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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス

熱砂に燃えて

熱砂に燃えて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ヘレン・ビアンチン(Helen Bianchin)
 ニュージーランド生まれ。想像力が豊かで、読書を愛する子供だった。十代の初めのころに初めて物語を書く。学校を卒業して、法律事務所で秘書をしたのち、二十一歳のときに友人とともにワーキングホリデー制度を使ってオーストラリアにわたる。メルボルンで数カ月働き、北クイーンズランドのたばこ農園を手伝っていたときにイタリア人男性と知り合い結婚した。その後三人の子供に恵まれ、子供たちや友人にたばこ農園の話を聞かせているうちに小説を書くことを思いついたという。イタリア人男性をヒーローにした最初の小説は、一年をかけて完成され、その後イギリスのハーレクイン社から出版された。もっとも尊敬する作家はノーラ・ロバーツと語るが、プライベートな時間に“座り心地のいい椅子に丸くなって”する読書は、ミステリーからロマンスまで幅広い。これまでに訪れたいちばんロマンティックな場所はハワイのホノルルだという。

解説

 写真家としてアラブに取材に行った兄が、反政府組織に誘拐された! その知らせを受けたクリスティ・ダルトンは、兄の救出に力を貸してくれそうな人物に接触を試みた。シーク・シャリフ・ビン・ユセフ・アル=サエド。国際的実業家としてその名を知られたサウジアラビア人だ。だがクリスティには、彼の魅力的で洗練された外見の下に、冷酷非情な顔が潜んでいるように思えてならない。事実、クリスティの必死の懇願も、なんの効果もなかった。そこで彼女はシャリフの不利になる情報を切り札としてちらつかせ、彼と一緒にアラブに行く保証を取りつける。しかし彼の国では、未婚女性は友人とはみなされず、妻か、あるいは愛人を装わなくてはならないという……。

抄録

 まだ宵の口で、冷房のきかない屋外にはむっとするような空気が漂っていた。距離をあけようとクリスティはわざとゆっくり歩いた。だが、たちまち見破られてがっちりと手をつかまれてしまった。あまりの力強さに恐れをなし、クリスティは反射的に手を振りほどいた。
「いったいどういうつもりなの?」
「他人行儀にふるまえば、ふたりの関係が妙だと疑われる」シャリフの口調は穏やかだ。
「ふたりの関係なんて何もないじゃない!」
「ここに滞在しているあいだはそういうことになっている」
 クリスティはそっと彼の顔をうかがったが、その表情からは何も読みとれなかった。「わたしは、あなたの富や男性としての魅力に屈したりしないわ」最初のほうは事実だが、後者は嘘だった。
「そうかな?」
 からかうような口調に、クリスティの目が怒りに燃えた。「あなたの助けを必要としていなかったら、さっさと帰国するところよ。そして二度と会わないでしょうね」
「だが、きみはぼくを必要としている」シャリフはなめらかな声で核心を突いた。「だからふたりで庭を散歩し、状況に応じて互いに夢中なふりをするしかないというわけだ」
「両方がスムーズにしゃべれる話題を持ちだすべきかもしれないわね」
「口論に発展しない話題を?」
「ええ。お父さまに初めてここに連れてこられたとき、どうやってここでの暮らしに自分を慣らしていったの?」
「タブロイド紙に書かれていなかった部分を埋めようというわけか」
「なら、言い換えるわ。この国について、そしてイスラムについて聞かせて」
「宗教と政治は危険な取り合わせだ」シャリフはあっさりと片づけた。
「それが生活の重要な部分を占めているんでしょう。ことにマホメットの国では」
「ぼくがきみに意見を述べたとして、それが記事にされてマスコミに売られないという保証はあるのかな?」
 その冷ややかな物言いに、クリスティはまじまじと相手を見つめた。出会った人間すべてに用心を怠らないようにしているんだわ。彼ほどの地位にある人間なら社交界や財界に数えきれないほどの知人がいるに違いないが、気の許せる友人はほんのわずかしかいないのかもしれない。
「一年に何度かここに引きこもるのは、そうしたことから逃れたいため?」
 広大な庭園は手入れの行き届いた芝生と低木が幾何学模様を描き、その中央にみごとな彫刻が施された噴水があった。三層になった縁を水が流れ落ち、ライトアップされた光景は息をのむほど美しい。
 彼にとってこの宮殿は、心安らぐ息抜きの場所なのだろう。一方クリスティにとっては、ぜひ探究してみたい東洋の神秘に満ちた場所だった。読んだり聞いたりするのと、実際に体験するのとではまるで違う。
「ここは父の国だ」シャリフはゆっくりと話しはじめた。「この国では自然の力が膨大な量の砂を動かし、さまざまな地形の変化を生みだす。男たちは砂漠をボーリングし、油田を掘りあて、富への道を開いてきた」
「でも、あなたはここで暮らすことを拒んだ」
 シャリフはかすかにほほ笑んだ。「世界各国の主要都市に家があり、そのうちのいくつかに短期間、滞在している」
「狩猟用のロッジにはいつ行く予定なの?」
 シャリフは足をとめ、クリスティに顔を向けた。「数日以内に最初のゲストが到着する予定だ。それまできみは、美術館やディライーヤ、スーク・アルバサーといったリヤドの名所を見物してきたらいい。ぼくが不在のあいだはフアドが接待役にあたってくれる」彼の表情がいくらか厳しくなった。「ひとつ肝に銘じておいてもらいたいことがある。宮殿の外に出るときは、ぼくかフアドがついていなければ、どこにも行くことはできない。わかるね? 女性のひとり歩きは禁止されているし、公共の乗り物を利用することもできない。違反すれば、逮捕される。外出するときはナシュワがアバヤを用意してくれるはずだ」
 クリスティは反論しなかった。そのことに関しては自分なりの意見があったが、サウジアラビアの宗教的戒律を侮辱したところで何も得るものはないのだ。「散歩の時間はもう充分だと思うけど」
「ぼくの相手をするのが退屈になってきた?」
 どう答えろというの。これほど心を乱す男性はあなたが初めてだとでも? 「このゲームをあなたは楽しんでいるようね」
「いくつかの利点がある」
「たとえば?」
「これだ」シャリフはいきなりクリスティを引き寄せると唇を重ねた。
 官能を刺激するようなキスに、クリスティの口から柔らかなため息がもれた。唇のすきまから舌がさし入れられ、その巧みな動きに彼女はわれを忘れそうになったが、ぎりぎりのところでなんとか踏みとどまった。
 彼が身を離したとき、クリスティは一瞬呆然となり、ついで現実に引き戻された。それと同時に怒りがこみあげてきた。
「ここまでする必要はないでしょう!」
「だが、楽しめる。違うかな?」
 思いきり引っぱたいてやりたかったが、拳を握りしめ、じっとこらえた。「卑劣な人ね」
「さあ」彼は気楽に促した。「もう少し庭を散歩してからなかに戻ろう。それまでにはきみの怒りもおさまっているだろうから」
「そうは思えないわ」クリスティは言い返した。ここに滞在しているあいだ、どれだけ自制心を働かすことができるか確信はなかった。シャリフ・ビン・ユセフ・アル=サエドは誰もが自分には絶対服従すると思っている。それが彼女の意思と衝突することになったら、クリスティは断固闘うつもりだった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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