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隠遁公爵、愛に泣く

隠遁公爵、愛に泣く


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 キャンディス・キャンプ(Candace Camp)
 新聞社に勤める両親のもとに生まれ、10歳で始めたというお話作りはキャンディスにとってリラックスの手段だった。シャイで話し下手だった彼女は文章にすると自分の考えや思いを素直に表すことができた。

解説

 クレイボーン公爵リチャードはついに、命を絶つ決心をした。4年前に悲惨な事故で妻子を失って以来、部屋に籠もって息をするだけの毎日だった。称号も財産も、もはや意味などない。生まれ育った城で死のう。そんな決意を胸に帰郷した彼のもとへ、ある夜更けのこと、何者かが訪ねてくる。誰にも会う気はないと門前払いを食らわそうとするも、訪問者は使用人の制止を振りきって城内に入り、叫び始めた。「公爵はどちらにいらっしゃるの?」たまらずリチャードが廊下に飛びだすと、そこには赤い髪の美しきレディが佇んでいて……。

抄録

「みんなはどこ?」ジェシカは尋ねた。「ガブリエラはどこにいるの?」
「熱いココアを飲めば少しは落ち着くだろうと、レイチェルがキッチンに連れていったよ。召使いに城のまわりを調べさせている。侵入者がどこから入ってどこから出たのか、突きとめるために。もっとも、そいつが外から来た場合の話だが」
「外から忍びこんだのかしら? それとも、なかにいる人間?」
「つまり、ヴェイジーだったか、ということか? さあ。彼の部屋に召使いをやったよ。表向きは無事を確認するためにね。しかし、あいつが部屋にいたとしても、ここにいたのがヴェイジーではないという証拠にはならない。ここから逃げだし、自分の部屋に戻って、召使いに起こされるまで眠っていたふりをするのは簡単だ。きみは侵入者と争った。ヴェイジーだったと思うかい?」
「わからないわ。そうだったかもしれない。わたしより上背があったけど、あなたほどではなかった。ヴェイジー卿と同じくらいの身長だったかもしれないわね。でも、顔は見えなかったの。暗くて、それに何かで顔を隠していたから」ジェシカはぶるっと震えた。「顔があるところに何もなくて、小さな穴から目がのぞいているだけだったの。それがいちばん怖かったわ」
 リチャードが前に進みでた。「気の毒に。城に滞在している最中にきみにこんなことが起こったのは、ぼくの落ち度だ。弁明の余地がない」彼は険しい顔になった。「もしもヴェイジーのしわざなら、必ず後悔させてやる。約束するよ。侵入者が誰にしろ、必ず後悔させてやる」
 彼は足を止め、ジェシカを見おろした。そして頬に触れるかのように片手をあげ、はっとしたようにそれを脇におろした。
「大丈夫かい? そいつに何もされなかった?」
「ええ。危害を加えたのはわたしのほうよ」
 彼の唇にかすかな笑みが浮かんだ。「そう聞いても、少しも驚かないな。もしヴェイジーが犯人なら、きみの不興を買ったらどうなるかわかっていそうなものなのに」
 ジェシカの青い瞳は大きく、白い肌はランプのほのかな明かりにさえきらめいて見える。リチャードは肩の下に落ちているあざやかな赤い巻き毛を見つめた。そこに手をうずめたくてたまらない。シルクのようになめらかなその髪は、きっと柔らかく指に絡みついてくるのだろう。
 リチャードはどうにか赤い髪から目をそらした。「念のために、きみたちの部屋を調べておこう」
 彼はガブリエラの部屋に行き、なかをのぞいた。それからきびすを返し、勉強部屋を横切って、ジェシカの部屋のドアを開けてなかに入る。彼女もあとについてきた。
 ジェシカの部屋は小さく殺風景で、狭いベッドと小さなチェスト、固い椅子があるだけだった。家庭教師の部屋は、こんなに狭くて質素だったろうか? リチャードはジェシカがこんな部屋に住まねばならないことに怒りを覚えた。彼女がここで寝起きしているのは自分のせいだと思うと、よけい胸が痛んだ。
「明日になったら召使いに言って、きみたちふたりには、もっとぼくの寝室に近い部屋を用意させよう」リチャードは唐突に言葉を切り、急いで付け加えた。「そのほうが安全だからね。子供部屋はほかの部屋からかなり離れていて危険だ。そもそも、きみたちにこの部屋をあてがった理由がわからないよ」
 おそらく、あなたからできるだけ遠くに置きたかったからでしょうね。ジェシカはそう思ったが、口にするのは控えた。
「今夜はこれ以上何も起こらないように、子供部屋のドアの前に召使いをひとりつけておく」彼は続けた。
「ご親切に感謝します」
「ぼくはきみが思うほどひどい男じゃないんだ」一瞬、ためらいがあった。「ぼくは――」
 リチャードはジェシカに向かって手をさしのべた。今度は、まるで勝手に動いたかのように、彼の手は赤い髪に触れた。思ったとおり柔らかい髪だ。その感触に、リチャードの体は即座に反応した。なんとか意味のある思いをまとめようとしながら、ごくりとつばをのんだ。この女性のいったい何がこんなに欲望をかきたてるのか、さっぱりわからない。だがどんな状況のもとでも、ジェシカは彼から思考能力を奪い、彼を糖蜜のように甘い感情と感覚で絡めとってしまう。
 ジェシカはかすかな驚きを浮かべ、大きな青い目でリチャードを見つめた。柔らかそうなピンク色の唇が少し開いている。リチャードはその唇を見つめるうちに、不意にキスしたくてたまらなくなった。彼女の唇を味わい、彼女の体に触れることを思うと、体内で欲望がふくらみ、硬くなって激しくうずく。リチャードは目をそらそうとした。シルクのような巻き毛から手を離し、あとずさろうとした。だが、その代わりに身をのりだし、赤い髪をつかんで彼女の唇を奪っていた。
 ふっくらした唇に自身の唇が触れる寸前、リチャードはジェシカが小さく息をのむのを感じ、立ちのぼるラベンダーの甘い香りを吸いこんだ。罪悪感と、下腹部でうごめく鋭い欲望に引き裂かれ、彼はかすかに身を震わせた。しかし、ピンク色の唇にかすめるように触れたとたん、飢えがほかのすべてを凌駕した。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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