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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス

背徳の天使

背徳の天使


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キム・ローレンス(Kim Lawrence)
 イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。

解説

 「きみには恥という観念がないのか?」ホープを見るアレックスの顔は嫌悪感で曇っていた。モデルから女優への転身をはかるホープがアレックスに会ったのは、三つ子の姉の結婚披露宴でのこと。二人はさっそく意気投合し、デートの約束もした。ところがその後、ホープの不倫記事を目にしたアレックスは、激しく惹かれるがゆえに、彼女を信じることができなかった。わたしの話も聞かず、一方的に決めつけるなんてひどいわ。憤慨したホープは心にもないことを言ってしまう。休暇の間、手持ちぶさただったから、あなたに目をつけたの、と。アレックスは怒りに駆られてホープを地面に押し倒し、唇を奪った。いつしか彼女も応えていたが、それはなんの解決にもならなかった……。

抄録

 アレックスの指の関節が白くなっていくさまに、ホープは奇妙にも引きつけられた。彼の顔を見ても、誰ひとりとして彼がわたしを絞め殺したがっているとは思わないだろう。彼は自制心が強すぎて、首を絞めることはおろかキスをしたいという衝動にさえ屈しないだろう。アレックス・マシスンは自分の感情をコントロールできるという絶対的な自信を持っている人だから。
「無責任な態度をとるのが趣味なのか?」冷たい瞳ににらまれ、ホープは動けなくなった。
「若い女性というものは楽しまなくちゃ」
「ぼくとこうしているのもお遊びのうちなのか?」不審そうに細めた目でにらまれ、ホープは落ち着かなくなった。しかし、撤退するつもりはない。
 彼の言葉を充分検討したかのように、ホープはつんと顎を上げた。さまざまな侮辱を受けた以上、少しは仕返しをしてやらなくては。
「そうね、これから一カ月、手持ちぶさたでいるわけにもいかないでしょう。だから、うんと年上の男性に目をつけたのよ。なんとなく威厳があって魅力的だもの。若い男性並みの体力のほうは……」軽い笑い声をあげる。「喜んであきらめるつもりよ。わたしは経験豊富な男性が好きなの」ホープはとびきり魅力的な笑みを浮かべてみせた。
 彼女が汚れのない人生を歩んできたと思っていたとは。おおらかで思いやりがあり、正直に自分の気持ちをさらけ出す女性だと思っていたとは! こめかみの脈動が高まり、アレックスは彼女の両肩をつかんだ。唇を奪う前に、彼はホープの大きな青い瞳にショックと狼狽が浮かんでいるのを見た。
 激しく唇を押しつけられ、ホープは湿って苔むした地面に仰向けに倒れていた。アレックスは両手を彼女の肩から顔にすべらせ、顔を動かせないようにした。ホープにはあらがう気はまったくなかった。何も考えられなかった。彼のにおいと感触、そして、キスの味だけを意識していた。彼が右手にはめている革の手首覆いのにおい、ウールのセーターや男性的なコロンの香り。彼の固い唇の感触。甘い蜜を求めて彼の舌が差しこまれると、ホープはめまいを覚えた。彼のキスの味が……やっといまわかった。けっして忘れられそうにない彼のキスの味が。
 キスは、始めたときと同じように唐突に終わりを告げた。それまでアレックスの頭でさえぎられていた薄日が、閉じたまぶたのすき間から忍びこんでくる。ホープには自分の心臓の鼓動がはっきり聞こえた。
「何か言ってくれ」アレックスの太い声が響く。「せめてぼくを見てくれ」もし、彼女の胸が上下していなければ、生きているとは思えなかっただろう。ホープの髪は豪華な金の額縁のように顔のまわりを取り巻いていた。
 ホープは唇の端を上げ、ほほ笑んだ。「そんなふうに頼まれて断れると思う? それとも頼みじゃなくて命令なの? 驚いた顔はやめて、アレックス。何を期待しているの? わたしがヒステリーを起こすとでも? キスくらいしたことあるわ……。確かに、もっと上品なキスだったと認めざるを得ないけど……」
 ホープは臆病ではなかったが、アレックスのほれぼれするような上半身にかすかに力がこもっただけで動けなくなった。彼は途方もない力をうちに秘めている。
「これで、お互い貸し借りなしだな」アレックスはそっけない口調で言った。
「どちらがいいかときかれたら、頬をたたかれるほうを選んでいたわ」アレックスのいかめしい頬骨の線がゆっくり赤く染まるのを見て、ホープの胸に満足感がこみあげた。「あなたは女性を殴るような人ではないと信じているけれど」皮肉を含んだ声だった。
「上品な人間じゃなくて悪かったね」彼もやり返す。
 地面に横たわっているのは、かなり心細かった。だが、手足に完全に力が戻るまで、ホープは動きたくなかった。「あなたのような人に繊細さを求めるなんて、わたしも少し世間知らずだったわ……」悲鳴とともにホープは目を閉じた。アレックスは体つきに似つかわしくないすばやい動きを見せた。
 ホープがおそるおそる片目を開けると、彼はそばにひざまずいていた。上体を起こそうにも腹部の筋肉が引きつれている。アレックスのふしくれだった指先がためらいがちに彼女の頬を撫でる。とたんにホープの緊張は跡形もなく消えうせた。止めていた息をふーっと吐き出した拍子にしゃっくりが出た。
「どうやって止めたらいいの」ホープは泣き声をあげた。「あなたってずる賢いのね」
「体力不足の‘おじさん’にしては?」アレックスは猫なで声で言った。
「それは冗談のつもりだったのよ」アレックスは厚いパッドが入った手首覆いを外している。女性が男性の手を見て興奮するなんて、どうかしているわ。
 アレックスは片肘をつき、ホープの眉の上のカールに触れた。彼はホープの防水ジャケットのジッパーを下ろし、喉のくぼみに唇を押し当てた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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