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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス

妻の役割

妻の役割


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
 南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。

解説

 五年前、ステファニーは弟の危機を救うため富も権力も合わせ持つドミニクと愛のない結婚をした。だが、今は冷酷な夫と別れ、絵を描いて暮らしている。そんな彼女のもとに、ある日ドミニクから呼び出しの電話がかかる。「きみが条件さえのめば正式に離婚してもよい」と。取り引きに応じた彼女は、夫とともに出かけたハミルトン島で仲むつまじい夫婦を演じることになった。こんなに心が離れているのに……。でも、あとは私の演技力しだい。これさえ終われば、晴れて自由の身になれる。

抄録

 だが二人で部屋に戻ると、ドミニクは柔らかな声音で言った。「ブラボー」帽子をベッドの上においたステファニーに近づいて言う。「すばらしい出来だったよ、ミセス・レイバン。きみの演技力を祝福させてくれるかい?」
「わたし……」ステファニーは抱きよせられ、彼がどういう種類の祝福を考えているかに気づいて言葉を切った。「やめて、お願い」しわがれ声で言うが、彼のひんやりした裸の胸に抱きすくめられると唇が震えてしまう。「ドミニク……」もう一度言ってドミニクを押しのけようとしたけれど、彼はびくともしない。
「ステファニー」ドミニクはささやくように答え、彼女が何も言えずにいるのを見て取ると、さらに言った。「ぼくが何をしたいかわかるかい? 満ち足りたきみを、パトソン夫妻の前に連れていきたいんだ。ぼくと愛をかわしたあとのきみは、目にかげりが出て、動きもなまめかしくなり、夢の続きを見ているようにぼんやりと柔順に……」
「やめて」ステファニーはつぶやいた。「ひどい侮辱だわ」
「侮辱?」ドミニクはわずかに唇をゆがめ、ステファニーの背中を撫でた。「どこが侮辱なんだい?」
「わたしたちの関係はもう終わったも同然で、ただビジネスでつながっているだけなのに……」そこで口ごもったが、無理に続けようとして声を震わせる。「それなのに……それなのに……」
「ぼくたちの関係は終わったも同然なのに愛をかわしたりするなんて、不道徳だって言うのかい?」彼女にかわってドミニクが締めくくった。「きみの道徳観にはときどき混乱させられてしまうよ、ステファニー」皮肉たっぷりの口調だ。「きみはほんとうにぼくたちの関係がいずれすっかり終わってしまうと思っているのかい?」
 ステファニーは彼の嘲るような目に見すえられ、息をのんだ。
 ドミニクは彼女の体が震えだしたのを感じて両手を腰のあたりまで下げ、微笑した。「ぼくたちが互いに相手を求めているかぎり、終わりにするなんてできそうにないね。それに今回のことはビジネスのためばかりとも言えないんだ。この魅力的に花開いた女といっしょに寝ているのはぼくなんだということを、世界中に知らせてやりたいっていう、男ならではの気持もあるんだよ」
「あなたがわざわざ知らせなくても、世間はそう思ってるわよ」
「それはそうだがね」ドミニクは抱擁を解いて言った。「パトソン夫妻との待ち合わせまで、まだあと二時間ある。この二時間をどうやってつぶせばいいんだい?」
 ステファニーはくるりと向きを変え、手持ち無沙汰にならないために後ろで編んでいた髪をほどきはじめた。「あなたは新聞を読むなり、テレビを見るなりすればいいわ。わたしはお風呂に入って、着るものを考えるから。そんなところでいいでしょ?」陰鬱な口調で言うと、不意に涙がこみ上げてきた。
 慌ててドミニクに背を向けたが、彼は眉を曇らせた。「泣いているね。なぜ?」
「泣いてなんかいないわ」
「少なくとも泣きたがっている」ドミニクはちょっと彼女の髪に手を触れた。「ステファニー」
「わたし……」ステファニーは悄然と肩を落とした。「少し疲れているだけだわ。それだけのことよ」涙をこらえるために目を閉じ、緊張をほぐすように首を曲げたり伸ばしたりした。両肩に手をかけられ優しくマッサージされて、彼女はつと動きを止めた。
 ドミニクはしばらく無言でマッサージを続けたが、やがて眉間に皺をよせてステファニーをベッドに座らせた。「ここで待っておいで」目をまるくしている彼女に、ささやくように言う。
 ステファニーは膝に手をおいて浴室の水音を聞いていた。ドミニクは戻ってくると彼女を浴室に連れていき、見事に泡の立ったバブルバスを見せて驚かせた。
「ゆっくり入っておいで」と彼は言った。
 ステファニーはゆったりとバスにつかりながら、ドミニクの前であやうく泣きそうになってしまった自分の弱さや、彼とあたりまえの夫婦になりたいというひそかな望みについて考えていた。それからその考えを追い払い、ひたすらリラックスするようにした。
 全身を洗い、髪をかわかし、ようやく浴室を出たときには、窓の鎧戸が下ろされてベッドのわきのランプがともされていた。室内にはコーヒーの香りが漂っている。ドミニクはステファニーが着ているのとお揃いのバスローブに身を包み、ベッドに寝そべってテレビを見ていた。
「きみのアドバイスに従うことにしたんだ」彼は真顔で言った。「風呂はどうだった?」
「最高だったわ」
「こっちにおいで」ドミニクはベッドの反対側をさした。「この番組、きみは好きじゃないかもしれないが、結構面白いよ。おいで。コーヒーをついであげるから」
 数分後、ステファニーはベッドの上で彼と並んで座りこみ、コーヒーをすすって思わず低く笑った。
「少しは気分がよくなったかい?」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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