。ミズ・ショーヴァンは汚れた心の持ち主だな」
「心が汚れているのは私じゃないと思うけど」アヴェリーは立ち上がり、水辺に歩み寄った。岸にひざまずき、顔に水をかけた。垂れ落ちる水がブラウスを濡らした。
 彼女は濡れて透けた生地を見下ろした。これじゃ慎みも何もあったもんじゃないわ。だったら、いっそのこと。彼女は覚悟を決め、張りつくブラウスのボタンを外しはじめた。
「こっちを見ないでよ」肩ごしに視線を投げて、アヴェリーは命令した。
 ハンターは地面に肘をついて、体を斜めに倒した。「それは何を見逃すかによるな」
「ハンター」にやにや笑う彼をにらみつけて、アヴェリーは警告した。
「わかった。のぞきはしない。誓って断言する」
 ハンターが顔を背けたのを見届けてから、彼女はブラウスを脱いだ。
「いい眺めだ」
 アヴェリーは濡れたブラウスを胸に当て、きっとして振り返った。「見たわね」
「そりゃあ、見るさ」ハンターは笑った。「本能的行動は止められない。猟犬が狩りをするのと同じだ」
「むしろ、蛇が噛みつくのと同じね」
 ハンターは仰向けになった。頭の下で両手を組み、青い空を見上げた。「この程度で騒ぐなよ。そんなブラより水着のほうがよっぽど露出度が高いだろう」
 確かにそうね。納得したアヴェリーはブラウスを水に浸し、濡れそぼった状態のまま肩に羽織った。冷たい水滴が肌を伝い、肩から胸にかけて鳥肌が立った。
 彼女はハンターが休んでいる場所へ引き返した。今度はハンターも彼女に目を向けなかった。
「俺に話っていうのは?」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。