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大聖堂のある町

大聖堂のある町


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ベティ・ニールズ(Betty Neels)
 イギリス南西部のデボン州で子供時代と青春時代を過ごした後、看護師および助産師としての教育を受けた。戦争中に従軍看護師として働いていたとき、オランダ人の男性と知り合って結婚。以後十四年間、夫の故郷オランダに住み、ベティは看護師、夫は病院事務と、ともに病院で働いた。イギリスに戻って看護師の仕事を退いた後、よいロマンス小説がないことを嘆く女性の声を地元の図書館で耳にし、自ら執筆を決意した。1969年、「赤毛のアデレイド」を発表して作家活動に入る。穏やかで静かなロマンス、その優しい作風が多くのファンを魅了した。2001年6月、惜しまれつつ永遠の眠りについた。彼女が生みだした作品は百三十以上にも及んでいる。好きな映画は『逢いびき』(英1945年)、尊敬する人物はウィンストン・チャーチルだったという。

解説

 2年前に母を亡くし、兄夫婦と暮らし始めたキャサリンは、以来ずっと、使用人のようにこき使われていた。朝早くから子供たちの世話をし、食事を作り、掃除に追われ……だが、そんなキャサリンの灰色の日々は、ジェーソン・フィッツロイと知り合って変わった。ジェーソンは容姿端麗で高名な医師で、彼女の境遇を知るや、住みこみの仕事を紹介してくれたのだ。心優しいジェーソンに、キャサリンは惹かれていった――彼にはすでに美しい恋人がいることなど知らず。

抄録

 キャサリンはスーツケースを開け、化粧品や化粧道具を窓際のドレッサーの上に並べた。少しばかりの衣類を洋服だんすにかけ両親の写真を小さな炉棚に飾ってから、ベッドに腰かけて室内を見回した。
 ガスストーブが赤々と燃え、小ぢんまりとしていかにも居心地のいい感じだ。お給料日になったらウールワースに行って、かわいい卓上スタンドを買おう。私はラッキーだ。仕事と、自分だけの部屋と、何年も手にしたことのないたくさんのお金まで持てた。グレンジャー家ほど楽ではないかもしれないけれど、兄の家で暮らすよりもずっとましだ。
 八時にキャサリンは階下に下りて、仲間の下宿人を紹介してもらった。ミス・フィッシュ、ミセス・ダンスターの二人の老婦人は礼儀正しいがそろって気取り屋で、少しうさんくさそうにキャサリンを眺めた。反対にミス・ケンドールはキャサリンの手を固く握り、若い仲間ができてうれしい、と熱烈に歓迎した。「シャーリーって呼んでね」と彼女は言った。どうやら三人の下宿人は二対一に分かれていて、直接口をきくこともないらしい。ミセス・ポッツが気をきかせて、両者の間を取り持っていた。
 料理はすばらしかった。ステーキとキドニー・プディングの後にりんごのタルトとカスタード。どれもミセス・ポッツがスーパー・コックであることをうかがわせる。キャサリンは自分でもあきれるほどの食欲を見せ、夫人が濃いお茶を出してくれた時には満足の吐息とともに椅子の背にもたれた。お茶をすすりかけたところで玄関のベルが鳴り、ミセス・ポッツが席を立っていった。
 彼女はすぐに戻ってきた。「あなたにお客様よ、ミス・マーシュ。フィッツロイ先生。玄関のそばの部屋にお通ししたわ」
 キャサリンはぱっと立ち上がり、狭い玄関ホールに急いでいって、ドアを開けた。医師はカーテンを引いた窓際にたたずんでいた。「やあ、キャサリン」フィッツロイ医師は振り向いて、親しみをこめて言った。「君にここを推薦した責任上、君が居心地よくやっているかどうか確かめなくちゃならないと思ってね」彼はそう説明して優しく微笑した。
 キャサリンはドアのすぐ内側に立っていた。心臓が早鐘を打ち、息苦しい。単に義務感からかもしれないけれど、とにかく来てくれた。キャサリンはにっこり医師にほほ笑みかけた。
「ご親切にありがとうございます、フィッツロイ先生。ここはとてもいいところですわ。お部屋はすてきだし、ミセス・ポッツはとても親切で、お料理もすばらしくて」
「よかった。明日のことはわかってるね?」
「はい、病院からお手紙をいただきました。私……私、先生には心から感謝しているんです。仕事を持ってお金を手に入れることがどんなにすばらしいか。その上に、自分の部屋も……」キャサリンは静かに締めくくった。「私、一生懸命に働きます。約束します、先生を失望させないって」
 フィッツロイ医師はまじまじとキャサリンを見つめた。微笑は消えていた。「君が人を失望させるなんて、考えられないよ、キャサリン。今までだってだれも失望させたことはないだろう? 君がここに落ち着いて、本当によかった。何か困ったことができたら、いつでも遠慮なく僕に相談してくれ」彼はふと、ため息をもらした。「もっとましな暮らしをして当然なんだがな、君は」
 キャサリンはあっけにとられた。「でも私、なんの特技もないんですもの。先生の推薦がなかったら、看護助手にも採用してもらえなかったわ。心配なさらないでください。私、本当に幸せなんです」
 いいえ、幸せじゃない……。キャサリンは心の中でつぶやいた。自分が愛している男性は絶対に自分を愛してくれる可能性がないとわかっていて、どうして幸せでいられよう? 二人の歩む道は大きく分け隔てられ、交差することはないのだ。決してそれを忘れてはならない。
 フィッツロイ医師の様子で、キャサリンは彼が帰りたがっているのがわかった。「わざわざ寄ってくださってありがとうございます。私、本当に大丈夫ですから」
 キャサリンが手を差し出すと、医師はそれを握りしめた。「君って小柄なんだね」
「でも元気ですわ」キャサリンはそっと手を引き抜こうとしたが、医師は放そうとはしなかった。
 フィッツロイ医師は身をかがめて、キャサリンのほおに軽くキスした。キャサリンはあっと息をのんだ。言葉を失っている間に、彼は行ってしまった。
 キッチンに戻り、冷めたお茶を飲んでから、キャサリンは屋根裏の自分の部屋に上がった。あのキスに深い意味はない。それはよくわかっている。けれども、キャサリンはやはり動揺していた。風呂に入った後でベッドにもぐり込んでからも、頭の中はフィッツロイ医師のことでいっぱいだった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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