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億万長者の恋 億万長者に恋して

億万長者の恋 億万長者に恋して


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・リクエスト億万長者に恋して
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

 『初恋』と題された肖像画のモデルは驚くほどキャロラインにそっくりだった。彼女が働く画廊によって新たに発見された幻のその名画は今夜、早くも買い手がつきそうな気配だ。キャロラインも『初恋』が早く画廊の手を離れることを望んでいた。肖像画が呼びおこした悲痛な恋の思い出に苦しめられていたからだ。彼女のそれも初恋だった。十二年前の、十七歳のあの夏。野性的なベン・デクスターに出会った日がすべての始まりだった。裏切られ、冷酷に捨てられて、狂おしい恋は終わったけれど……。絵を買いたいという客を迎えるための準備をすませた彼女のもとへ画廊の経営者がひとりの男性を連れてきた―ベン・デクスター。十二年の歳月は彼をすっかり洗練された男性に変えていた。リッチで傲慢なヒーローの華やかな輝きと、隠れた素顔の魅力を描いた、ゴージャスな恋物語。

抄録

「だから、手紙を書いて、お母さまのところに置いてきたのよ。ほかに何を期待したの?」低く苦しげな声でうめくように言った。
 ここを離れなくては。何か自分のプライドを傷つけるようなことを口走らないうちに。彼の残酷な裏切りにどれほどひどく、どれほど長い間苦しめられたか、言いださないうちに。
 その意図を読んだようにベンはさっと彼女のうなじをつかみ、燃えるような黒い目で目をのぞき込んだ。「ほかに何を期待したかだって?」おうむ返しに言った。声がくぐもっている。「こっちが聞きたいね! でも、あのころは……」うなじに食い込んでいた指の力が和らぎ、不意に声が低くなった。「どんなに激しい期待もきみが十二分に満たしてくれたときがあった。覚えているかい?」肌をそっと撫でる指の動きは、さっきの脅すようなつかみ方よりずっと刺激的だ。長い間拒絶してきた感覚がいやでもよみがえり、頭がくらくらしてくる。彼は低く繰り返した。「覚えているかい、カロ? 見つめ合うだけでどんなふうになったか? 見るだけでは足りなくなって、裸の肌に触れ合い、愛のダンスに身をまかせずにいられなくなったことを。きみが待ちきれずにどんなふうにせがんだか覚えている?」
「やめて!」震える唇でうめくように言った。全身がかつての秘密の魔法におののき、今なお続くうずくような喪失感や裏切られた思いが居心地悪く入りまじる。「放して」頭では自分の体が期待していることにぞっとしながら、かすれた声で言った。
「きみがそう望んでいるのならそうするんだが」彼の声は柔らかく満足げだ。「きみは望んでいない。昔と同じようにぼくを受け入れたがっている。否定するのは勝手だが、ここは嘘をつかない……」彼はキャロラインの半ば開いた唇を親指の腹でそっと撫でた。かすめるようなその感触が体の芯に原始的なうずきを呼び覚まし、親指を口にくわえたいという破滅につながる禁断の衝動を引き起こす。
 彼女の目に浮かんだ欲望を読んだように、彼は手を下ろし、指先でキャロラインの顎の線をなぞり、喉を伝い、ガウンの胸元に忍び込む。そこでは激しい鼓動が柔らかな絹地を震わせていた。
「それにここも」彼は心をかき乱すような低い声でゆっくりと言いながら、薄い生地を押し上げている胸のいただきに長い指で軽く触れ、生地の下にそっと手を滑り込ませた。
 キャロラインは息ができなかった。彼の愛撫が甘い歓びの矢を全身に放つ。かつていつもそうだったように。過去にどんな仕打ちを受けたにしても、情熱の絆がただ一つの記憶となったこの瞬間、それは消え去っていた。
 唇を軽く開き、不意に重くなったまぶたを上げて、彼と目を合わせる。黒い瞳は荒々しく飢えたような光をたたえていた。彼女の息遣いは荒く、かすかな音をたてている。その場の空気はひりひりするほどの感情に満たされ、性の意識が無数の針となって刺激する。鋭く、強引に、激しく興奮させながら。
 今感じている昔と同じむき出しの欲望は、今ここにあるもので、過去の名残ではない。過去はたとえ記憶の端であろうと、浮かび上がろうとするたびに厳しく押しやってきたから。今ここで、昔と同じように彼にとらわれ、漆黒の強引な目で自信たっぷりに求められている。彼の美しい唇に微笑がゆっくりと浮かび、ぞくぞくするほどセクシーなその笑顔は、キャロラインの心と体からすべての力を奪ってしまう。
「だから……」彼はゆっくりと息を吐き、濃いまつげを伏せて、キャロラインの唇を見つめた。「否定しないね、カロ?」彼が黒い頭をかがめると、二人の唇がすぐそばにあった。「そう、それでいいんだ」
 キャロラインは誘うように唇を開かずにいられなかった。野性的な男っぽいにおいに頭がくらくらする。彼の唇が唇の端に触れると、キャロラインは顔を上げ、彼のキスを本能的に夢中で求めた。記憶の中のうっとりする魔法のようなキスを求め、激しい情熱に身をゆだねて。それはほかの男性はとうてい感じさせてくれないものだった。
 だが、彼はふっくらした下唇を舌の先で触れただけで顔を上げた。両手はほっそりしたウエストに軽くまわされ、無我夢中だったキャロラインとは逆に自制を保っている。欲求が満たされない残酷さに泣きだしそうになっているところへ、彼が皮肉っぽく言った。「赤ん坊からキャンディを取り上げたみたいだな」
 ベンは手を離して、後ろに下がった。口をきつく結んで、黒い目で彼女の体を眺めまわしている。つんと硬くなった胸のふくらみ、柔らかく半ば開いた唇、欲望にかげった濃いすみれ色の瞳。
「第一ラウンドはぼくの勝ちだね、カロ」そうつけ加えてから、ドアのほうに首を向け、そっけない声で言った。「少しでも眠るんだ。睡眠は必要だろう。十七歳ならひと晩じゅう寝なくても、朝うっとりするほどきれいだろうが」彼はかすかな苦笑を浮かべた。「いつまでも同じというわけにはいかないからね」
 朝になったら、やつれて醜く見えると言いたいのだろう。女としての盛りを過ぎて、残念ながら、かつて彼を激しい情熱に駆り立てたすべてを失っているということだ。かつてのように欲しくてたまらないほどわたしを求めてもいなければ、わたしを正視することさえできないわけね。
 どうしたら真っすぐ歩いて部屋を出られるのかわからない。あまりの屈辱に全身の力が抜け、頭は炎のように赤い霧に包まれて何も見えなかった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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