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和書>小説・ノンフィクションハーレクインMIRA文庫

フラッシュバック

フラッシュバック


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 40年以上も前に、この人と私が愛し合っていた……? セアラは混乱に陥りながら、目の前で事故死した老人の遺品を見つめた。色褪せた写真――若いころの彼と写っているのは、まぎれもなくセアラ自身だ。“彼女の時間から私の時間へ”“光の波動”老人が書き残した謎めいた言葉を手がかりに、セアラは過去の時代へとタイムトラベルを果たす。そしてなつかしい腕に抱かれた瞬間、時空を超えて出会った二人のせつない恋が始まった。永遠の絆を描いた感動作。

抄録

 あごはすてきだわ、とセアラは思った。強そうなあご。そして顔全体から、高い品性と、それにあまりある深い思いやりの心がにじみ出ている。だが、いちばん顕著なのは高潔さだ。揺るぐことのない高潔さ。白黒ははっきり、灰色の許せない潔癖さ。セアラがどうやってやって来たか、その過程を納得できない潔癖さ。
 彼のシャツのボタンは半分くらいまで開いていて、そこからのぞいている胸毛におおわれた胸を、マーカスは親指でかいた。巻き毛は喉の下あたりまで続いていた。さわり心地はどんなかしら。ふわふわした感じ? それとも……。
 マーカスの顔に笑みがのぞいた。「Tシャツが濡れちゃったな」
 セアラが目を落とすと、洗い髪のしずくでかなりTシャツの前が濡れ、胸のふくらみを目立たせていた。あわてて胸の前で腕を交差させた。顔が熱いということは、きっと赤くなっているのだろう。
 だからカレンにいつも言われるのだ。“何を考えてるのかすぐわかるわ。だって、顔にみんな色鮮やかに出ちゃうんですものね!”
「ドライヤーがないんだもの……」
「何がないって?」
「ううん。つまりね、女の人たちは普通、濡れた髪をどうするのかなと思って」
 マーカスは怪訝な顔をした。「あの、|おかま《ヽヽヽ》みたいなものに入るんじゃないのかい?」
 セアラは微笑した。「この家には、まさかないわよね?」
 予想外の大笑いが返ってきた。「悪いね。ぼくは美容学校をドロップアウトして医者になったんだ」
 セアラも笑い声をあげていた。「なのに、どうしてお医者さんもドロップアウトしちゃったの?」
 笑みは消え、彼は皿に目を落とした。「ぼくの仕事じゃなかったからだ」
 セアラはマーカスから目を離さなかった。「どうして?」
「どうしてもだ」彼はさっと立ちあがり、皿を台所に運んだ。
 セアラは取り残され、寒々とした気分を噛みしめた。わたしは境界線を越えたのだ。相手が話したくないことを、ほじくろうとした。
 セアラも自分の皿を台所に持っていった。電化製品で欠けているものがあるほかは、驚くほど彼女の台所にそっくりだった。
「ごめんなさい」と、後ろから声をかけた。
 マーカスは食べ残しをこすり捨て、皿を流しに置いた。「何が?」
「詮索したりして。よけいなお世話よね」
「気にしなくていい」
 彼は皿を受け取り、同じようにごみを捨て、流しに置いた。そうして水をため、洗剤を加えて食器を洗い始めた。
「わたしにさせて。こんなにいろいろしてもらったし、疲れたでしょう?」
「それじゃ、ぼくが洗うから拭いてくれ」
 マーカスが洗った食器をセアラは拭き始めた。隣にいると、男の熱を、活力に満ちた男のにおいを感じた。そしていったんそれを意識してしまうと部屋じゅうに熱気がこもって、感じたことのない何かが部屋じゅうに満ち満ちていくような気がした。Tシャツの下に何も着ていないことを、セアラはふいに、猛烈に意識した。
「わたしのネグリジェ、乾いたかしら……」
 最後の皿を洗い終え、マーカスは手を拭いた。「まだだろうね。しっかり水洗いしたから、もう数時間はかかると思うよ」そして笑みを浮かべて、セアラの姿を見つめた。「ぼくの服を着てるのがいやなのかい? ぼくが着るより、ずっと似合ってると思うけどな」
 セアラもほほ笑んだ。「ちっともいやなんかじゃないわ」
 つかの間、ふたりの視線がからみあい、セアラの心臓はどんな打楽器奏者でも追いつかないくらいの速さで打ち始めた。
 あなたは自分の力に気づいてる? あなたといると口の中がからからに乾いて、心臓がハンマーのように打ち、そして太腿の間が痛いくらいに……。
 彼がいちばん最近女の人を抱いたのはいつだろう? そして、わたしのほうはいつだった?
 マーカスが大きく胸をふくらませて、息を吸い込んだ。「きみの正体は知らないけどね、セアラ・ラインハート、でもきみは……ああ、何てきれいなんだ」
 恐怖という名の壁が、いまや完全に溶け落ちようとしていた。彼女の体内が熱く溶けた蝋と化し、血が血管を流れるように体じゅうを駆けめぐる。
「わたし、どのくらいここにいられるかわからないの。ずっといられるかもしれないし、たったの数分かも……」
「しばらくいたらいいじゃないか」
 マーカスはだんだん顔を下げ、セアラは自分の体がだんだん浮かびあがっていくような気がした。足は床についたままなのに、羽があるみたいに。
「あなたのことを知りたいわ、マーカス。あなたのことを何もかも」
 マーカスの手がそっと彼女の頬に伸び、次の瞬間、ふたりの唇は完璧に重なりあっていた。彼の舌が彼女を求め、からみ、踊り、味わい、翻弄し、セアラはいつの間にかつま先立ちになって、彼の首にしっかり腕を巻きつけていた。
 マーカスの髪はやわらかく、羽根のようにセアラの指の間をすり抜けた。髪に両手を差し入れると彼はかすかに頭を揺らし、マッサージのような愛撫の中でうっとりと息を吐き出した。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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