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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ スペシャル

面影を求めて

面影を求めて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツスペシャル
価格:300pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 作家になる前は高校で英語と世界史を教えていた。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともに米アラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』はヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。

解説

 十七のときエマはすてきな男性と出会い心を奪われたが、彼に二度と会うことはなかった。それから十二年後、未亡人となったエマは継子ジョージーナの縁談のためにグレイストン伯爵家を訪れる。伯爵の弟が娘の相手なのだ。だが当主の伯爵はどういうわけか人前に姿を現さず、塔にこもって暮らしている。その伯爵こそ、昔エマが恋したアレックスだった。

抄録

「男の人は決まりやしきたりに従う必要がないと思っていたわ」
「じゃあ、いったいどうして、彼らは財産目当ての女性と喜んで結婚すると思う?」男性はからかうようにエマに笑いかけた。
「わからないわ。親密な関係を持ちたいから?」エマはおずおずと言ってみた。
「そういうものは彼らの愛……ほかの知り合いで間に合っているよ」男性は慎重にことばを選んだ。
 わたしはこの人が考えているほどやぼではないわ。パパには愛人がいたし、それでもママはずっとパパの人生で必要とされ、尊重される立場にいたもの。
「じゃあ、家庭を守るため」エマは自分の母親の数えきれないほどの役割を思った。「一家の切り盛りをきちんとするとか」
「それに、子どもを作るためさ。申し分のない血筋を持った、それにふさわしい子どもたちをね」
「どういうこと?」凍るような寒さなのに、エマは頬が熱くなるのを感じ、暗闇が隠してくれることを祈った。そうでないと、わたしが実はうぶだと、彼にばれてしまう。
「きみを赤面させてしまったね」エマの願いもむなしく、男性にはお見通しのようだ。「すまなかった。今夜はロマンティックな冒険のための夜だということを忘れていた」
「子どものことはロマンティックではないの?」
「まるっきり。子どもは必然的結果で、爵位や財産の継承者だよ」
「あなたは、そういうことにあきあきしているようね」
「そのとおり。それに、そうではないきみに魅力を感じるよ」
 エマはいっそう顔を赤らめたが、反論はしなかった。
「あれも、きみの最後のすばらしい冒険に含まれるのかい?」男性は手袋をはめた手で手すりの向こうの景色を示した。
 エマは男性の手の先を目で追い、もう一度、雪に覆われた地面と、星のまたたくベルベットの空を見た。彼が現れるまで、エマはこの光景にとても満足していた。それがいま、彼の目を通して見ると、エマの挑戦はあまりにも平凡でつまらないものに思われた。
「これだけで充分かもしれないわ。少なくとも、空気は澄んでいるし、夜空だって――」
 エマは男性のほうを向き、彼がさらに近づいているのに気づいた。なんと、こちらに体を傾けているではないか。エマが抗議しようとすると、男性は唇を曲げた。その表情にエマは男性的な魅力を感じた。
 またしてもエマの心臓は飛び跳ねた。そして、彼の唇が自分の唇に近づくにつれ、胸の鼓動が激しくなってきた。男性の胸を押しのけるとか、助けを呼ぶとか、抵抗すべきだということはわかっていたが、エマはそのどちらもしなかった。彼女はただ男性の唇が下りてくるのを待った。
 エマの冷たい唇に、温かい唇が触れた。経験を積んだ、確かなキスだった。受け入れられることをまるで疑っていない。
 エマも相手を失望させなかった。彼女は口を開き、たぶん、驚いたからだろうが、ともかく口を開き、男性の舌を受け入れた。
 エマだって、キスをしたのはこれがはじめてではない。ともかく、この一年ほどは気楽に集まりなどに出かけていたのだ。カントリーダンスの集まりもしばしばあった。地元の富豪の紳士だってたくさんいた。
 そのなかのだれも、いまのようなキスをしてくれたことはない。エマは息をつまらせ、膝の力を奪われて、さらにぴったりと相手に体を寄せてしまった。
 たぶん、彼はそれを挑発と受けとったのだろう。エマのウエストに腕をまわし、彼女をさらに強く、たくましい体に引き寄せた。
 エマは抵抗しなかった。男性の舌は探求を続け、エマの感覚を麻痺させる。エマは手を上げたが、彼を押しのけるどころか、その手をマントの暖かさのなかに滑り込ませ、男性の広い胸に置いた。
 永遠に続くように思われたキスを先に終わらせたのは、男性のほうだった。彼は頭を上げた。エマを見下ろす青い瞳が月の光を映して輝いている。その瞳にはもはや、からかうような笑みはなかった。
「きみの名前は?」男性はやさしくきいた。そして、手袋をはめた手で、エマの頬にかかる湿った髪をそっと払いのけだ。
「エマ。エマ・ターメン」
「くじけたらだめだよ、エマ。しきたりに反抗するというのはよいことなのだから。秘訣はいつ反抗して、いつ反抗しないかを知ることだよ」
 エマは納得したようにうなずいた。その目はあたかも催眠術にかけられたかのように、男性の強烈な瞳にくぎづけになっていた。
「その区別をぼく自身も学ぶべきだったのかもしれない」男性は、まるでダンスが終わったときのように、エマを離して後ろへ下がった。
 男性の温かい腕を離れると、夜気が前にも増して冷たく感じられた。
「あなたもロンドンへいらっしゃるの?」
 激しく動揺していたエマには、見せかけのプライドなど保つ余裕もなかった。もう一度彼に会えるかどうかを、どうしても知りたかったのだ。
 たとえ彼が、自分で言ったように“格好の結婚相手”でないとしても、反抗するよう励ましてくれたのだ。もしも機会があれば。いえ、機会はきっとあるにきまっているわ。
「生まれてはじめて、そうできたらと心から思うよ」
「でも――」
「きみの獲得する富がきみを幸福にするのに充分かどうか、よく確かめるんだよ、かわいいエマ」
 男性はさらに一歩下がって、ふたりの間の距離を広げた。エマは思わず彼の腕に手をのせた。その手は、上等なウールの濃紺の上着の上でひどく青白く見えた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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