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愛は広い海

愛は広い海


発行: ハーレクイン
レーベル: ハーレクイン・イマージュ シリーズ: 愛は広い海
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
 南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。

解説

 自由な関係を楽しんでいた、大人のふたりに予定外の妊娠……。

 ■「おめでとう、八週目くらいね!」クレアは医師の言葉に呆然とした。妊娠だなんて、まさかそんな。これまで、弁護士としてキャリアを積むことを第一としてきた。結婚したいとは、まして子供がほしいなんて、思いもしなかった。それは恋人のラクランも同じはず。彼は離婚したばかりなのだから。クレアはラクランにどうしても打ち明けられなかった。わたしたちは互いに束縛しない関係だから、長続きしてきたのだ。妊娠がわかったら、彼を失うかもしれない。クレアは、いつのまにかラクランを深く愛してしまっていた。何も言えないクレアを残し、彼は三週間の出張に出かけていった。だが、やがて戻ってきたラクランに、クレアはまったく違って見えた。彼女はまるで強い決意を秘めたかのように、晴れやかに輝いている。クレアはラクランと別れ、シングルマザーになる決心をしていた……。

抄録

 ラクランは顔をしかめたが、その答えは避けた。
「きみはキャリアが大切なんだろうね」
「ええ」
「だから、困ったような顔をしているのかい?」彼は優しく言ってクレアの手に自分の手を重ねた。
「いいえ、驚いたからよ」彼の手の下でクレアの手が震えた。「こういうことはあまり経験がないから」
「驚くことじゃないさ。きみには独特の魅力がある。それに今はもう、お互いをよく知っているんだから」
「そうかもしれないわね」
「一緒に浜辺を歩かないか?」ラクランが誘った。
 道の向こうはすぐ海岸だ。クレアは彼の誘いを受けた。ふたりは裸足になり、クレアは花柄のワンピースの長いすそをたくし上げ、波打ち際を歩いた。やがてふたりは草深い岬のベンチに腰かけて、沖を進む大きな船の明かりや、バイロン湾の点滅する灯台の明かりを見つめた。
 クレアには意外だったが、ふたりの会話は弾んだ。ラクランはわずか数ポンドをポケットにしのばせてオーストラリアに渡ってきた曾祖父の話をした。そして七歳になった息子のショーンが高いIQの持ち主で、しかもトラブルを招きやすい性質であること、今年のマカダミアナッツの作柄などが話題になった。
 クレアも徐々にリラックスして、法律に興味を持ち出した十代のころ、大学時代のこと、そして家庭について語った。彼女はニューサウスウェールズ州のアーミデールで育った。そこはレノックス・ヘッドから約三百七十キロ南の高原にある、緑の濃い美しい町だ。ニューイングランド大学があり、クレアの父親の経営するトラクターと農機具の代理店もアーミデールにあった。
 クレアは一人娘で、内気でおとなしい母親がいる。父親は支配的で、母親だけでなくクレアも支配しようとした。
「だからきみは野心家になったんだね」ラクランが言った。
「たぶん」クレアは少し渋い顔で言った。
「しかも頭の切れるのが幸いした」
「それはいつも幸いとはかぎらないわ」クレアがゆっくり言った。
 ラクランがクレアの肩に手を回した。「男が怖がって寄ってこないという意味かい?」
 肩に回された彼の腕を強く意識して、クレアはうろたえた。そしてその感触が心地よく、かすかに感じる清潔なコットンと柑橘系のアフターシェーブローションの香りが好きになった。彼にもっと近づいてぬくもりを感じたいとさえ思った。
「たぶんそうだわ。あまり悩んだことはなかったけど」それは彼女の正直な気持だ。
「ぼくは怖いなんて思わなかったよ……。頭の良さもきみの魅力のひとつだった」ラクランは静かに言って、初めてのキスをした。
 頬を優しくたどる彼の指の感触はすばらしく、冷たく乾いた彼の唇を受け入れるのに抵抗はなかった。やがて、クレアの理性は奪い去られてしまった。
 一年ものあいだ抑えていた欲望を、今はもう隠すこともなく、ふたりは我を忘れた。
 彼女のやわらかい肌にわずかにざらつく彼のあごの感触、そしてその力強い大きな手は、このウエストを軽く覆ってしまうだろうという思いに、クレアの興奮はいやがうえにも高まっていった。
 回された彼の腕と、押しつけられる体の感触に火をつけられ、クレアは海岸もベンチも、そこが公園だということも忘れた。夜の暗闇でただひとつの目印は、ラクランと彼がかき立てた欲望の炎だけのように思えた……。
 ふたりの体が離れたとき、クレアは呆然として、しばらく口がきけなかった。彼女はようやく言った。
「思ってもみなかったわ……」
 ラクランは笑みを浮かべた。「これほど激しく求め合うことを? ぼくにはわかっていた」
 ふたりが恋人同士になったのは、その夜から二週間後だった。

 クレアは現実に戻ると、椅子に座った体を落ち着きなく動かして、おなかに手を当てた。
 ラクラン・ヒューイットとの関係が始まって半年になる。この半年間わたしは……とても幸せだった。お互いに惹かれ合う気持は今でも驚くほど強い。
 彼はまだクレアをスリムとあだ名で呼ぶ。でもそれは特別のとき――クレアの白くなめらかな肌と、すらりとした体に彼が魅せられたときに限られていた。彼と付き合い始めてからの半年は、クレアがそれまであきらめていたはずの時間だった。
 ふたりは友情でも結ばれていた。笑い合ったり、一緒に何かをしたり。レノックス・ヘッドの頂上に登って、ハンググライダーが飛び立つ様子を眺めたこともあった。しかし、お互いを束縛する関係ではなかった。クレアは依然として猛烈に働き、彼女の都合が悪ければラクランは引き下がった。それはクレアにしても同じだ。
 クレアはヒューイット家の屋敷があるローズモントをよく訪れ、家をとりしきっているラクランの叔母のメイや、息子のショーンとも顔なじみになった。パディとフリンは確かにポニーくらいの大きさがあったが、かわいくておとなしい犬たちだった。
 しかし暗黙の了解で、ラクランは彼女の家に泊まっても、クレアがローズモントに泊まることはなかった。クレアはそのことで疎外感を感じたことはなかったが、いずれにしても、ふたりの仲は公認のものではなかった。
 ときどき、クレアはわけのわからない不安に悩むことがあった。
 クレアはおなかに手を当てたまま考えていた。予定外の妊娠で、不安の正体がわかるなんて奇妙ね。クレアは突然そう思って、立ち上がった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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